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未来からのストーリー

「あ、いつもの」

そうやっていつもどおり、マスターにコーヒーを一杯注文する。
グアテマラのコーヒーだ。
コーヒーの香りに包まれながら、ゆらゆら揺れる椅子に座って、一冊の本を読み進める。
また、1日が始まった。

ただただコーヒーを飲んで、本を読むという何気ない日々。
もう30年近く同じ日々の繰り返し。
でもそれが、自分自身にとっては優雅なひと時だった。
20代のころから夢見ていた風景。
そのままだ。

カランカラン。と扉が開く。

カウンターに座った彼はマスターにコーヒーを頼む。
その風景を背中を向けて気配を感じることも
もう日常の一ページだ。

たまに背中の方から聞こえてくる小言。

「あそこの椅子に座ってる人、いつもいるけど、常連さんですか?」と

「いや、あのかたはこのお店のオーナーですよ」
マスターが言う。

そう、私はこのカフェのオーナーだ。
20代のころに描いていたカフェを
60歳の時にオープンした。
まともに料理も作れないし、コーヒーも淹れるのは得意じゃない。
それでも、自分の好きなものに埋もれて生きていきたかった。

世界各国のコーヒーの匂いに囲まれて
世界各国のビールが飲める。
そして、世界各国のスイーツや料理まで。
店内の壁一面には世界を旅した写真たちが飾ってあって
地下に行くと本棚がズラッと並んである。
この本たちは、自分自身が読んできた本や
日本中を旅して集まってきた本たち。
この地下に潜るだけで、時間が経つのが早く感じる。

外に出れば、青空の下で、鬼ごっこをしたり、お絵かきしたり。
たまにヨガ教室や英会話なんてものも開催してて。

そこに集まる人々は、学校という居場所に馴染めない人や
社会という枠から抜け出した人。
心の奥底に抱えている違和感と戦い続けている人たちがほとんど。

そんな居場所を作りたいって
ずっと思ってた。

自分の理想を叶えるために
まずは世界各国周る必要がある。
そして、日本のことを知らないと次世代に語れないじゃないかって思いから
日本一周をする。

世界を周るには、お金も時間も必要だ。
個人事業主として、紹介してもらったビジネスモデルを手段に
約3年間奮闘し

2025年4月30日、ついに世界一周の旅にでる。
20代最後の一年。
一人じゃない。
自分の理想の旅に賛同してくれた仲間がたくさんいる。
一人は、セブに孤児院を作りたくて、でも世界も周りたいからって一緒に行くことになった。
そしてもう一人は世界遺産の前でダンスを踊って、それを私が動画に収めるために、一緒に世界を周る。
そしてもう一人はアフリカに新しいビジネスモデルを!と開発していくために、まずはいろんな国に足を運んで何が需要があるのかを探っていく。
ディズニーランドの世界制覇や高級ホテル巡り。
それぞれいろんな目的があるからこそ、いきたい場所に行き
食べたいものを食べて寝たい時に寝る。
ずっと一緒じゃなくて、たまに集まるくらいのそんな自由な旅。

約120カ国を一年で渡り歩こうって思ってたけど
意外と一つ一つの国が面白くて
まさか、5年もかかるとは思わなかったな。笑

2030年4月30日、やっと日本に帰国。
いつのまにか35歳手前になってる。
浦島太郎かのように、日本の状況がまったく分からない。

よし、次は日本一周だ。
ひとまず、世界各国でのお土産や写真は一軒家を買ってそこを倉庫にしよう。

日本一周のコンセプト
【人と人をつなぐ旅】
キッチンカーを借りて、世界各国のコーヒーと、今まで読んできた本を積んで
東京をスタート。

イメージは移動図書館。
本の裏表紙には、名前の書く欄があって
ルールは、絶対に売らないこと、捨てないこと。必ず誰かに貸すこと。

インスタグラムのQRコードが貼ってあって、
それを読み取れば、キッチンカーの所在がわかる。
その所在をたどって、本もきっと帰ってくるはず。

本もたまには人の手を渡って旅をしたほうがいい。

人の手の中で読まれる本は、その人の生活に溶け込んで
その人の心の中に記憶として残る。
いつか捨てられてしまうくらいなら、キッチンカーでまわったほうがいい。

そう、ふと思った時から、ずっと叶えたかった仕組み。

本だけじゃない。
キッチンカーを通して繋がる人もいる。
例えば、第一次産業の人たちを訪れて
売れ残りの野菜や歪な野菜たちを買い取り
個人経営の飲食店に調理してもらいにいく。

調理してもらったものをホームレスや、食に困ってる人たちに届けていく。
野菜農家も料理人もちゃんと名前を乗せて、顔がわかるように。

大きな公園のそばに止まったら
そこでは青空教室が始まって、先生はキッチンカーに来てくれたお客さんが
得意なことを披露していくスタイル。
こどもが大人に教えるってのも面白い。

こどもとか大人とかの概念なんてなくしたいと思ってたからこそ
その仕組みは結構いい。

居場所のない人たちの居場所が、訪れる先々で作られていく。
また会いたい。
またキッチンカー来ないかなって。

日本各地にキッチンカーのファンが溢れていく。

約5年間、日本中を旅して終止符を打った。
40歳。

次は個人店だ。
島がいいか、自然豊かなところがいいか悩みに悩んだが
やっぱり、東京がいい。

人に埋もれて生活している人たちの居場所となりたい。
そんな想いが日本一周中に大きくなって
東京のど真ん中、新宿に
10階建てのビルを買い取って、リノベーションをした。

1階には、もちろんカフェになってる。
外壁は木版を打って古風なデザインに。
そこまで広くはないが、カウンターがあって、本棚があって
テーブルが3席ほど。
ウッドテラスからは新宿御苑が見える。

地下室には本棚がずらっと並んでる。
日本一周でみんなが寄付してくれた本たち。
ここに入るには、暗証番号が必要で、入り方はカフェに通い詰めないと教えてもらえない。

2階には、シアタールームがある。
たまにイベントで上映会したり、オススメの映画を持ち寄って鑑賞会したり。
たまに、最新の映画上映権をもらえるから、そこで上映したり。

3階には、遊びスペース。
20代の時にハマったダーツ台が5台と、ビリヤード、switchなど様々なゲームで遊べる。ちなみにゲームはプロジェクターを壁一面に反映させて遊ぶ。

4階〜6階はゲストハウス。
終電逃したりしたときに、泊まれるように個室が各階5部屋ずつ。

7階にはシーシャ
8階には少しムーディーなBARがあって
9階には大浴場やマッサージルーム。岩盤浴やサウナまで
10階にはラウンジがあって、高級なワインやお酒が楽しめる。

屋上もあって、自給自足体験ができるようなスペースとハンモック、
屋外シアターやBBQ施設が備わってる。

このビル一つでなんでも楽しめるように、お客さんの声を都度取り入れて
内装も変えていく。

約20年かけて作り上げた。
最高傑作のビル。

名前は LIAN(リアン)
フランス語で絆という意味。

キッチンカーも同じ名前で旅をした。

ヒトが人として生きていくためにはひとりでは生きていけない。
だから、誰かひとりでも多くの人の居場所になりたいって
ずっと思い続けて、できた場所。

自分自身がそうだったから。
人見知りでコミュ障で、人間不信。
生きる価値がないって思っていた時に
いろんな人に助けられた。

個人事業主として奮闘した20代後半で
たくさんの経営者の方から、経営するためのノウハウや
コミュニケーションスキル、そして夢を持つということ。
その夢を具体的にして目標として描いていくこと。
それを発信して行動に移すこと。

そう教えてくれる人たちがいたから
今の自分がいる。

だから次世代に伝えたい。

夢を忘れるな。
小さい頃に思い描いた夢や目標
今やりたいって思ってること
時間があったらできるのになとか
お金があったらできるのになって
思うことを全部書き出してみる。

そんなもの叶うわけないじゃんって
周りから言われたら、それは叶えるしかない夢。
壁を超えて叶えた先に、新しい夢がまた待ってるから。

だからなんでも挑戦してほしい。
夢をもつことを恐れないで。

夢がわからなかったら相談のるし
やりたいことがなかったら一緒に見つけてあげる。
まだまだ次世代に伝えたいことはたくさんあるから
あと10年くらいは、このカフェに居座るとしよう。

あなたに出会えたから今の自分がいます。

っていつか棺桶に入る時にそう言ってもらえるように。
まだまだ残りの人生楽しむんだ。

って、なんか人生の物語を振り返ったらもうこんな時間か。
寝るとしよう。

おやすみなさい。
また明日。


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