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デジタル一眼カメラを始めよう (最終更新日:2023, Apr.9)


1.はじめに

フォロイー様の「今まではスマホ撮影だけど、デジタル一眼カメラ始めたい。どこから勉強すればいいの」といった主旨のツイートを見て、参考になればと思いこの記事を書いている

世の中には理論をほとんど知らなくてもあっという間に上達していく天才のような方がいらっしゃる、どの世界でも
だが小官は紛れもなく凡人なので、理論的に積み上げていかないと何も出来ない
この記事はそんな小官みたいな人間が読むことを想定している

勿論、天才の方に読んで頂いてもためになることを狙って書いていく

タイトルには「デジタル一眼」と書いたが、「レンズ交換可能式デジタルカメラ」全般を指しているとお考えいただきたい
次のように呼ばれているものはすべて含まれている

  • デジタル一眼カメラ

  • デジタル一眼レフカメラ

  • 一眼レフカメラ

  • ミラーレスカメラ

  • レンズ交換式カメラ

この記事では特定のメーカーのカメラに特有の機能や技術については言及しない
しかし、ここで記述することを実践するためには、カメラや関連機材の機能を使いことなす必要がある
それらについては使用する機材の有識者に確認いただきたい
小官はキヤノンユーザーなので、キヤノンのカメラや周辺機器についての質問は大歓迎である

また使用するカメラの撮像素子(昔のフィルムに変わって、電子的に光を感知して写真データを作る半導体部品)の大きさについては、最初に確認しておくことをお勧めする
レンズ交換式カメラの撮像素子の大きさとしては「フルサイズ」「APS-C」「マイクロフォーサーズ」あたりが一般的であろう
フルサイズ:約36mm x 約24mm
APS-C:約24mm x 約16mm (キヤノンのみ、約22.4mm x 約15mm)
マイクロフォーサーズ:約17.3mm x 約13mm

2.写真の技術の主要要素

小官が撮影するときの順番を念頭において説明する

1)レンズの決定

撮影するに当たり、最初に決定するのは使用するレンズである
レンズの焦点距離と明るさが決まると、写真の撮影意図のかなりの部分が決まるからだ
1ー1)主要用語の説明
レンズのスペックを表現する主な用語で絶対に理解しておく必要があるのが、「焦点距離」と「開放絞り値」だ
これらはレンズの型名や製品名に必ず表記されている
焦点距離:50mmや100mmといった2~3桁のミリメートル表記されている
開放絞り値:F値や「明るさ」と表現したりする場合もある。数値はだいたいF1.4、F2.8、F5.6、などと表現される。数値が小さい方が「明るいレンズ」と表現される

レンズは大きく「単焦点レンズ」と「ズームレンズ」に分けられる。それ以外は初心者向きではないので割愛する(魚眼レンズ、シフトレンズ…たくさん種類はある)
焦点距離と開放絞り値の組み合わせで「50mm F1.8」などと製品名が表現されているレンズを「単焦点レンズ」と呼ぶ。24-75mm F2.8などと焦点距離の範囲で記載しているものを「ズームレンズ」と呼ぶ
ズームレンズはレンズを交換しなくても焦点距離を変更できる。単焦点レンズは焦点距離を変えることは出来ない(レンズを付け替える必要がある)

1-2) 焦点距離が決まると
レンズの焦点距離と被写体までの距離が決まると、撮影できる範囲が決まる
例えば焦点距離50mm、被写体までの距離が5m、撮像素子がフルサイズの場合、被写体の位置の2.4m x 3.6mの範囲が写る

被写体までの距離と撮影範囲の関係 (簡易的)

以下のようなページで撮影範囲の計算が出来るので参考にしていただきたい
https://keisan.casio.jp/exec/system/1378430392

1-3) ボケと圧縮効果
レンズの焦点距離で決まるもう一つの要素は、「被写体と背景や前景との関係」である
いわゆる「背景や前景がボケた写真」を撮りたい場合は、焦点距離の長いレンズの方がボケやすい
また、焦点距離が長いレンズ(いわゆる望遠レンズ)だと、被写体のすぐ近くに背景があるように見える。これを圧縮効果と呼ぶ
ボケについては2-1-2)に後述する

2)露出の決定

多くの写真の教科書には露出の話にかなりの紙片が裂かれている
それぐらい、写真の表現を決めるために重要な要素だからだ
露出とは「写真の明るさ」だと言える
人物撮影では多くの場合、被写体のお顔がしっかり明るい写真が好まれる (もちろん例外はあるが初心者向きでは無いため省略)
そのため、お顔にしっかり光が当たるようにカメラを調整していく必要がある
ひとまずストロボ(フラッシュ、あるいはスピードライトともいう)は抜きにして話を進める

2-1)露出決定の要素
露出は主に次の3つの要素で決まる
・シャッター速度
・絞り値
・ISO感度

2-1-1)シャッター速度
シャッター速度、と表現されることが多いが、本当は「シャッターが開いている時間」である
シャッター速度のことを「SS値(シャッタースピード)」や「Tv値(タイムバリュー)」などと表記している場合もある

シャッターの構造については初心者向きではないので省略するが「シャッターという幕(舞台の緞帳をイメージしてほしい)が撮像素子の前で開閉し、レンズを通して入ってきた被写体からの光を撮像素子に当てている時間の長さを調整している」とお考えいただきたい
「シャッター速度」はその時間の長さである
シャッター速度は例えば、「1/200秒」などと表現される (つまり0.005秒である)
この数値が大きくなればなるほど、写真は明るくなる。長時間、光が当たることになるので、当然である

シャッター速度がどのように表現に影響してくるだろうか?
通常、シャッター速度が速いほうが、ブレにくい

ブレは大きく分けて、手ブレと被写体ブレの2種類がある
手ブレは表現では無く簡単に言えば失敗写真である。手ブレはカメラマンの技術と、カメラの手ブレ補正技術で補える
一方、被写体ブレ(被写体が動いていると、像が多重に移る)を防ぐためにはシャッター速度を速くするしか手段が無い
ただしシャッター速度をあえて遅くして被写体をぶらすことで躍動感のある表現をする場合もある

2-1-2) 絞り値
絞り値とは一般的にレンズを通る光の軸の太さ、と表現出来る
1-1)でレンズの「開放絞り値」という言葉を説明したが、レンズを通る光の軸は絞りという部品を操作することで太くしたり細くしたりすることが出来る
「開放絞り値」の時に光の軸が最も太くなる
絞り値の数値が小さい方がより多くの光が撮像素子に届くため、写真は明るくなる

絞り値がどのように表現に影響してくるだろうか?
絞り値が小さいほど、背景や前景がボケやすい
学校の授業で習う「レンズの焦点」は1点だが、写真の場合、ピント(焦点)が合っている範囲 (正確にはピントが合っているように見える範囲) は少し前後に幅がある。これを「被写界深度」と呼ぶ
絞り値が小さくなると「ピントが合っているように見える範囲」が狭くなり、絞り値が大きくなると範囲が広くなる
ボケを生かした表現をしたい場合は、概ねF2.8より小さな絞り値を使う必要がある
被写界深度については、以下の様なページで計算することが出来るので参考にしていただきたい
https://keisan.casio.jp/exec/system/1378344145

2-1-3) ISO感度
「イソかんど」、「アイエスオーかんど」、「イソち(値)」、「アイエスオ-ち」などと呼ばれる値である
これは50、100、200、400などといった整数値であらわされる
この数値が大きいほど、写真が明るくなる

ISO感度がどのように表現に影響してくるだろうか?
実はISO感度自体は表現にほとんど影響しない
ただしISO感度が大きくなると写真の品質が落ちる、とされている
その「落ちる程度」はカメラの種類によって変わってくるが、一般的に撮像素子が大きい方が、例えば「フルサイズ」の方が大きなISO感度を使っても品質が落ちにくいと言われている

2-1-4) 3要素の組み合わせ
シャッター速度・絞り値・ISO感度の組み合わせで明るさ(露出)が変わってくる
ちょうど良い露出のことを「適正露出」と呼ぶことが多い
多くのカメラの自動撮影モードではカメラが勝手に「適正露出」を判断してシャッター速度・絞り値・ISO感度を調整する
だがカメラが決定した「適正露出」が撮影者・被写体が意図する露出(つまり明るさ)と適合するとは限らない
その場合は、徐々に高度な撮影モードを使いこなして、露出を調整していく必要がある

3)焦点合わせ

いわゆる「ピント合わせ」であるが、これはスマホだろうがデジタル一眼カメラであろうが、あまり変わらない
デジタル一眼カメラではいろいろな焦点合わせの機能があるが、現在は自動焦点合わせ(いわゆるオートフォーカス、AFと表記されることが多い)機能が使われることが多い

最近はカメラが人間の顔や更には瞳の位置まで自動的に認識し、瞳に焦点を合わせてくれる機能が主流となっている
しかし、その焦点があう位置が表現意図と適合しているかは、別の問題である
違う場所に焦点を合わせるためには、各カメラの焦点合わせ機能を理解して操作する必要がある

もう一つ、2ー1ー2)で書いた、焦点の合う範囲についてはよく理解し、絞り値(および焦点距離)を決めていく必要がある

4)補助光源

最初は被写体の周りにすでに存在している光(太陽光、室内照明など)で撮影することが多いと考える
しかし、いろいろな表現をするためには、補助光源としてストロボ(フラッシュやスピードライトとも言う)やレフ板などを使う必要が出てくる
詳細は初心者向けの範囲を逸脱するので割愛する

更新履歴

2023/04/09 焦点距離の図を追加
2023/04/08 撮像素子の大きさを追記
2023/04/06 誤記訂正
2023/04/05 被写界深度について加筆、他誤記訂正
2023/04/01 誤記訂正
2023/03/19 新規作成