水野与志朗/ブランドコンサルタント、ビジネス書の著者

有名食品メーカーや海外企業のブランドマネージャーなどを歴任。それまでの経験をまとめた書…

水野与志朗/ブランドコンサルタント、ビジネス書の著者

有名食品メーカーや海外企業のブランドマネージャーなどを歴任。それまでの経験をまとめた書籍「ブランド・マネージャー」の出版をきっかけに2005年に独立。200以上のブランドをコンサルティング。 https://www.bmwin.co.jp/index.html

マガジン

最近の記事

競争の激しい市場で新ブランドを売る

今回は「ブランドを売る」についてあらためて考えてみましょう。簡単に言うと、ブランドを売るとは「いままでにない新しさを認知させる」ことと説明できるかもしれません。先週の日経新聞で連載されていた「ユニクロ秘録」はとても面白い記事でした。そのなかにNYの繁華街ソーホーでユニクロが旗艦店を出した時の苦労話が書かれています。 『足元から頭の上まで1列を同じ色にそろえて服を積み上げる「ボリューム陳列」は、ユニクロが日本で始めた店舗デザインの基本だ。特に壁際は、タペストリーをイメージして

    • 柔軟な新規事業戦略は「流れ」を掴む

      新規事業の立ち上げを行っている部署でありながら「十分な成果が出ていない」と考えているビジネスパーソンは意外と多いのではないかと思います。ある調査によると「起業家が思い描いた当初の計画、新規事業の93%は不成功に終わる」というデータもありますから、100案件中1〜2件の成功だとしても仕方ないかもしれない。ただこれでは満足できないのが現実です。4月になって増えてきている問い合わせのいくつかにはこのような新規事業の相談が含まれています。なかには既に立派な製品ブランドを持っている企業

      • リーダーブランド失敗の舞台裏

        リーダーブランドが市場地位を失う理由には、例えば市場の変化への適応のまずさがあります。顧客のニーズの変化、新たなトレンドや技術革新、競合他社の動きなどに対応できなかった結果、リーダーの地位を失う。これは頑張ったにもかかわらず市場の変化に適応できなかったことが原因のように見えますが、実際には「やってみたが対応がまずかった」が本当の理由ではないかと思います。なかには意図的に「対応しないという決断を下した」などもあります。そんな事例を見てみましょう。 ネットフリックスの台頭とブロ

        • 日本企業の社長の夢

          今週から新年度を迎える会社も多いと思います。新年度に際して、先日、日経新聞で「社長、夢は何ですか?」という記事を読み「とてもいいなぁ」と思いました。まるで入社式で新人に語るようでした。「夢は成長の原動力だ。社会を変え、世界市場を席巻し、常識に挑む。日本企業の社長の夢からは覚悟が透ける。停滞の30年で蓄えた人材や資金、技術を武器に世界で再び勝負する。(日経新聞4月1日)」。数えてみると117人の社長が登場しておられました。時間をかけて、すべてじっくり読みました。感じるところも大

        マガジン

        • ブランド&マーケティングの教科書コラム
          89本
        • 水野与志朗の徒然コラム
          51本
        • 動画講座
          2本

        記事

          固定観念が出来上がっている事業ブランドの変革

          ロングセラー・ブランドの悩みと言えばこれだと思います。かれこれ30年も続いているブランドをあらたに担当すると、いろいろな綻び(ほころび)や経年劣化が見られるものです。そしてそれに着手しようとすると、驚くことに社内の保守的な圧力が想像以上に強いことを思い知らされます。たいていは「変えることへの恐れ」を「これを好む消費者がいるから」という文脈に変換して語られます。今回はそのような「固定観念が出来上がっている事業ブランドをどのように変革するか」の話をしましょう。まず言えるのは変革し

          固定観念が出来上がっている事業ブランドの変革

          イノベーションや新規事業など上手く行くかどうかわからない手探りの課題

          一般的にイノベーションは「プロダクト」「プロセス」「市場」「サプライチェーン」「組織」の5つに分類されます。特に日本で多いのは「プロダクト・イノベーション」ですね。先日、支援先企業のプロマネの方が悩んでいたテーマでもあるので、今日はそんな話をしましょう。ちなみに最近では「組織イノベーション」も台頭してきています。僕たちのような外部コンサルタントを雇うのもその一環です。外部コンサルタントは組織に新しい視点や専門性をもたらし組織の成長や効率性を向上させる役割を果たします。 さて

          イノベーションや新規事業など上手く行くかどうかわからない手探りの課題

          ゲームを再定義するアプローチ

          「ふとるがかち」という言葉をご存じでしょうか。これは「不取るが価値」と書きます。顧客には「不」という字がつくものがたくさんあります。不安、不満、不便、不都合、不経済。これらの「不」を取り除いてあげると「価値が生まれますよ」つまり「お金がもらえますよ」という意味です。僕はインサイトのコツは「不」を見つけることだと考えています。目の前の顧客をじっと見て「あなたはこれに困っている(不)でしょう」と見抜くことです。これはビジネスの普遍的なアプローチだと言えますが、長くその仕事をしてい

          人材育成について

          人的資本という言葉がいわれて久しいように感じます。今回は「人材育成」について話しましょう。企業の大きな課題ですね。この前提には「持続的な成長と成功には人材育成が欠かせない」という信念があるように思います。実は人的資本という言葉が登場した頃、「なにをいまさら」「そんなの当たり前じゃないか」と思ったものです。その理由はこの信念が僕の中にもあって、あまり新しい概念に聞こえなかったからだと思います。しかしあらためて人材育成を見直す機会にはなりました。もちろん人的資本の視点で経営を見る

          解決不能な課題に取り組む事業責任者

          「事業の立て直し」という言葉を聞いてワクワクする事業責任者は一定数いるように思います。僕自身もマーケ部長だった頃からそうでしたし、いまでも心躍る案件はこれです。何がこんなにワクワクするのか。その根幹にあるのは「純粋な挑戦」でしょう。事業責任者の重要な資質だと思います。彼らが定義する成功とは「不可能と思われることを克服すること」「解決不能と思われてきた課題を解決すること」です。時には敢えてそのような役をかってでる人もいる。どうも成功体験を積んだ人ほどそのような傾向があるのではな

          あらためてコロナ後のいま

          もはや「コロナ」も一昔前の感がありますね。先日、「コロナ禍前後における価値観の意識調査結果」というプレスリリースを拝見しました。次のように報告されています。『コロナ禍後はコロナ禍前より、食品や衣服などを購入する際に「話題・トレンドのもの」「華やかなもの」よりも「暮らしに欠かせないもの」「長く使えるもの」を重要視する傾向が増えた。その理由として、「一過性ではなく、本質的な価値を求めるから」が最も多い(味の素株式会社調べ。PR TIMES、1月30日)』。この調査結果はいまの生活

          ブランド投資の対象になるもの

          魅力的価値という言葉をご存じでしょうか?拙著「The Concept/一生使えるコンセプトの教科書(水野与志朗著/KDP出版)」で紹介したものです。ブランド投資をするコンセプトは魅力的価値を備えてなければなりません。そこらへんにあるようなアイデアやコンセプトに投資しても、そもそもブランドになどなりません。魅力的価値を簡単に説明すると「これまでも不便ではなかったが、これが出てきて生活が変わった。いままでのものが古く見える。こんな便利なものを知ってしまったら、もう昔には戻れない」

          インサイト/顧客の価値観

          今回はインサイトの話を少しばかりしましょう。ブランドが成功し繁栄しつづけるには製品ありきの発想や、言いたいことを一方的に言う売り手主体のコミュニケーションを戒める必要があります。そして顧客の価値観を大切にしたマーケティングを行うことが重要です。なにをいまさらと思うかもしれませんが、出来ていない会社は多いと思います。売り手主体のコミュニケーションは個人的な状況を考えるとわかりやすい。ひとは自分の価値観に基づいて相手に話しかけるものですが、相手の価値観がこちらと違っていれば、それ

          ブランドの持ち味・らしさ

          今回はブランドについてあらためて述べましょう。ブランドは城壁に似ていると思います。競合と明確に差別化し、守りを固め、かつ城内にいる顧客(既存顧客)に安心して使い続けてもらうものです。強いブランドとは厚みのある高い壁に喩えられるでしょう。イメージされるのは顧客のマインドに独自性や特徴が際立っている状態。これが堂々とした、文字通り「際立った城壁」であればまずは安泰です。逆にもし城壁がなければ、またはちっぽけな壁なら、易々と競合に攻め込まれ、顧客を奪われる。どのような事業であっても

          事業計画、マーケティング計画のコツ

          いまの時期、今年の事業計画やマーケティング計画を考えるひとも多いと思います。会社によって置かれている状況は様々でしょうが、この段階での共通の課題は「筋のよい戦略を見つけること」です。そこでマーケティングの計画では実際にどのようなことに注意したらよいか、そのコツを順番に紹介しましょう。これはどんな事業にも当てはまります。B2BもB2Cも同じです。では行きましょう。まずは市場を俯瞰するステージです。最初に思い浮かぶのは「物事をギリギリまで単純化する」です。データでも情報でも「目に

          多幸感とは何か

          今年最後のnoteです。 先日、社内の忘年会(望年会)をしました。近所に出来たビストロでご馳走を食べワインを飲み、楽しく話しました。今年はとても忙しかったですが、素晴らしい年でした。来年も素晴らしい年になります。特に12月は毎日のように新しい相談が持ち込まれました。おそらく僕たちのようなブランド戦略などというニッチな分野を専門にしているコンサルティング会社としては、かなり恵まれていると思います。支援先企業のみなさまには感謝してもしきれず、いつも「ありがとう」と思いながら眠りに

          攻勢終末点を考える

          NHKオンデマンドで「英雄たちの選択」をよく見ます。磯田道史先生と杉浦友紀アナが司会をしている歴史番組です。先日「幕末最強!庄内藩の戊辰戦争〜徳川四天王・酒井忠次の遺伝子〜」を見ました。「幕末の戊辰戦争。奥羽越列藩同盟の中で唯一、新政府軍に勝ち続けた庄内藩。立役者となった二番大隊長・酒井玄蕃は徳川四天王・酒井忠次の末裔。その強さの秘密と選択とは?(NHK番組ウェブサイトより)」。庄内藩は酒井玄蕃を指揮官に、新政府軍に連戦連勝を続けます。しかし他藩は次々降伏し、残るは庄内藩だけ