旋法⑩

今日は予告通り、ドリア旋法(ドリアン)について書いていきたいと思います。

実際に教会旋法の中でも最も良く使われる旋法ですから。

理由としては2つあると思います。

①昔から良く使われる旋法であった

②現代の短調との親和性が高い

の2点です。

①についてはこれまで書いた通りです。実際に今でも「Scarborough Fair」や「Greensleeves」は普通に聴かれる楽曲ですし、過去においても頻繁に使われる旋法であったとされています。

むしろエオリア旋法より、こちらの方が一般的だったとも言われています。

②については説明が必要ですね。

元々の短調の原型はエオリア旋法だったとされています。

いわゆる自然短音階と一緒ですから。

ただ実際には自然短音階だと、ドミナントの中に主音への導音が含まれていないので、和声的に考えると、やはりよろしくないのです。

そのためにはAへの導音としてG#が必要になります。そこで和声的短音階であるラシドレミファソ#ラという音階が生まれる訳です。

ただそうなると、ファとソ#の間が増2度離れてしまうので、旋律としては不自然な旋律になります。

そこで生み出されたのが旋律的短音階であるラシドレミファ#ソ#ラです

但し上行の場合のみが基本で、下行の場合は自然短音階とする場合が多いが、必ずしもそうする必要もない、って歯にものが挟まったような表現ですね。

元々のソ#はラに移行するための導音なので、上に上がる場合は#が付くのですが、下に向かう場合は導音ではないので、自然短音階でいい、という話です。

そうは言っても下行時に使ってはいけない、という話がある訳でもないので、使うことに問題がある訳でもありません。

というのも基本的には和声法が前提のものであるが故に、上行、下行という要素よりも、和声としてどうか、の方がより中心的概念になるからです。

まあそんな話を書いていると本筋から外れてしまうので、元に戻ります。

この旋律的短音階ですが、他の短調や他のマイナー系モードと違った特徴を持っています。

ドリアの6です。

他の短調なりマイナー系モードは、完全5度を持たないロクリアンを除き、6度の音は5度の音の半音上になります。

ただ旋律的短音階とドリア旋法のみがドリアの6を持っています。

そう考えると、ドリア旋法と旋律的短音階は比較的類似の存在とも言えます。

現在進行形で使われているものと類似していれば、やはり聴いていても不自然さを感じないものなんですよ。

実際に「Scarborough Fair」や「Greensleeves」、今聴いても普通に聴こえるじゃないですか。

だから比較的耳に馴染んでいるんですよ。

だからポピュラーでも使いやすい訳です。

華原朋美さんの「I′m Proud」のサビ終わりからAメロにかけての部分もドリア旋法を想起させるコード進行ですよね。

執拗に繰り返してますね、ドリアンだドリアンだ、とでも言わんばかりに(笑)。

使いやすい割に、少し違った雰囲気があるという、独特なモードであるが故に、良く使われるモードになっている訳です。

で次はフリギア旋法について触れたいと思います。

ほぼ書きたいことを書いていて、読んでいただけることも期待していませんが、もし波長が合えばサポートいただけると嬉しいです!。