赤いカーディガン
先日、とても懐かしい友人とオンラインで会った。
10年以上、いやもっと長い間合っていなかったかもしれない。
その間メールニュースで自分の活動を送ってくれていた。
彼女の紡ぎ出す表現はどのようなものであれ、いつも自然な慈愛に満ちている。
メールの最後に、いつも”Sunny Love”と記されたその一言で、
ほっとすることが度々あった。
だから、時々サイト見たりして思い出していた。
画面に映った彼女は、変わりなく、柔らかな大阪ことばを紡ぐ。
本当に久しぶりの対面だったので、最初はワーワーと手を画面に振ったり、私は子供っぽさ全開ではしゃいでいた。
が、
よく見ると、彼女がきている赤いカーディガンに見覚えがある。
それは、私がかつて着ていたものだった。
記憶を辿れば、1991年に展覧会で訪れたサンタモニカの古着雑貨店で、
買ったはずだ。
縮毛の生地でフェルトっぽく、その上に赤い糸で刺繍が施されている。
決して高価なものではないけれども、赤の色がとても鮮やかで気に入っていた。洗うと縮んで小さくなり、手放したのだと思う。
彼女と最後に会った10数年前に、私は引っ越しをしている。
タンスが小さくなったので、若い頃の衣類を断捨離した。
その時三名の女性アーティストに手伝ってもらったのだが
そのうちの一人が彼女だった。
彼女は私から直接渡された覚えが無いと、言う。
他の二名の友人たちから、巡ったのかもしれない。
日本の私の手元に来たのちに、既に34年経っている。
彼女が着ている赤いカーディガン
「とてもあったかい〜」と言って、彼女は
ほつれたところをチクチクと丁寧にかがり直した場所を見せてくれた。
気に入ってもらって大切にされている衣服は彼女の笑顔と寄り添っているように見えた。
なんて幸せな赤いカーディガンなんだろう。
時空を超えて幸せな三月の始まり。
©️松井智惠 2024年3月2日 筆
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