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アンティゴネーの妹たちへ(2022参議院選挙直前緊急企画「どうでもよさに抗う」寄稿文)

 先日、「アンティゴネー」の翻案作品、『ヴェールを被ったアンティゴネー』(フランソワ・オスト/著 伊達聖伸/訳 小鳥遊書房 2019)を読んだ。同著はソフォクレスのギリシャ悲劇「アンティゴネー」を翻案した戯曲で、ムスリム女性アイシャが、死んだ兄の葬儀への参列を禁じる校長に、ヴェールを被って抗議するというものだ。背景には、2004年、フランスで公立校におけるヒジャーブの着用が法律により禁止されたことがある。  「アンティゴネー」は、オイディプスとその母親の間に生まれた娘、アンテ

    • 『鳥と刺繍』(箱森裕美/著 箱森裕美 2023)感想

      ●読書会のお知らせ2023年11月12日(日)21時から、箱森裕美さんの句集『鳥と刺繍』の読書会 を開催する予定です。お気軽にお立ち寄りください。 箱森裕美さんの句集『鳥と刺繍』は、2023年11月11日(土)開催、#文学フリマ東京にて購入できます! 参加に当たり、レジュメに当たる記事を作成してみました。なお、各章はタイトルのみですが、便宜的に「第〇章」と数字を付しています。 ●句集の構成 『鳥と刺繍』は5章構成、262句が収録されている。以下、句集全体の構成や、それぞ

      • 『中くらゐの町』(岡田由季/著 ふらんす堂 2023)感想

        2023年10月8日22時から、『中くらゐの町』の #句集読書会 を開催する予定です。参加に当たり、レジュメに当たる記事を作成してみました。よろしければお気軽にご参加ください。 どこにでもありそうでどこにもない町 「公民館」「市役所」「公証役場」「県庁」等、町には必要不可欠でありながらも、主役になりにくい場所や、名前のない道を詠んだ俳句が印象に残った。程よく都会、程よく田舎で、住み心地が良さそうな町。風土性が排除されており、具体的な地名を詠んだ句は「市ケ谷のホームから見る

        • サッカーを観に行った話

          2023年6月11日、アルビレックス新潟と京都サンガF.C.の試合を観に行った。サッカーの試合を観に行くのはこれが二度めだ。一度目は早春のアルビレックス新潟レディースの試合だった。そのときの動員数は確か783名だった。四万人入る筈のスタジアムはほとんどがら空きで、本当にこのスタジアムが埋まる日があるのだろうか、と不思議に思うくらいだった。 私には兄が二人いて、二人ともサッカーが好きだ。学生時代、ウィーンに旅行に行くとき、お土産のリクエストを聞くと、二人してサッカーのユニフォ

        アンティゴネーの妹たちへ(2022参議院選挙直前緊急企画「どうでもよさに抗う」寄稿文)

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        • VdBL俳句への挑戦
          20本
        • るるぶ俳句界
          6本

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          【終了しました】BL俳句ネプリ「彗星書架」第1号&第2号を公開します。

          2023年6月11日、BL俳句「彗星書架」第2号を公開しました! あわせて4月1日に発行した第1号のPDFデータを、期間限定で公開いたします。 なお、「彗星書架」は、BLをテーマにした5句連作句会の投句一覧をネプリとしてまとめたものです。参加者は、相田えぬ、楠本奇蹄、佐々木紺、西川火尖、星野いのり、松本てふこ、みやさとです。 第1号のテーマは「先生」、第2号のテーマは「おさななじみ」。BLが好きな方、俳句が好きな方、BL俳句が好きな方に、お気軽に手に取ってお楽しみいただ

          【終了しました】BL俳句ネプリ「彗星書架」第1号&第2号を公開します。

          兎がまだ生きていること ―小松岬「しふくの時」覚書

          小松岬「しふくの時」を読んでフェミニズム的にちょっとモヤモヤしたことと、連作として読んだときに、やはり30首めが大切なのでは?と思ったことを中心に書きたいと思います。 ● 加害/暴力の主体の脱焦点化 子を産むか金稼ぐかの街にいてわたし砂漠でも水を探すね いつの日か祝えるだろう生殖がほんとにわたしのものになったと 奪われた星で磨かれきらきらとうつくしいままガラスの天井 一読したとき、「雌伏」に対する「雄飛」が書かれないことへの違和感がありました。これらの歌で言えば、「子

          兎がまだ生きていること ―小松岬「しふくの時」覚書

          「これは私の怒りではない」考察(みやさと編)

          この度は、多くの方に俳句の季語斡旋調査にご協力いただき、ありがとうございます。twitter 上で行ったアンケート調査とその結果は以下の通りです。 お礼を兼ねて、いくつか追記したいと思います。 1.「これは私の怒りではない」の成り立ち 家の近くにおいしいラーメン屋さんがあって、最近よく通っています。そのラーメン屋さんにはテレビがあります。ラーメンをすすっているときに、流れてくるニュースを見ました。それは赤木雅子氏の意見陳述に関するもので、直面しているであろう理不尽を思い

          「これは私の怒りではない」考察(みやさと編)

          備忘録(モンゴル) 2018/5/29

          「俳句には季語が必要です」と説明した後、モンゴルから来た留学生に、「秋刀魚」のように、その名だけで季節を感じさせる言葉があるかたずねたら、自身満々に「あります!春の肉、夏の肉、秋の肉……と返って来て、教室が笑いに包まれたことがありました。」 『俳句のルール』(井上泰至/[ほか]編 笠間書院 2017 14頁) 引用者注※原文では「秋刀魚」に「さんま」とルビ、「自身」原文ママ 『モンゴルを知るための60章』 (金岡秀郎/著 明石書店 2000)内「Ⅱ 牧畜生活と思考・言語

          備忘録(モンゴル) 2018/5/29

          覚書(蛸壺) 2018/5/15

          わが足のああ堪えがたき美味われは蛸                              金原まさ子 蛸壺やはかなき夢を夏の月                              芭蕉 「タコ穴の個人所有にたいして共有化を主張する意見が長く対立してきたことも、日本における資源利用の公と私のあり方を端的に示している。それはタコ穴の私的な所有にたいする非所有者の側からの反発である。タコ穴の利用では、先述した飛鳥のイワノリ漁のように、一定期間共同で採集し、その後は自

          覚書(蛸壺) 2018/5/15

          覚書(公共性と私性)2018/5/15

          「まずはホルクハイマーらの反ユダヤ主義論から振り返っておこう.彼らの議論というのは要するに,異他なる存在者の排除がいかなる心的機制にもとづいて作働するのかを,フロイトに依拠しつつ説明しようとするものだった.『啓蒙の弁証法』によれば,文明史の行程で人間主体の内なるミメーシス的な衝動は抑圧されざるをえない.そしてこの抑圧された衝動が「不気味なもの」として回帰するとき,主体はそれをみずからの存立を根底から脅かすものとして忌避し排除することになる,というわけである.ただし,このように

          覚書(公共性と私性)2018/5/15

          覚書(桜桃忌)更新日:2018/5/15

          ●読了 『NHKカルチャーラジオ 文学の世界 俳句の変革者たち』正岡子規から俳句甲子園まで(青木亮人/著 NHK出版 2017 133~135頁) 『東大合格生のノートはかならず美しい 』(太田あや/著 文藝春秋 2008) 『カウンセラーのためのパフォーマンス学』(佐藤綾子/編著 金子書房 2015) 『俳人はぎ女』(福田俳句同好会/編著 桂書房 2005) 「現代の文学史研究家が、文学と四つに組む力に欠けてゐるために、文学そのものゝ研究を二の次にして、探偵的興

          覚書(桜桃忌)更新日:2018/5/15

          覚書(日系収容所)更新日:2018/5/15

          ●読了 『アメリカ強制収容所における日系人の図書館』(アンドリュー・ウェルトハイマー/著 川崎良孝・久野和子/訳 京都図書館情報学研究会 2015) 「本稿は、収容所で発行された俳句集全てを網羅するものではない。資料的には、強制収容所内の 俳句吟社の動向と内容を俯瞰するには限界がある。個人句集は除かれている。また、個々の句集の個々 の作品や作家について詳しく紹介したものでもない。しかし、WRA管轄の収容所の俳句集の発行の 有無の確認、活動記録の追跡、さらに俳人の本名と経歴

          覚書(日系収容所)更新日:2018/5/15

          道しるべのための備忘録 2018/5/14

          夜半楽「澱河歌」(三首) 蕪村 「君は水上の梅のごとし花水に 浮(うかび)て去(さる)こと急(すみや)ヵ也 妾(せふ)は江頭の柳のごとし影水に 沈(しづみ)てしたがふことあたはず」 『天明俳諧集』新日本古典文学大系73巻(山下一海/[ほか]校注 大塚信一/発行 岩波書店 1998) 「父性による切断は、ものごとを分離し、区別する。天と地、善と悪、強と弱、などの分類が行われ、神との契約を守る「選ばれた民」が神に救われるのである。従って、人々は神に救われるためには、選

          道しるべのための備忘録 2018/5/14

          道しるべのための備忘録 2018/5/7

          「震災を機に、人々の「情報」に対する見方・考え方は変わったと言われている。しかし元来「情報」は、明治時代の初めに、敵の〝情状の知らせ、ないしは様子″を意味する軍事用語として誕生しており、戦場での生死に関わるもののことを指していた。現代に生きる私たちも、「情報」が自分たちの命に関わるものなのだという本質に、やっと気がついたというべきなのだろう。」『「過情報」の整理学』(上野佳恵/著 中央公論新社 2012 190p) 「どこにでもあるけど、一瞬一瞬であっという間に消え去ってい

          道しるべのための備忘録 2018/5/7

          俳句を読むことについて

           「俳句って、どんなふうに読みますか?」と質問されることがある。これは私も気になる。みんなどうやって読んでるのかな。  私は読む方から俳句に入ってきたため、正直俳句ならではの読み方にいまいち自信がない。韻文と散文は違う、一言一句おろそかにするな、俳句には俳句の読み方がある、……etc 前衛派だの伝統派だの、うわ~後で調べとかなくちゃ、と思いながら、でも、私は俳句を好きなようにも読みたいのだ。というか私は俳句を読むために俳句をつくっている。つくるよりも読む方が断然好きだ。本当

          俳句を読むことについて

          番外 固有名詞と忌日の季語と桃鉄のノスタルジー

           結局俳句のよしあしとうまいへたの区別ってあんまりうまくいかないし、そもそもその区別を切り分けようとすることに近ごろ意味を見いだせなくなってきている。俳句甲子園、各地方の予選大会では、地名などの固有名詞を詠み込む句が散見され、私はおおっと思った。  というのは、地名を詠んだとき、そのイメージを感じ取れるひとがごく限られてしまうではないか。かなりリスキー。全国でも地名を詠み込む句はあるのかな。地方大会ならではなのかな。これは気になる。なんとなくだけど、普遍性を獲得してない、と

          番外 固有名詞と忌日の季語と桃鉄のノスタルジー