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よるは散歩

数週間前まで、夜遅くまで蝉がないていたけれど、ここ最近は秋の虫の声に入れ替わっている。空気も少しひんやりしている。

夕食と入浴を済ませ、寝る準備がだいたい終わってから、恋人と散歩に出掛けるのが好きな時間だ。散歩の途中で、ふらっとコンビニやスーパーマーケットに寄り、購入したものを片手に、歩いたりベンチに座ったり。

前まで住んでいた福岡の家の近くには、那珂川という河川が流れていた。行政によって親水空間としての通路やベンチが整えられており、夜でもランニングや犬の散歩などを目的に、住んでいる人たちが自然と集まる河川だった。私と彼も、よく那珂川の近くまで散歩に行った。昼間には日光で水が透きとおり、泳ぐ魚や鴨たちの足捌き、巻貝やサワガニなどの小さな生き物たちの様子がよく見える。夜にはそれが見えないので、水面を跳ねる魚の影や、サワガニが草をかき分ける音が少し不気味で、かえってワクワクした。

春にはカフェオレ、夏はアイス、秋はお団子、冬には肉まんやあんまんを買っては片手に持って歩いた。とにかく楽な格好で、サンダルで、髪も半乾きのままで。

休み前の夜は、休みの日よりも気持ちがウキウキしている。下手したら寝られないので、とにかく練り歩く。飲食店やコンビニ、スーパー以外はほとんど閉まっていて、お昼に来たらどんなだろうと想像する。ちょっと歩き疲れたくらいに引き返して、そしたらちょうどぐっすり眠ることができる。

最近は運動するタイミングも少なく、だけど考えることだけは多く、眠りにつくのに時間がかかってしまう。私はこれからどうやって生きていこう、などと壮大なことは、夜中に考えるものではないと分かってはいるのだが、ついそれで目が冴える。もう20代を折り返している、今の年齢が私を夜中の逡巡に連れ出すのかもしれない。焦りは禁物なのに。

とにかく歩かなくては。ぐっすり眠り、季節を感じるために。


2021.9.14 小鹿かの子




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