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落ちこぼれは可能性/TOEICは嫌いだ

もくじ
■TOEIC に罪はないが
■落ちこぼれは可能性。アレクサンドルの言葉
■英語の勉強をやめた理由
■嫌なら「いま」やらなくてもいい
■わからないようでわかるたのしさ


☆この記事は投げ銭制です

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先に断っておくがTOEICに罪はない。

先日、こんなことを書いた。

「(略) もし就職活動にあたってTOEICも運転免許取得も大嫌いなら、わたしは『やらなくていい』と思います。それは人と比べて怠惰なのではなく、イヤだと思う感情もあなたの可能性のひとつだから、と思うわけです。」




偉そうに書いたけれど、
これは私のロシア語の先生、アレクサンドルに教わった。

ロシア語の授業後。

アレクサンドル先生(59歳)
ハルカ:「クラスメイト(中、仏、カナダ、台湾、西、伊)はみんな授業で一回テキスト読んだだけで理解してるけど、
でも私は全然わからないんです。ほんとうに、全然。」


アレクサンドル先生:「わかるさ、しかしそんなことはまったく気にしなくていい。

それはキミにしかない、



かけがえのない、可能性なのだから。

これは僕も外国語学習者としても理解できるし、
長年教師をしてきた経験でも、そう言える。
日本人の生徒はね、僕の経験上、
みんな、ものすごく時間をかけて、ちょっとずつ、ちょっとずつ、
お腹の底から長い時間をかけて溜めていって、みぞおちまできて、
胸まで来て、それがのどのあたりまできて、
口からこぼれそうになったときにやっと、
話したり、読んだり、できるようになるんだ。
僕が初めてロシア語の授業を持ったときにね
それはそれは酷かった
クラスはアメリカ人、フランス人、その他ヨーロッパ人。
その中に一人だけ、日本人がいた。
2,3日して、日本人以外の生徒はみんなロシア語で、喋りだした。
あってるかまちがっているかは置いておいて、とにかくみんなしゃべるんだ。
それが、その日本人の彼だけ、
一言もしゃべらない。
一か月経っても、彼は一言もしゃべらない。
彼は日本のビジネスマンで、会社から莫大なお金をもらって授業にきていたから、
休まず通ってくるんだけど、
でも一言も喋らないんだ。

僕は教員を辞めようかと思った。
それがあるとき、彼は突然しゃべるようになったんだ。

日本の芸術のあの繊細さ、
日本の技術力の細やかさ、
長い長い時間をかけて、
つみかさねて、
やっと出来上がった美しさだろう
それは民族性であって、
キミが不勉強だからなわけじゃない
ただ日本人は他の国の人より時間をかけてはじめて形が見えてくる人たちなだけだから、
他のクラスメイトより、ながいながい時間をかける必要はある。

もう一度いう、
これは君がかけがえのない可能性を秘めていることを示しているのであって、
唯一無二の魅力なのだ。
人と比べる必要は全くない。」

わたしはこれを聞いて泣いた。
自分は落ちこぼれだと信じて疑わなかったのに、
アレクサンドルの目にはただただ、
「それがハルカの可能性」としか映っていなかったのだ。




学生時代、わたしは英語の翻訳学校に行っていた。
その時の先生は二人いたのだけれど、お二方はいずれも「あなたは若いんだから翻訳だけに目標を絞らないほうがいい」と仰った。
それが直接のきっかけではないけれど、
結局わたしは英語の勉強から離れた。

私の周りには中学時代から英語圏の帰国子女がいっぱいいて、
英語を勉強している人もいっぱいいて、
優秀な人がいっぱいいて、
自分はサカダチしてもかなわない。
そもそも人と比べて敵うとか敵わないとか、
はたまた試験英語の点数比較とか、
英語も豊穣な文化圏のひとつの切り口であるのに、
そういう尺度でしか外国語に接することができないことが苦しかった。

もしあのまま英語を勉強していたら、
アレクサンドル先生の言葉には絶対にたどり着けなかったとおもう。

ロシア語話者、あるいはソビエトを生きた人達から、こういう重さの思考が時々ぽこっと出てくることは、
米原万里さんの本で知った。



そう、だから、TOEIC に罪はないけれど、
嫌なら英語の試験って、「いま」無理してやらなくても、いいんです。
もし試験という形で英語が勉強したくなったり、巡り合わせ上試験を受ける必要になれば、
そういうTOEICや試験英語が楽しくなる書籍はちゃんと作っている人がいて、いい本はちゃんと世に出ていて、しかも安価で、必要なタイミングであなたのところに巡ってくる。

これが ロシア語とか、所謂"その他の外国語"だったらもう、いい本はあるけれど、そんなに選択肢はない。とあるロシア語の良書といわれる教科書は絶版で、古本が6,000円から1万円超の高値で出回っている。



外国語はたのしい。試験嫌いに鞭を打って英語嫌いになっては本末転倒。
『ローマの休日』のオードリーヘップバーンの喋る英語にキュンとしたり、
その時間と労力で、ぜひ英語にちかい、英語が混ざっている言語の文化圏に飛んでほしい。
そういうことをしているうちに、
可能性の糸が見つかるかもしれないし、
なにより
わからないようでわかるって、こんなにすごいんだ、ってきっと興奮するから。



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