見出し画像

父と母と娘の攻防(父の日だから映画をプレゼント)

娘と私の母と女2人旅に行ったことを根に持って拗ねている父のために
父の日ということで娘と訪問しました。

顔を出しただけですが、何か持っていくべきだったのか。
いまだに悩む私。ばかみたい。
いつもお酒とかお酒とかお酒を持っていきますが、
あんまりお酒も飲んでほしくはないので、なんとなく気が進まず
(ちなみに娘はじいじの為にお土産にお酒を買ってきています)
結局手ぶらになってしまいました。
他に喜ぶ手土産が思いつかなんだ。

お休みの日には朝から酒を飲んでダラダラしている父と、奴隷のように立ち働く母。
お昼ご飯を一緒に食べましたが、ほどなく父はご就寝。

そうなったら、私たちの時間です。
私の実家は動画配信の環境が豊かに整っているので、観たいやつをみましょう!
うちでは契約していないサービスもたくさんあるのです。

だがしかし、私が今思いつく映画はひとつしかありません。
「ホテル・ムンバイ」です。
これはうちでも見れるし先日観賞したばかりですが
あわよくば私はこれを両親に見せようと画策していたのです。

なぜならば!

いい映画だから。というのがひとつ。
主人公がイケメンで母好みだから、というのがひとつ。
少なからずショッキングな内容だから。というのがひとつ。

なぜショッキングな映画を高齢の両親に見せるのかというと
見せられたからです。
はい。そうです。
仕返しお返しです。

うちの父は雪国生まれの山男で、「八甲田山」が大好きなのです。
これをすぐに人に見せたがり、所有するDVDをかけては自分は寝てしまうという悪行を繰り返しているのです。

私は映画好きですから、かかってりゃあ見ますよ。そりゃあ。
まあ、わかりますよ。父が好きなのは。
映画として、良くできた映画であるとも思います。

でもあるとき、父は「いい映画だからこれを見よう」と
小さな息子に八甲田山を見せていたのです。
八甲田山は視聴制限はないと思いますけれど
ちいさな子供にはショッキングなシーンがあり、私が気づいた時には
息子は画面を見て釘付け、固まっていました。

壮絶で鬼気迫る演技は大人が今みても迫力があります。
父はそれを見せたいんだろうと思うのです。
当時子供たちの間でも八甲田山遊びが流行ったと聞きます。
でもそれはストーリーあってこそ。
まだ、軍の厳しい上下関係や、人の心の機微だとかは子供には理解が難しいのです。幼児にいったい何を考えているの?
と、ものすごく腹が立った記憶があるのです。

他にも父はことあるごとに、孫たちに死の恐怖を教えるんだとか言って・・・
思い出すと血管が破裂しそうなのでこの辺にします。
(あぶないあぶない)

まあでも、両親はすぐ寝てしまうので、あんまり期待してはいけません。
見ようよ、と言って一緒に見るような人たちでもありません。
なので寝始めた父の横で視聴開始です。
「これがおすすめだからみよう」と流し始めると、最初は見ていましたが
気づくとやっぱり母も寝ていました。

そうだろうそうだろう。

娘(私)が一緒に見ようよ!とか両親に見せたい、と思って、それを伝えても
まったく意に介さず寝てしまう両親。
だって、つまらないんだもの。という声が聞こえてきそう。ぺっ。

なんなんだ。
余計なことを色々と思い出しちゃいます。
こどもたちの運動会に来て、酒を飲んで二人して(母は飲んでないけど)校庭の隅にシートを敷いて、ぐっすり寝ているとかなんなの?
だったら来なければいいのに。

特に父は自分が主人公な人生なので、孫の活躍とか興味ないんです。
孫が野球で甲子園にでも出れば、「俺の孫が」と吹聴するでしょうけれど。

何も期待しちゃいけないのはわかりすぎるほどわかっているはずなので
ここは冷静に、心を乱されるな!
まあ、いいんです。自分が見るから。

ちなみにうちの母は、「面白い映画教えてよ」とかよく言ってくるんです。
それでいくつかピックアップして教えても、絶対見ない。
見る見る!ありがとう!とか言っちゃって。
決め打ちこの一本を貸しても見ない。
これ、ぜったい母が気に入ると思うから見て!と渡しても見ない。
あれが欲しいから、買って!と言われて買っても使わない。
結局私が大掃除にいって、未開封のそれを捨てるはめに。

母の時間は父軸で回っているので仕方ありません。
でも母は暇な(父がいない)時間YouTubeや韓流ドラマなんかを
せっせと見ているんですけどね。

その時には私が言ったことなんて思い出しもしないんでしょう。

まあ私もこんなところでこんな風にグチグチと両親ネタを書いて公開しているのですから、おあいこですね。

一番最初の大事なシーン、テロが始まる瞬間を、うとうとと見逃す母。
父もぐっすり寝ています。


ほどなくして母ははっと目を覚まし、私の視線を気まずげにかわすと、一応見ようと頑張ります。
まあ本当に想定内なので、自分ひとりで鑑賞します。
そのうち引き込まれたのか一応見始める母。けっこうショッキングですからね。目も覚めるってもんです。
そうこうするうちに、父も起きだしました。
すると母にあれを持ってこいだとか指図しだす父。
やれやれ。

一旦休憩すると、のど自慢を見たがった父ですが、私がすかさずホテルムンバイの続きをかけちゃったよーだ。
もうホテルでの戦いは最高潮に緊迫しています。
めずらしく起きて見始めた父。

多少は衝撃だったかもしれませんが、まだまだ。
もうちょっとちゃんと見て欲しかったな。
私が感じたショックは感じないのかもしれないけれど。

でも私は父譲りでしつこいのです。
また最初からかけてやりますよ。
何度でも。

しつこくしつこく、両親が見逃したところを全部見るまで。

我ながら心の闇を感じる。

さて、八甲田山もホテルムンバイも実話を元に製作された映画です。
映画は主人公が設定され、エピソードや見どころを視聴者にわかりやすく
訴えかけるべく、うまーく作られているだろうと思います。
全然違ったり、誇張されたり、ちょっとしたニュアンスや解釈が違うところがあるだろうなと思います。
ヒーローもいれば悪役もいたりします。
映画は人間のいい部分も悪い部分も描かれる。
それが実在の人物がモデルだったりするわけで、本人や亡くなった人の関係者やご遺族はたまた子孫がいたりするわけで、良くも悪くも感慨深い、心中複雑だろうなと思います。

私などは純粋に映画を楽しんでいるだけですが、いろんな人の思いが、いろんなところに詰まっていて、ホテルムンバイはラストの再建されたホテルの姿にいろんな感情が押し寄せて、こみ上げるものがありました。

良く見てないけど、ラストで母も涙していました。一応人の子の親だしね。
でも私が見て欲しかったのはそこじゃありません。

あら、よくよく見たらホテルムンバイはR15だったんですね!
どおりでけっこうショッキングでした。
ちなみに娘はその間イヤホンとスマホで一人の世界に没入していました。
でもまぁ、両親はR15×5くらいの老練なわけですから、私はこれからも視聴年齢制限に臆することなく、両親におすすめする映画を探っていきたいと思います。

闇が深い。(映画好きと言って)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?