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一人多重録音・今昔物語(演奏スキル編)

一人多重録音とは、その名のとおり、本来はバンド編成で演奏する楽曲を、一人で各パートを時間差で複数回演奏~録音することにより、あたかもバンドで演奏しているような録音作品を製作することです。

そのためには、同じ時間帯を時間差で複数回録音できる機器が必要です。
その機器こそが、かつては「MTR」、現在は「DAW」と変遷してきているワケです。

では、その機器があれば、誰でも一人多重録音ができるのか?
残念ながら、そんな都合のいいハナシはありません。

一人多重録音をするためには、たとえば、ボーカル、ギター、ベース、ドラムという編成の楽曲を製作しようと思ったら、3つの楽器の演奏スキルを修得する必要があります。(もちろん歌唱スキルも必要)
その他のパートが増えれば、さらに修得すべき演奏スキルが増えていく、という構図です。

ギターひとつだけでも演奏スキルの習得は困難であるのに、そんなに多くの楽器の演奏技術が習得できるのか・・・

はい、できません。
なので、次のような発想に行きつきます。

自分の好きな音楽ジャンル、たとえば「ブルース」とか、に特化した、各楽器の演奏スキルを勉強しようというもの。

ブルース定番のギターフレーズ、ブルース特有のベースライン、ブルースにありがちなリズムパターン。
このような練習であれば、何とか一人でもそれぞれの楽器のある程度の演奏スキルを身に付けることができます。

それでも、物理的な問題、たとえば、ドラムを録音するためには防音設備の整った環境が必須であり、それ以前にドラム練習のため、いちいちスタジオをレンタルしていたら財政的にも苦しい。
同じ問題は、管楽器もしかりです。

オイラが20代前半の頃は、一人多重録音のための最低限の機器(4トラックMTR)は入手したものの、ろくにフォークギターも弾けない状態で、果たして自分はいつになったら、複数の楽器の演奏技術を習得することができるだろうか、と遠い目をしていました。

そんな状況に変化が訪れたのが1983年、ヤマハ「DX7」に代表されるMIDI機器の登場でした。
中でも革命的だったのが「MIDIシーケンサー」
これは、シーケンサーに演奏情報を入力すれば、その情報に基づいてMIDI機器が自動演奏されるという機能!

つまり、ドラム、ベース、キーボード等の演奏方法を「頭で理解」していれば、必ずしも「実際の奏法技術」を修得していなくても、MIDIシステムで代用できることになったワケだっ!
(さすがにギターだけは、MIDI機器での代用は困難でしたが)

そんなこんなで、1980~90年代のオイラは、MIDIシステムで作り上げた自動演奏オケをMTRの1~2トラックに録音し、残ったトラックに手弾きのギターやボーカルをオーバーダブしていく、という形式で一人多重録音を行ってきました。

2000年代になると、パソコンの性能が向上してきたことにより、MIDIシーケンサーとMTRを統合したソフトウェア=DAW が登場し、また、初期投資費用が80年代初期の100分の1くらいの価格に下落したこともあり、音楽製作環境は劇的に向上しました。

また、2010年頃からは、ソフト側で「元となる楽器の演奏をシミュレートする機能」まで登場してきたので、音楽製作者にとっては、さらに楽器演奏技術修得の手間が省かれることとなっています。

このように、40年前の1980年代に比べると「一人多重録音」のハードルは、ハードウェア的にも、マンパワー的にも、劇的にハードルが下がったと言えます。

しかし、最近、ベースの練習に励んでいるオイラ的には、楽器演奏を修得する過程で得られる副産物としての音楽スキル、ずばり「編曲ノウハウ」や「音楽理論」について、もっと早くから取り組んでおけばよかったなー、と実感しております。

どんなにハードウェアやソフトウェアが人間をサポートしてくれる時代になっても、やはりマンパワー、「人力」による楽器演奏スキルの向上を目指すことは、大変重要であり、かつ、有意義であると実感する今日この頃です。

なんてな。

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▼参考リンク
BLUES和也のSoundCloud
GarageMihoのYouTubeチャンネル旧ブログ「だからPA屋なんですってば」のアーカイヴ
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