#173 Jリーグ30周年記念、最終節ドキュメンタリー③2010年J1残留争い

Jリーグは30周年を迎えた。
この国のサッカー界はいわゆるビッグクラブが不在と言われがちで、それは賛否を持って語られる。勿論、わかりやすいビッグクラブがいないことがデメリットと化す瞬間もある。だが、そういう群雄割拠の構図はこれまでに様々なドラマを最終節に生み落としてきた。ここではそんな、Jリーグの歴史に残る優勝争い・残留争いの最終節と、そこに至るまでの物語を振り返っていこうと思う。

第3回は2010年の残留争いである。
Jリーグでは世界各国のリーグよりも遥かに多い頻度で「まさか降格すると思っていなかったチームの降格」という事象が起きる。2012年のガンバ大阪、2013年のジュビロ磐田、2014年のセレッソ大阪、2018年の柏レイソル、2022年の清水エスパルス…そういった事例は度々起こり、それはシーズンを楽しむ上での大いなるサプライズともなっている。今回はそれらと同様に、驚きの結末を迎えた2010年の残留争いについて振り返ってみたい。

2010年のJ1チーム
ベガルタ仙台(前年J2、1位)
モンテディオ山形(前年15位)
鹿島アントラーズ(前年1位)
浦和レッズ(前年6位)
大宮アルディージャ(前年13位)
FC東京(前年5位)
川崎フロンターレ(前年2位)
横浜F・マリノス(前年10位)
湘南ベルマーレ(前年J2、3位)
アルビレックス新潟(前年8位)
清水エスパルス(前年7位)
ジュビロ磐田(前年11位)
名古屋グランパス(前年9位)
京都サンガFC(前年12位)
ガンバ大阪(前年3位)
セレッソ大阪(前年J2、2位)
ヴィッセル神戸(前年14位)
サンフレッチェ広島(前年4位)


①STOP THE KASHIMA


2010年のJリーグの最大の関心といえば「2007〜2009年にかけて3連覇を達成していた鹿島をどこが止めるのか」というに集約されていた。
その有力候補として前年も最後の最後まで鹿島と優勝を争った川崎とガンバ、大型補強を敢行した名古屋の3クラブが期待されており、同時に良い若手が育っていた浦和、清水、広島といったチームの名も挙がっていたが、その良い若手が育っていて期待できるチームの枠の中にFC東京という名前は確かに挙げられていた。スポンサーの撤退などで補強が思うように進まなかった側面こそあったが、城福浩監督体制になって3年目…2008年は6位、2009年は5位+ナビスコ杯を制覇。日本代表からお呼びのかかるような選手も増えた。今年こそはリーグで…!そんな想いも抱く開幕前だった事だろう。

いざ開幕を迎えたW杯イヤーの2010年シーズン。開幕ダッシュに成功したのは浦和、清水、名古屋の3チームだった。特に清水は開幕から10試合を7勝3敗の無敗で乗り切って首位に立つ。その一方で期待されていたほど勝点を積み上げられなかったのは、引き分けが嵩んで勝ち切れない試合が進んだガンバとFC東京の2チームだった。逆に下位に沈んだのは仙台、大宮、湘南、京都、神戸。…まぁ、言っちゃ悪いが、昇格組と残留争い常連組がシンプルに顔を並べた形だった。


しかし、この年は6月に南アフリカワールドカップが開催される。その為、第12節を最後にJリーグは約2ヶ月の中断期間に突入した。
…ご存知の通り、南アフリカW杯は日本サッカーの歴史に於ける大きな分岐点となった。それは純粋に異国でのW杯で決勝トーナメント進出という偉業も勿論だが、このW杯を境に日本人選手の海外移籍が急増するのだ。それは間違いなく日本サッカーの地位向上を意味し、そして更に促進させ、今日に繋がる日本代表の進化に大きな意味を持つ事になったのだが、南アフリカW杯を機に始まったその流れはこの年のJリーグにとって、最終結果にあまりに大きな影響を及ぼす事となる。

第12節終了時(中断期間前)順位表)
1位 清水エスパルス(25)
2位 鹿島アントラーズ(24)
3位 名古屋グランパス(22)
4位 川崎フロンターレ(21)
5位 浦和レッズ(20)
6位 セレッソ大阪(19)
7位 横浜F・マリノス(18)
8位 アルビレックス新潟(17)
9位 サンフレッチェ広島(16)
10位 ガンバ大阪(15)
11位 ジュビロ磐田(15)
12位 FC東京(14)
13位 モンテディオ山形(14)
14位 ベガルタ仙台(13)
15位 ヴィッセル神戸(11)
16位 大宮アルディージャ(10)
17位 京都サンガFC(10)
18位 湘南ベルマーレ(9)













②南アフリカW杯という分かれ道

ここから先は

6,645字 / 10画像

¥ 300

この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?