花灯り



 

    どこまでも優しい君が
 もうこれ以上傷付かずに済みますように
 願わくば 君が与えてきた以上の優しさで包み込めますように
 無力なままで 烏滸がましくも思う心で
 花灯りの中 浮かんだ輪郭
 強く儚く凛とした横顔を見つめていた
 
    心の中 流れているのは懐かしき
 いつしか奏でた琴の音
 想う度 静寂に広がる
 柔らかに響む 玲瓏たる音色
 
    繰り返し 手渡してくれた優しさ
 見返り求めぬその心に
 幾度となく救われていた
 
    闇夜に浮かぶ白き影
 幻想的な景色の中で
 薄く香るは現実を突きつける痛みと紅い血


 
 誰にでも優しい君が
 語れなかった心を殺さず済みますように
 願わくば 君が守ってきた濁りなき信念を誇れますように
 無力なままで 目の前のものも守れぬこの手を
 花灯りの中 揺れていた瞳
 震えながら戦う心に向け伸ばし続けた
 
    瞼の裏 浮かんでくるのはたいそう尊い
 いつしか紡いでくれた言の葉
 想う度 温もり溢れる
 痛みを少し伴った 立ち続ける為の支え
 
    繰り返す 迷いや間違いだらけの日々
 声にできない心の叫びに
 気付けるようにどうかせめて
 
    闇夜に灯る淡き花
 歩みをとめた景色の中で
 降り注ぐのは悲しみを呑み澄んだ涙と真心



 
 どうしても優しい君の
 選んできた苦しみを否定などしたくない
 願わくば 君には君自身にももっと優しくあってほしかった
 無力なままで 救われてばかりだった日々を想う
 花灯りの中 響んだ気がした
 懐かしき声と笑顔 刹那の花が散ってゆく




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