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心の闇とベートーヴェン

牛田智大さんのコンサートに行ってきました。
あまり行くつもりがなかったので前売り券は買わずにいたのですが当実急遽思い立って出発。
あまり行くつもりがなかったというのは、牛田さんの演奏云々の話ではなく、プログラム内にあったショパンにちょっと食傷気味だったから。

今年、数人のコンサートに行きましたが、やはりショパンを弾く人が多く、
なんだかちょっと「もうショパンいいな」という気分になっていたので
プログラムに魅力を感じず行かないつもりだったのです。

午前中に行こうと決めて、改めてプログラムを見てみたら
ショパンはエチュード全曲ですし(10の方)、ベートーベンのソナタは
大好きな31番。そしてもう1曲は熱情だったので、俄然聞く気満々になりました。
31番は去年だったかな、アンドラーシュ・シフさんが演奏していたのを
聴いて大好きになりました。淡々と弾くその姿、その中に静けさ、絶望、そして希望、感動を聴くことができました。

熱情はなんと言っても3楽章。2楽章の最後の音からつながる感じ
3楽章のテンポ、キレの良さなどなど、プロの方々思う存分弾いてください!と思える一曲でこれも大好きです。

一昨年、同じ会場で牛田さんのコンサートを聴きました。
後半からしか聴けなくて、しかも聴いた後半は記憶がなく
聴けなかった前半のプログラム「ショパンの24の前奏曲」ということは
覚えているのですが・・・。
ただ、コンサート会場の雰囲気が終始にこやかで、というのは
牛田さんがにこやかに演奏していたから、です。
トークもあったんだったかな。
にこやかに演奏する姿、MYヤマハピアノ、ヤマハらしいきらびやかな音・・など覚えています。

さて、今回のコンサート。
まず、ベートーベンの31番。ワケがあってのことだと思いますが
ウナペダル(音量をおさえる時などに使うペダル)を多用していて
音が遠い!いや、遠くに聴かせたいのかもしれないけれど、
「もっと、こう来て!」というところもウナを踏んでいるので遠い・・・。
熱情もウナ踏んでるの??と思うような音。
うーーーん、不完全燃焼・・。と思って後半。
ショパンのエチュードOp.10全曲。
これはさすが✨の演奏でした。よどみないというか。

ショパンのエチュードは練習曲と言えども、その芸術性と必要な技術力が
高すぎて、ふつーの人だったら1曲仕上げるのに「やれやれ・・やっと仕上がったわ」と思って次の曲にとりかかる内に前の曲もう弾けなくなっちゃった!ってなりそうですが(まあそういう人たちと比べるのがダメだけど)
牛田さんは「もう何年も弾き続けてますけど、なにか?」という雰囲気で
さらっと弾いていました。

10-7と10-10がいまいち違いがわからなくて
牛田君がうちの息子だったら「えっともう一回7番お願い!」
「次10番」「え?何が違うんだっけ、7番お願いします」って
何度も弾いてもらうかもしれん。そういう辞書みたいな弾き手が
いるって羨ましい・・・と思ったぐらいよどみがない。
でも、一方で感動がなかったのです・・・残念ながら。

牛田さんのコンサートを聴き終わった感想。
「うーーん、なんかこの雰囲気みたことあるな。ってかしょっちゅう
見てるな。身近でみてる・・・なんだっけ。
あ、わかった。弾かされてる感じ」

これが残念だけれど今回聞いた感想でした。うちの娘のピアノから
よく感じるやつ。「弾けばいいんでしょ」って雰囲気の演奏。
牛田君のイメージは「ピアノが好きで好きでたまらない」。
だから弾いている時はとっても幸せそう。演奏からもそれが伝わるよ!というものだったのに、それが全く感じられなかったのです。
曲への愛。ピアノへの愛。
下手でもピアノ愛が伝わる演奏が好きな私は、上手だけど愛がない演奏は苦手。牛田さんだから、そこまではいかないけれど
「どうしたのさ、悩みがあるならおばちゃんに話してごらん」と言ってあげたい気持ちになりました。

挫折でもしたのかな。コンクールとかで嫌なことあった??(なんか
記憶にあるけど)もうピアノ嫌になっちゃったの?だから茶髪にしてみたとか??などなど、
勝手に心の闇をベートーベンの31番にのせた牛田君を想像してしまいました。

一緒に聞いていた友人と夜は牛田君談義。
弾いてる曲に感動してないね。ピアノに不満ありか?
一度ピアノから離れたらいいんじゃないか。
勝手な聴衆は勝手に言います。

牛田君の心になにがあったのか。
心の闇は(いや、ないのかもしれないけれど)
音楽にのせても昇華できないのね・・・と知りました。

たぶんピアノは弾き続けるのでしょうが
また「ピアノ大好き♥」が伝わる演奏が聴けることを
待っています。


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