桜紅葉



 
    流れゆく時 巡る季節に
 二度と訪れぬ今を想う
 数多の哀しみ 見てきた両目は
 綺麗だけでは表しきれない 四季の移ろいも知っている
 
    消えない痛みは抱えたままで 現実 変えられぬままで
 生き方は自分で選び続けてきた その中で出逢ってきたもの
 今 目の前に広がる景色
 秋隣り 粧い始めた山包み込む 夕焼けの空に混ざり合う
 確かに心動いた瞬間
 
    仄かに染まる 幾重にも重なる彩葉
 夢見の花の季節はとうに過ぎ去れど
 残された枝葉さえも凛として
 その先に浮かんだ景色
 春の幻想 気高き名残は青朽葉
 重なる背中 そこにあったのは 守り抜いてほしいと願った
 傷付きながら戦い続けた証でした



 
    過ぎ去りし時 巡る季節が
 諸行無常を教えてくれる
 遠き日を想い 澄ました両耳
 安らぎと痛みを同時に運ぶ 懐かしき声がまだ消えず
 
    貰ったものは優しいままで 後悔 色褪せぬままで
 息の仕方は教わることなく 唯 正しくあろうと必死だった
 今 耳に流れ込んでくる旋律
 秋となり 彩られゆく草木に眩く 降り注ぐ夕日の茜色
 言葉にできない想いがここに
 
    確かに残る あの日紡いでくれたいろは
 共に見た花筏浮かぶ小川のほとり
 その声が灯してくれた火で照らす
 切なく心震わす景色
 春の夜の夢 今は京緋や柑子の色に
 重なる横顔 胸の痛みは 守り抜いていこうと誓った
 苦しみながら生き続ける証でした
 
 揺らめく波紋 水鏡に観る木の葉の色は……
 淡い想い出繋げる景色
 春の風に舞う 白き花びら挟んだ記憶
 重なる足音 残した足跡 大切なもの見失わぬよう
 哀しみと共に歩き続けた証でした

 



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