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私にとっての黒はあなたにとっての白かもしれない『カラフル』レビュー

私の目の前に広がる世界は、私にしか見えません。あなたの前に広がる世界もまた、あなたにしか見えません。同じものを見ていても、角度が違うと、少しずつ違う風に見えているはず......だけど、時に忘れてしまいませんか?「いろんな角度=視点の違い」を様々な「色」として表現しているのが、こちらの本です。

『カラフル』作:森絵都

主人公の真(まこと)が見た世界
この本の主人公である、14歳の真は、見たくもない世界を見てしまいました。家族の表裏、大好きだった子の表裏、この世の全てに絶望し、真は命を絶ちました。これで終わるはずでした。だけど、ひょんなことから、抽選に当たった、罪を犯した「僕」の魂が真の体に乗り移ることになる場面からこのお話は幕を開けるのです。

指定された期間内に「僕」が犯した罪を見つけることができたら、ご褒美に、「僕」の魂は、再び輪廻のサイクルに戻れるというハラハラドキドキのミッション。この物語は、そのホームステイ期間の体験が真の身体を通して、「僕」の目線で語られていきます。

視点の違いがあることを教えてくれた
私は、主人公の真と同い年の14歳の時、この本に出逢いました。真と少し状況は違いましたが、とあることがきっかけで、見たくもない世界を見てしまった私にはぴったりの本でした。この本は、頑なになっていた私に、優しく、凛とした言葉で諭してくれました。それからというもの、今でも事あるごとに読み返しています。

"黒もあれば白もある。赤も青も黄色もある。明るい色も暗い色も。きれいな色もみにくい色も。角度次第ではどんな色だって見えてくる。"

「僕」は、真の家族とぶつかり合いながら、真の「勘違い」を一つずつ解いていきます。真にとって、許せなかった父の行動は、家族を守るための行動だったと知りました。真を馬鹿にしていたように見えていた真の兄は、本当は弟のことを心から大切に思っていたことを知りました。家族の不和、好きだった子のショッキングな行動......

真が見ていた世界は、真の視点でしかありませんでした。角度を変えると、他の人の視点を通すと、それぞれが事情を抱えながらも、お互いを想っていることがわかりました。

この部分を初めて読んだ時、「私は、一色しか見ていないのだ」ということに気が付かされたのを覚えています。私にとっての黒は、あの人にとっての白だったのかもしれない。もしかすると、グレーだったのかもしれない.......グレーと捉えていたら、分かり合えたのかもしれない、と、自分の視野の狭さを痛いほど思い知りました。

視点の差を埋めるのは、想像力
私たちは、自分の視点でしか物事を見ることができません。それを埋めるのは......想像力なのだと思います。わからないからこそ、わかろうと相手の立場・気持ちを想像する、その姿勢が大事なのだと思っています。人と分かり合えないな、どうしてなんだろう!と悶々とするとき、この本を読んでみてはいかがでしょうか?きっと何かヒントが掴めるはずです!

編集:円(えん)

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