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尿路感染症の原因となりうるグラム陽性菌について

 膀胱炎や腎盂腎炎といった尿路感染症の主な原因は
 大腸菌やクレブシエラといった腸内細菌科細菌です。

 これらの細菌はグラム染色で陰性の桿菌にみえ、グラム陽性菌による尿路感染症は稀です。

 一方、尿路感染症が疑われる入院患者や高齢者の尿をグラム染色してみると予想に反してグラム陽性菌がみられることがあります。

 今回尿からグラム陽性菌がみえた場合、考えられる細菌と特徴、治療薬について簡潔にまとめました。

S. saprophyticus
-         女性に尿路感染症をおこしうるグラム陽性球菌
-         直近の性交渉歴との関連が示唆される
-         メチシリン耐性菌は1~8%と抗菌薬感受性は維持されている

S. aureus
-         尿路感染症の原因菌では稀
-         尿から検出された場合は感染性心内膜炎や腸腰筋膿瘍といった侵襲的疾患の検索が必要

Enterococcus
-         E. faecalisとE. faeciumが2大検出菌
-         定着菌のことも多い
-         市中の尿路感染症では稀だがカテーテルに関連した尿路感染症では比較的多い
-         糖尿病があると原因菌になりやすい

B群β溶血性連鎖球菌
-         高齢女性や妊婦、糖尿病など免疫不全者で尿路感染症の原因となる
-         敗血症といった侵襲的な病態をおこしうる
-         妊婦の場合妊娠35-37週に膣や肛門の保菌を確認し、保菌が確認されれば新生児が分娩で曝露しないよう予防的に抗菌薬を使用する

Aerococcus
-         通性嫌気性を示すグラム陽性球菌
-         A. urinaeやA. viridans、A. sanguinicolaが代表菌種
-         高齢者や尿路の解剖学的異常があると尿路感染症の原因となりうる
-         治療薬:ABPC(耐性に注意)

Corynebacterium. urealyticum
-         通性嫌気性を示すグラム陽性桿菌
-         無症候性細菌尿の原因となることが多い
-         免疫不全者や尿路の解剖学的異常があると腎盂腎炎といった侵襲的な病態の原因となりうる
-         治療:VCMやLZD(多剤耐性を示すことが多い)

Actinobaculum shaalii
-         通性嫌気性を示すグラム陽性の小桿菌で弱溶血を示す
-         高齢者や尿路の解剖学的異常があると尿路感染症の原因となりうる
-         治療:ABPC、CTRX(膀胱炎の治療として頻用されるST合剤やキノロン系は耐性)

 下記サイトに上記細菌を含めた様々な細菌の特徴をまとめています。
 細菌について概要をつかめると思いますので、是非ご覧下さい。


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