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雨宿り

窓の外を見ると、雨が降り始めたようだ。

半袖の白いシャツにグレーのスラックス姿の男性がドアを開ける。

「いらっしゃいませ。」

「丁度得意先から帰ろうとしたところで
 急に雨が降り出してね。」

「灯りに照らされた看板で、喫茶店があるって
 気がつきました。

 朝天気予報見たんだけど

 曇りだったから傘を持ってこなかったん
 です。」

「少し雨宿りしていきますか。
 お飲み物は何になさいます?」

私はメニューを差し出す。

「コーヒーといってもいろいろあるんです
 ね。」


「ブラジル、グアテマラ、コロンビア、
 マンデリン

 どんなコーヒーがお好みですか?」


「少し深めの珈琲が好みなんだ。」

「グアテマラかコロンビアあたりの中深煎りの
 珈琲はいかがでしょう。」

「ではグアテマラで。」

ミルで豆を挽き、ドリップしたコーヒーを差し出す。

私はAhmad Jamalのレコードを取り出し針を落とす。



男性はゆっくりコーヒーを飲み終え、ふーっとため息のように深く息を吐く。

「このピアノとリズム心地よかったです。
 コーヒーごちそうさまでした。」

会計を済ませ男性がドアをあける。

男性の足取りは少し軽くなっている。

雨がやみ、雲の隙間から光が差し込んでいる。

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