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今更ながらYOASOBIの『アイドル』をちゃんと聴いた。

超今更ながらYOASOBIの『アイドル』をフルコーラスで聴きました。

発表から約三ヵ月で2億2000万回再生を超える再生数を叩き出し、今年のナンバーワンヒットはほぼこれで間違いないと思われる今年を代表する楽曲。

これをMVと共に一度聴いただけで「これは売れない訳がないな」と思わされました。

俗に言うと、陰キャと陽キャを取り込む要素を多分に含んだ楽曲なのですよ。コレ。

まず、この曲はMVが示すようにアニメのオープニングテーマです。

この『推しの子』という作品はあの『かぐや様は告らせたい』でお馴染みの赤坂アカ×横槍メンゴのコンビで原作も既に大ヒットしている作品のアニメ。

主な支持層はオタクと呼ばれる人たちになる事は想像できる。

そのオタクが大好きな表現が概念と匂わせと直接的表現です。

歌詞を読んでもらえると、それが全て取り入れられている。

直接的表現どころか登場人物の名前まで組み込んでいる。

ここであくまで『アニメソング』という立ち位置を確立します。

この立ち位置、相当に不利だと思われるかもしれませんが、ここ10年アニメに関する楽曲の売れ行きは無視できない要素となっています。

というのも、オタクは今は売れないと言われるCDをグッズの一つとして購入するからです。

ストリーミングに関しても作品にハマればずっとその作品関係のものを回し続ける。

そういう事もあって、オタクの一定の支持を確実に獲得する事にかなり気を遣っています。

それと同時に、SNSで切り抜かれて使われる事をとても意識した楽曲だとも思った。

これは恐らく主にTikTokを意識したと思われます。

この曲を聴いていると、結構ストーリー性がある歌詞である事に加え、一定の時間ごとにインパクトのあるメロディが使用されている。

ものの数十秒〜1分間でキラーワードと組み合わせたキャッチーなメロディが流れる。

それが繰り返される事によって、キリのいい部分を切り取って振り付けを付けると楽曲の雰囲気も相まってとても『それなり』のTikTok動画が出来上がる訳です。

そして、その動画が拡散される事によってオリジナルの方のYouTubeの再生回数が爆上がりし、それが注目される事によって大きなニューストピックにもなる。

とてもよく考えられた『ヒット曲』だと思われます。

口で言うのは簡単だが、これを出来る人というのは実は一握りだと思います。

もっと言うならばYOASOBIのAyaseだから出来ることだと言える。

アーティストというものの長所であり、短所は『自分自身を曲げられない』事です。

『自分自身を表現したいから』であり、『世間に評価してもらいたい』からである。

それの両立というものはナカナカ出来るものではない。

自分自身の表現は自分が技術の高みを目指していけば、自分自身の望む表現ができるようになる。

しかし、世間に評価して貰うためにはその技術を押し殺しても、『分かりやすく』せねば評価どころか理解さえして貰えない。

技術的に素晴らしいものは、既に影響力を持つ人に認めて貰えれば広がる可能性は大きくなるが、それが広まるのは極めて限られた愛好者に留まる可能性があり、大きくは伝播しない可能性がどちらかと言うと高い。

逆に世間に評価して貰う方に振ると、やっている事の一貫性が傍目に分かりにくく自分の作品をコアに愛してくれる人間を作りづらい。

そうなると熱狂的なファンというものが付かなくなり、自分というものを深く理解したり、興味を持ってくれる人を獲得できなかったりするし、何よりやりたい事を出来ていないのだからフラストレーションが溜まる。

そこで、多くのアーティストは苦しみながら自分の承認欲求を満たしていく人が殆どなのである。

言うなればプライドをとことんまで貫き通すかとことんまで捨てるか。

この二択でやり方を決めないとプロにはなれないのである。

そう考えると、この『アイドル』という楽曲はそのタイトルの通り、とことんまで個人のこだわりを捨てた楽曲であると思っている。

限りなく『売れる』事に振り切った楽曲。

自分が作った評価を後回しにした楽曲の作り方。

徹底的に自分を殺して世の中のニーズに合わせた存在。

そうまさに『アイドル』なのです。

だからこそ、本当の中身を表現されていない。

この歌詞が刺さる!とか言ってる奴は薄っぺらいと思っていい。

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