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【ボクシング】3・1『WASSERMAN BOXING』批評&考察


☆3月1日(日本時間2日)/イギリス・シュロップシャー・テルフォード/テルフォード・インターナショナルセンター

EBUスーパーウェルター級王座決定戦&WBA挑戦者決定戦12回戦
○アバス・バラウ(29歳、ドイツ=69.82kg)WBA7位
●サム・エギントン(30歳、イギリス=69.51kg)WBA15位

※使用グローブ=REYES黒(バラウ)、RIVAL橙・白(エギントン)
判定2-0(114対114、117対111、117対112)

 ドローとつけたジャッジ1名のスコアには唖然憤然とさせられたバラウの文句なしの勝利だった。
 特に印象的だったのは右サイド(エギントンの左サイド)のアングルの使い方。右へ右へと移動していき、エギントンのジャブを自身の左サイドに流してリズムを握らせない。そして、エギントンの死角から左フックや右のヒットを重ねる。ゆっくりとしたステップでの移動をベースにしながら、一転して瞬間移動のように速く右へ動き、左フックをボディに差す。オーソドックス対決では左回りが基本で、そういう角度の戦いに慣れているだろうエギントンは、意表を突かれ、対応できない様子だった。

 いわば、120度のアングルを持つバラウと、正面45度でしか戦えないエギントン(※いずれも角度は適当です)。その差が明白に表れて、主導権もリズムもポイントもバラウがどんどん獲得していった。

 バラウは再三再四にわたってエギントンをダウン寸前、もしくはストップ寸前の状態に追い込んだ。しかし痛烈な右カウンターをヒットした瞬間にエギントンがマウスピースを飛ばすと、ジュゼッペ・カタローネ・レフェリーは即座に割って入り、マウスピースを入れ直させる中断を作る。エギントンをコーナーに詰めたバラウが、見事な接近戦で追い込むと、ブレークを指示する。
 前者の場合、「マウスピースをきちんと装着して試合をしなければならない」ルールが世界共通であるとはいえ、レフェリーは臨機応変に対応すべき事項。同レフェリーの処し方では、クリーンヒットを奪われた選手が故意にマウスピースを吐き出して時間稼ぎをすることだって可能だ。バラウの一連の攻撃が終わってから、ブレークをかけて中断するべきだったろう。
 後者のシーンは、頭が当たっていたわけでもなく、クリンチ、ホールドがあったわけでもない。なぜブレークをかけたか不可解極まりなく、バラウの攻撃を寸断する意図しか考えられなかった。

 このほかにも、バラウが強烈な連打を決めて、それまでにもダメージを溜めてきたエギントンの顔面を跳ね上げたシーンが何度もあったが、同レフェリーは、ストップする予備動作すらしていなかった。レフェリー、ジャッジの大変さは十分にわかるが、このレフェリーと引き分けとしたジャッジには、ボクシングを裁く資格自体に疑問を持った。
 エギントンは最後の最後まで、果敢に打ち合いを挑んだ。疲労を漂わせたバラウが、正面からの攻撃にはまり込み、終盤はいわゆる“いい試合”になってしまった。が、それはあくまでも“結果的”なこと。遅くとも、9、10ラウンドで終えていてよい試合だった。

バラウ=16戦15勝(9KO)1敗
エギントン=43戦34勝(20KO)9敗

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