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手袋

手袋を買った。

朝、運転中、母が手が寒いと言っていた。

母は穴の開いた手袋をしていた。あるいは姉が皮の手袋を去年プレゼントしていたけれど、あれはたぶんちょっとよそ行き用なので普段の運転にはあまりしないと思われる。

それで買おう買おうと思って仕事中の合間に、昼休みに走って行ける一番ちかくのデパートの通販サイトを見たら、私の想定の5倍ぐらいの値段の手袋がいっぱい並んでいた。

買わなきゃ買わなきゃと思っているあいだにこの1、2日でぐっと冷え込んで、本当に手袋がないと出られないような気温になってしまった。

うんざりして、帰る間際の職場の隣の席のおねえさまに聞いたら、婦人雑貨は新宿の○○デパートがいいわよ、と言われた。

待ち合わせの時間まであいだがあったので、○○デパートまで行った。

雑踏のなかを道に迷いつつ、○○デパートにたどりつく。

おかあさんに手袋を買いたいんです、

と入り口のきれいなお姉さん(お姉さんの目の前には巨大なスノーマンが座っていた)にいったら、「ここをまっすぐ行くと婦人雑貨です」と言われた。

人ごみの中で手袋をただひたすら選んだ。

職場の事務中に寒さしのぎに履いていたレッグウォーマーも、靴下の色も、変な色でそのまま出かけてきて、自分の恰好がその華やかな百貨店の1階の婦人雑貨の雰囲気に合わなくて、化粧も落ちかけて、そういう自分がいやだった。

結局、候補にあがっていたもの5種類のうち、一番値段の安いものが一番良さそう(色味と手触りと実用性のバランスを考えた結果)という結論に達したので私も同じものを色違いで買うことにした。

レジに並んで、

係の人がこちらのレジへどうぞ、と案内してくれた。

手袋のピンクの方は、プレゼント用で包んでもらった。

待っている間、そのレジの方の事務連絡みたいなのをふと見たら、その方が私の伯母と同じ名前だった。その世代に流行った名前。

どのシールがいいですか、といわれてクリスマスのシールを貼ってもらった。

計算機をたたいて言われた金額を、クレジットカードで支払ったら、

出てきたレシートと、計算機の金額とが、ちょっと違った。

計算機を叩き直してくれた。

出てきたレシートにざざっとアルファベットでクレジットカードのサインをしたら、カードの裏のサインと同じものでお願いします、と言われた。

レジの方は「カードの裏のサインと同じものでお願いします」とまったくおなじことをリピートした。

疲れていて、両手が財布とカードでふさがってしまって、そしてそういうことは初めて言われたので、

ちょっとまってください、と言った私のことばはとてもするどく響いた。

「申し訳ありません」とレジの方は謝ってくださった。

そこではっとして、そのレジの方を見たら、その方は母と同じくらいの年の頃だった。

母は主婦だけれど、その方はこの慌ただしい百貨店の中でずっと朝から立ちっぱなしなのかもしれない。

おかあさんに愛を出すために手袋を買いにきたのに、レジの人に冷たくしていてはなんの意味もない。

受け取った後、

お名前、○○さんっていうんですね、わたしの伯母とおんなじなんです、と言ったら、レジの人は「そうなんです、2月生まれだから、単純なんですけどね。」とおっしゃった。

それで渡す用の紙の手提げ袋と、持って帰る用のビニール袋もつけてくれた。

ここまで書いて気づいたけどあのレジのおばちゃん、私が手袋選びに疲れて若干イラッとしている一瞬の間にかなりほんとうにたくさんのことをしてださっていた。

お会計が済んで、リュックサックをごそごそしている間にそのレジの方は私に商品の手提げを渡そうとして、私がリュックをごそごそしているものだから、また「すみません」と誤ってくださった。

それで、ちょうどリュックサックに入っていた、ラッピングされた小さな包みを、これは貴女へ、クリスマスプレゼントにどうぞ、と言ったら、ものすごく喜んでくださった。

結局、手袋は買えたけど、そのレジの方に私が強い口調になってしまったことは、謝れなかったなあ、と思いつつ店を出た。


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