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かな入力の呪い

時は昭和後期。私が高校生だった頃の話。
授業科目に「タイプライター」があった。ワープロがやっと出始めた頃だがあえてのタイプだ。ワープロは高価で人数分は揃えられなかったのだろう。
そのタイプの授業に入る前に選択しなければならない事があった。

「かな」か「英文」か。

ローランドのオレかオレ以外かみたいだけど、その選択に悩んだ。
しかも「かな」と「英文」でそれぞれ本体の台数が決まっている。
クラス全員の希望が通るとは限らない。

そこで決め手になったのは、検定試験の採点方法だ。
「かな」は1文字ミスで30文字のマイナス。
「英文」は1文字ミスで50文字のマイナス。

検定方法はどれだけ正確に沢山打てるかが基準と知り、これはラクな方を選んだ方がいいじゃんとなり、マイナス30文字の「かな」を選択した。

しかしこの選択が後に大きな過ちになるとは当時は露ほどにも思わなかった。クラスでは「英文」が人気でクジに負けて「かな」になった子もいた。
21世紀のこの時代、その子もきっと私と同じ気持ちでいるはずだろう。

タイプの授業はガチガチチーン!が鳴り響いていた。
今のPCのキーボードとは違い、キーの隙間が大きくて指を挟んだりもした。
なかなか上手く打てなくて「ミスA組」なんてあだ名を教師に付けられた。
それが悔しくて負けず嫌いな自分は必至でブラインド入力を身に付けた。

時が経ち職場にPCが標準装備されるようになった時に、当時の己が取った選択に対して激しく後悔した。

みんな標準で「ローマ字入力」なんだよね・・・。
つまりキーボードは「英文」で打つんだよね・・・。

負けた。。。英文を選んだ者達は先見の明があったのだ。
今頃は軽やかなタッチでキーをタイピングしていることだろう。

そんな中で自分は「かな入力」。
新しい職場へ行くたびにキーボードの設定を「かな」に変更する。
そうしないと入力出来ないんだもの。。。
多少は英文も打てるけど、かな入力ほどのスピード感は出ない。

たまに他の人が私のPCを使うと「なにこれ?!」と驚く。
そう、だって私は「かな入力」だもの。「ローマ字入力」のつもりで打つと意味不明な文字が出るのさ。

以前に「オレ初めてかな入力の人見た!」と驚かれた事がある。
わたしゃツチノコか!と思ったけどやっぱり珍しいのかもしれない。

先日同じグループのAさんとBさんの会話が耳に入った。
Aさん「いやぁ先方がひらがな入力をしていたので驚きましたよ~」
Bさん「え?ひらがなで打つの?そんな人いるの?」
そこにス~っと「私もかな入力なんですよ・・・」と突っ込んだら
ABさん「えぇぇここにもいたぁぁぁ」って幽霊じゃないんだから。。。

そんな訳であの時英文を選択していたら良かったなぁと思った。

今は一人1台が主流だけど、共有で使用している時は文字入力の設定を毎回変更するのが面倒だった。
自宅のPCは子供と共有しているので、たまに「なんじゃこりゃぁ」と叫ぶ声が聞こえてくる。「切り替え方くらい覚えろ」って言うと「ローマ字入力を覚えろ」と切れ返される。

まぁ確かに・・・そうなんだけど。
長年の習慣は変えられないのだよ。1文字打てば済むしラクなんだよ。

かな入力の時代はやって来ないのかなぁ。
ラクだってば。本当に。


#あの選択をしたから

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