農業における効率化と、再現性の低さという矛盾

(現在、映像は著作権の関係で、YouTubeから削除されてしまっています。内容は、非常に示唆に富んだ素晴らしいもので、いつかまた公開されることを切に希望しています。2021.1.25追記)

金ケ崎町農業協同組合が昔の農業を再現して記録した映像をYouTubeで見た。
(2020/9/1現在:動画は掲載元により削除されている)
NPO法人科学映像館が、著作者の許可を取り、配信しているのであるが、このような貴重な資料をいつでも見ることが出来ることはとても意義深い。

この映像は、1970年頃、岩手県の金ケ崎を舞台に、全国農村映画協会が製作したものである。
企画は、金ヶ崎農業協同組合。当時、日本列島改造を目指して、先進工業国家に向け、イケイケだった時代なので、こういう記録を真剣に残そうという取り組みは本当に貴重なことだったし、いまとなっては、よくぞ残してくれたというくらい、奇跡の記録だと思う。

科学映像館の解説によると、この映像は、
(以下引用)
旧金ヶ崎農協と農民が一体となって、先祖代々の土地が工業団地や住宅団地化に対する農民の対応を描いた3部作の1つ。
この3部作では、農業の厳しさの中に新しい農業への若者のたくましさ、農民の協同作業など、ほほえましいさまが垣間見られる。
(以上)
とある。

何度見ても見飽きることのない示唆と知啓に富んだこの映像は、化学肥料が当たり前となり機械化される前の日本の農業を真面目に再現した希少な科学的資料だ。
播種から始まり、田づくり、田植え、草取り、稲刈り、脱穀、籾摺り、精米と、このやり方を覚えておけば、今の時代、何が起きても人間は暮らしていけるだろう。

全ての作業の意味は現在、科学的に証明されていることばかりではないか。
結局のところ「生物多様性の農業」、つまり生態系との共存という考え方が、現在の世界の農業の先端であることは、この資料を見ても明らかだ。
昔の人たちは、経験の積み重ねのみで、正しいやり方としてブラッシュアップしてきたのだ。

今の日本で席巻されている、農薬、化学肥料使用を基盤とした現代農業には、別の次元で足らないものがあると感じる。

ただ、今のライフスタイルに照らし合わせ、これを職業にというのはなかなか厳しいだろう。だからこそ、ライフスタイルの一環として、生きる上での、すべき一つの作業として国民の多くが関われるように、産業の考え方や構造そのものに手を入れないといけないと思う。

この中に登場する「結(ゆい)」という言葉は、共同作業や共同の意識のことで、これがないと農業、いや地域は成り立たないという基本理念である。
地域コミュニティの本質は、この結(ゆい)にあるが、その結(ゆい)を、いかに地域の外部の人材を取り込んで、守っていくかが、今後、人口の減少に悩む農村地域の住民に与えられた命題である。

そして、この映像を見て改めて思うのは、今の現代農業は、再現性がかなり低いと言うことだ。
つまり、高度に機械化された大型農具は、修理に多額の費用と工業部品の供給がないと維持できない。さらに化学肥料は、それを生産する工場がないと入手が困難になる。つまり、どれだけ便利になっても、そのシステム基盤を担う、工業がなければ農業が再現できないという矛盾である。

この映像の内容は、肉体労働の大変さを除けば、その全てが再現可能である。
今回の世界的感染症拡大もそれを浮き彫りにしたが、様々な災害が多いこの国において、肉体と知恵だけで人は生き延びられるという基盤は、後世につなげないといけない。それこそ教育の役割だろう

子ども向け自転車教室 ウィーラースクールジャパン代表 悩めるイカした50代のおっさんです。