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佐野元春&THE COYOTE BAND「ロッキン・クリスマス 2023」恵比寿The Garden Hall 2023.12.20.

ファンにはお馴染みになったクリスマス・ライヴ。僕自身は普段のツアーとはひと味違う内容を期待しているライヴでもある。これは2013年にオープニングが「Night Life」という体験をして以来、持ち続けている思いだ。その理由は、この曲で幕が開いただけでも最高だったのに、ライヴ終了後、ファンからの " もう一曲!" の声に、元春はひとこと " 負けたよ " 。そして、何とリプリーズで「Night Life」が演奏されるという嬉しいハプニングがあったからだ。I Love The Night Lifeで始まりWe Love The Night Lifeで終わるという感動的、かつ、最高のクリスマス・プレゼントをもらえたことで、強烈に印象に残る夜だったのである。自分だけにとっての、ある曲が持つパワーや意味は間違いなくある。そのことを2013年の「Night Life」から受け取った。音楽からでしか味わえない感動を知っていても、なかなかそれを体験することはできないが、それがあの夜はあった。

そんな体験をしているので、残念ながら…という枕詞がつくことはないけれど、それでも僕が足を運んだロッキン・クリスマスから2013年以上の感動を与えられたことはない。毎回 " あの感動をもういちど " はよくないことと理解している。でも、「Night Life」と同じくエヴァーグリーンな名曲を多く持つ佐野元春なので、僕は期待してしまうのである。

立教学院150周年ライヴ後だからだろう

ライヴは「私の人生」という意外な曲で始まったので『今、何処TOUR 2023』とはまったく異なるメニューを期待させた。実際、第一部は『COYOTE』『ZOOEY』『BLOOD MOON』『MANIJU』の曲が演奏されたので、その通りではあったのだが、『今、何処TOUR 2023』以前のメニューに戻ってしまったとも言えた。その意味で特別感はなかったが、注目したのは『MANIJU』から演奏された「天空バイク」だ。個人的に『MANIJU』を気に入っている僕には、このアルバム収録曲についている色が『ZOOEY』『BLOOD MOON』とはまったく異なって見えているし、『MANIJU』以前と以後で作品が全く変わっているようにさえ感じている。『MANIJU』の音はそれほどまでに新しかった。実際、「君が気高い孤独なら」「境界線」「バイ・ザ・シー」と続いた後に演奏された「天空バイク」は浮いていた。ステージ上は同じメンバーなのに音の印象がまったく異なる。曲が持つ色あいが全く違うので楽曲のクオリティが桁違いに聴こえるのだ。この曲に続いたのが『ZOOEY』からの「世界は慈悲を待っている」だったので、余計にそう感じてしまった。

「優しい闇」「世界は慈悲を待っている」「ラ・ヴィータ・エ・ベラ」。今の元春ライヴには欠かせない曲であるが、ある時期からこの3曲が演奏されるたびに冷めていく僕がいる。セット・リストをコヨーテ・バンド以降の曲で固めるのはいい。いいけれど、同じ曲ばかり演奏されるのはどうか。しかもこの3曲はテンポも雰囲気も似ているのである。これなら、今のコヨーテ達で元春クラシックスを演奏した方がバラエティに富むし、今のバンドの解釈で聴くことができるので、僕は楽しめる。もちろん『ZOOEY』と『BLOOD MOON』には他にいい曲がたくさんあるから、それをチョイスしてもよい。何よりも『MANIJU』以降の曲をたくさん演奏して欲しい。まぁ、こうしたネガティヴな想いを持つのも、おそらく今の元春とバンドが充実しているからこそ…だろう。今や元春の思うがままに全レパートリーを演奏できるんじゃないかと思えるコヨーテ・バンドは、間違いなくキャリア史上最強のバンドだと思う。現在も素晴らしいが、あとはギタリストがふたりいるのだから、いわゆるローリング・ストーンズ的ギター・バンド編成が存分に活きるようなアレンジがライヴで施されるようになれば最高なのだが。

みんなの願いかなう日まで

今年もいろんなことがあってここに集まったファンに " 君がいれば何もいらない みんなの願いがかなう日まで メリークリスマス " と歌ってくれた元春。ありがとう。

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