音楽の力は

旅行の最終日に車の中で中夜祭2019のプレイリストを作って聞いた。


音楽の力なんて嘘だと思った。

それぞれの曲は友人たちの声で歌い、友人たちの手で奏で、友人たちの鼓動でリズムを刻んだ。アーティストの音源を再生したはずなのに、実際に流れたのは私の記憶と体験だった。

高校生だった頃に生活を共にしていた友人たち、廊下ですれ違い私はUターンする、屋上で過ごした時間、あんなところで初めて喋った、という話を屋上でする、生活が共にあった、先輩にも、同級生にも、後輩にも、私は憧れていた、大好きな友人たち。バンドを組んでいない部員と、ライブを通して対話した。バンドメンバーと、練習を通して心を通わせた。兄のような男、生涯の友になるだろうと思えた奴、悔しいくらいの才能を持った少年、肩を並べて歩いた人たち、自分なりに全力で愛した女の子、最初からこいつとは相容れないなと思ったが今でもたまに喋るマサヒデ、色んな人間が私の周りにいた。

音楽の力なんて嘘だと思った。私が三年間浴び続けた爆発的なエネルギーは、人間の力だ。魂の力だ。あの頃音楽は手段でしか無かった。内から溢れ出るエネルギーのはけ口として音楽が選ばれ、それを私が全身に受けていた。気持ちがいい。今も、気持ちがいい。

音楽の力なんて嘘だ。その正体は、今も君たちが持つ、人間の力だ。形は変わっても、君たちは必ずそれをまだ持っている。何らかの形で、また出会いたい。昔愛したように、また君たちを愛せることを待っている。ふいに来る便りを待つように、私は待っている。

関口

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