文舵練習問題④ー1

 足の指の先を蚊に喰われた。痒いことも痒いけれど、そのあたりが腫れて硬くなっている。なんだか痒さが無暗やたらと強烈に痼っている。痒い、というか痛い。それはおそらく、あまり余分な脂肪がなく、必要最低限の筋肉だけでできている場所だからなのだろう。痒い、というか痛い。これが、柔らかい腹回りだとか、内太腿だとか、そういう場所であったなら、痒みは、ただただ痒いだけで終わっていて、しばらくぼりぼりと掻いていればそのうち忘れてしまう程度のものだ。でも、足の指先なんかがぶよぶよ弛んでていいわけない。よりによってそんな処をやられるなんて。痒い、というか痛い。鈍感でいれば、痛みは感じない。その不快も痼りにはならないのだろう。けれども歩みの突先を鈍らせてはいられない。麻痺に近いその痼り。痒い、というか痛い。

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