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会話のキャッチボールを支える信頼は、パーソナリティの尊重から

会話のキャッチボールを終わらせる、3つのギャップ(キャッチボールは難しい?打たないスキルは重要だ で考察・提示)。これまで、情報の差ーキャッチボールを終わらせる”情報の差”の3つの正体、熱量の差ー会話の”熱量を上げる「受け取る力」、を書いてきたが、最後は、今回のパーソナリティの違いについて。

人は人を、2元論で判断しやすい

会話をする時、どんな視点で会話の相手をとらえるだろう? 
例えば私の場合、特に初対面の相手に対しては、正直に話してくれるか、言葉が信用できるかどうか、ということが大前提にあり、
会話を進めながら、オープンな方なのか、話すのが好きか聞くのが好きか、興味があることは何か、大切なことは何か、共通項があるか、仲良くなれそうか、などを半ば半自動的に情報収集している。

脳は2極化を好む

自らの経験から予測し、理解するために、そう言った判断軸を持ち出すのだが、その軸がもたらすのは、”話し役”か”聞き役か”、”オープンか距離を取りたいか”などという2元論による単純化した判断。
人は誰でも自分なりの軸を持っていて、相手のパーソナリティを測るものらしいが、そもそもそれは、進化の過程で、危険か否かの判断を繰り返して来た脳が二極化を好むから

しかし、口数が少なく、あまり自分のことを話さない人に対して、”オープンに話したくなさそうだから、この人とは当たり障りのない会話しかできない浅い付き合いになりそう”などと、パーソナリティや相性を単純化した判断をすると、会話の領域や深さを無意識に狭め、相手が持つ多面的な特徴や本当のパーソナリティから遠ざかってしまう。

客観的に会話を観察するのに使えるタイプ分け

こうした2元論を避けるために活用できるのが、4つのタイプ分け(コントローラー、プロモーター、アナライザー)だ
これはコーチングで、クライアントに合わせた個別のコミュニケーションを設計し実践することが求められるため、推奨されている手法。

(下)それぞれのタイプの”自己主張”と”感情表出”を軸とした図。

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自分と相手のタイプを知る

上の図は、感情表出と自己主張が軸になっているが、タイプ分けの視点は、2極化をもたらす自分軸を避け、会話を観察する姿勢を与えてくれる。
相手を注意深く観察すると、その人を構成する要素や会話の癖が見えてきて、相手の価値観、そして会話のヒントー相手が何を重要視し、どんな話し方が受け入れやすく、どこが共感ポイントか、に近づくヒントを得られる。

価値観を尊重し、コミュニケーションに活かす

診断をするとわかるが、タイプ別は、”100パーセントそのタイプ”ということは稀で、複数のタイプが強弱を持って一人の人の中に混在している。私はコントローラーとプロモーターの点数が2点しか変わらなかったし、授業では4つのタイプが同じ!点数の人もいた。

だが、それぞれのタイプが求めるコミュニケーションは全く違う。
コントローラーは、目標や目的、役割を端的に話されることを重視し、判断材料の提示を好み、他人からの指示を嫌う
またサポーターは、高圧的な態度を嫌い、”人”との和を重視したコミュニケーションを求めるプロモーターは新たなアイディアで、影響を与えることを重要視するが、アナライザーがもっとも重要視するのは、客観性や論理性などの正しさだ。

コーチングの授業で、コントローラーのみが集まったディスカッションとサポーターのみが集まったディスカッションをやってみたが、進め方も、話し合いのテンポも驚くほど違っていた。コントローラーは簡潔に物事を進め、誰もが議論を前に進めよう、リードしようというディスカッションになったが、サポーターは、お互いに発言を譲り合い、話を最後まで聞き、共感の表現が徹底して行われた。こうした自然に発生したコミュニケーションに、それぞれの重要な価値観を現している。

相手の受け取り方を理解し、声がけを極めたラソーダ監督

パーソナリティを理解するのは、同じ言葉でも届ける相手によって受け取り方が違うことを前提に、相手が何に反応するかを見極め、かける言葉を選択するためだ。そのお手本のような、ラソーダ元監督のエピソードがある。

昨今、起業家・前田裕司さんの『メモの魔力』がベストセラーになったが、実は大リーグ ロサンゼルス・ドジャーズのトミー・ラソーダ監督も相当な”メモ魔”で、常に選手を観察し、気づいたことを全てメモしていたという。

例えば、ある選手がヒットを打ってベンチに戻った際、「Good」と声をかけてもその選手はニコリともしなかった。監督は”「Good」という言葉では彼は反応しなかった”とメモを残し、次に「Great」と声をかけ、彼がニコっとしたのを確認し、”彼には「Great」という言葉の方がいい”と書き残していた、という具合だ。

(こちらの本に、そのエピソードが掲載されています)

これこそ、相手の反応を観察し、かける言葉を選択した素晴らしい個別対応!

パーソナリティへの偏見が会話を終わらせる

タイプ分けは、あくまでも2元論を避けて、相手の会話を興味を持って観察するためのツールで、それぞれのタイプに当てはまる点数は、環境や経験で変化する。
タイプ分けを決めつけに使っては逆効果。
自己主張が少ないと熱量が低いとは限らないし、人間関係の和を重視するからといって目標達成にコミットできないということではない。
それに、相手のパーソナリティから発せられる情報(会話の仕方、言葉の使い方、仕草など)に判断を下す際には、それが自分のタイプ(価値観)に影響を受けやすいことは、十分に理解しておきたい
物事に対する反応が早いコントローラーやプロモーターは、反応が遅いアナライザーやサポーターを遅いと感じやすいし、アイディアに富んだプロモーターは、客観的事実や論理性を重視するアナライザーからの質問が、懐疑的に聞こえるものだ。
パーソナリティの違いが、キャッチボールを終わらせる理由にしている場合、そこにどちらかの偏見が挟み込まれていることがある
。そこにチャレンジできる会話力を身につけると、会話の可能性は断然上がる。

それぞれのタイプが持つ価値観を尊重した会話、例えば、
コントローラー(と思える人)には、判断材料を差し出し、判断を仰ぐ、またはオープンクエスチョンで全てを任せて聞いてみる。
プロモーターには、影響力を伝えたり、プロセスについてもフィードバックしながら会話を続ける。
アナライザーには、客観的事実として物事を捉えた会話で進める。
サポーターには、相手を気遣う言葉や細やかな合意を大切にする。
などを心がけ、相手の反応を注意深く観察しながら、相手のパーソナリティを理解し、キャッチボールを続けたい。

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photo by Instagram @yuichi_chiwawa 

自他の観察が、キャッチボールを軽やかにし、予測不能な会話を楽しむ信頼を育てる

パーソナリティは生まれながらにして持っているものも、経験や環境でによって積み上がったものもあるので、自己理解と他己理解が違うこともよくある。
会話を聞いてみて、思っていたタイプと違うかも、といった場合や、より相手を知りたいときには、「こう思うんだけどあなたはどう思い?」「どういう人だと言われることが多い?」「昔はどうだったの?」「こう言われた場合、どう思う?」などと、相手を理解したい意思を示しながら、よりダイレクトに聞いてみることもできるだろう。

バッテリーコミュニケーションでは、会話のキャッチボールは予定調和に終わらない。話したいトピックのあるなしに関わらず、会話は可能な限り発展し、互いに何かを得て、会話の完了を感じられて収束する。
自分と相手を観察することは、それぞれがキャッチしやすいボールを知ること。それが事前予測できないコミュニケーションを楽しめる信頼を作ってくれる。

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