笑い上戸と泣き上戸と

今朝、ふと、職場に向かう電車のなかで、亡くなった祖母のことを思い出した。

祖母はお酒が大好きだった。特に彼女はウイスキーに心底惚れていて、業務用サントリー角瓶5Lを家に常備していたのを鮮明に覚えている。

祖母は大きなジョッキに、大きな氷をカラン...カラン...と入れていく。ジョッキが綺麗な氷で埋まっていくのを見ているのが好きだった。
そこにウイスキーをこぽこぽと流し入れる。


"ああ〜、、、おいし。"


グビっと飲んだあと、いつもこぼしていた一言だった。

祖母はお酒を飲むと、たくさん笑う。幼い僕が箸を落としただけでケラケラ笑うくらいの笑い上戸さんだった。
ニコニコと笑う祖母の赤い頬を見る度に、僕のなかのお酒への憧れが強くなった。

お酒っておいしいんだ。飲んだら幸せな気持ちになれるんだ。

そう感じるくらい、酔っ払った祖母はとても可愛らしかった。魅力的だった。明るくて、楽しそうで、あったかくて、太陽みたいだった。

"おじいちゃんに怒られるからさ...。"

祖母は、祖父が寝たあとにいつもこっそりとお酒を飲みはじめていた。
あんなに美味しそうに飲んでいたのは、背徳感もあってか...!?なんて気づいて笑ったのは、僕が大人になってからだった。
彼女にもう二度と、会えなくなってからだった。

憂鬱な気分のなかで、ふと祖母のことを思い出したのは、僕なりに救いが欲しかったからだろうか。
暗い日々を照らしてくれる存在が欲しかったのだろうかと、自分に問いかける。


ばば、お酒ってすんごく美味しいね。幸せな気持ちでいっぱいになるね。
あなたみたいに強くはないけれど、それでも今夜もグビグビっと飲んでいます。
あなたみたいに、明るい太陽みたいに、
ケラケラ笑いながら飲みたいけれど、
僕は泣き上戸みたいです。

一緒にお酒、飲みたかったな。

なんて、酔っ払いの独り言です。

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