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sleeping beauty |詩

私 切り取られた花みたいに
生きたまま横になって

ふたりの
密やかなる愛の掟が
息づいている
この部屋にいる


昼には
魂ごと抜け出して
大空を飛ぶ鳥になる

碧い海と空の交わるところで
お日さまの光を浴びて
白い羽を養う


夜になれば
抜け殻だったこの身体からだ
戻ってくるわ

あなたが訪れるたびに
春の祭の生贄いけにえみたいに
匂やかに

愛し合うほどに
美しくなる


でも
昼には部屋を覗かないでね


月の雫を頬にこぼした
白磁の
透き通る肌をした
冷たいアンティークドールが

永遠の処女みたいに
ひなげしの花に
埋もれながら
眠っているのを
見つけることになるから

ほっそりと長い手足を
しどけなく投げ出し
うすももいろの唇に
蝶を誘い込む甘い蜜をくゆらせて

時にあなたをひるませる
神さまから借りた瞳も
目蓋まぶたで隠したまま
息も時間ときも止めている

ああ、そうね
きっとあなたは
それもお好みでしょうけど


でも私は
昼には
輝く緑の葉をつけた
細い若木に戻りたい

永久とわの雫が降り注ぐ
はるかかなたの楽園の
天気雨に打たれたい


いつかあなたと
私の昼
私たちの夜を
重ね合わせた
きららかにかげる楽園に
行くことができたらいい

そこへつづく
天翔あまかける虹の
澄んだ橋を渡って

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