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XTCマラソン アルバムランキングと総評


これからお休みの方も、お目覚めの方も、そしてこの記事を偶然目にしてしまったそこのあなたも。

どうも。音楽好き男です。ウィッス。


前回のツェッペリンアルバムランキングの記事が結構反応あって、読んでもらえたみたいで非常に嬉しいですね。初めてのnoteだったのでどんなもんかと思ってたんですけど、好評ですごいホッとしてます。何より石投げられると思てたら逆に投げ銭があって。何より、自分の書いた文章に値がついたっていうのが嬉しかったですね。ありがとうございます。今後も良い文章書いていけたらと思ってます。

ちなみにこちらが前回の記事https://note.com/bokunotetarou/n/n3c8c3e22123c


さて、今回も例の如く僕のTwitterで勝手にやってるアルバムマラソン企画です。XTCというバンドのアルバムディスコグラフィー12枚を全部聴きまして、それに番付をしていこうかなと思てますけども。


まず言っておきたいのが、僕はXTC好きですけど、そんなに詳しいわけではないので、一音楽好きの意見、ぐらいに思って見ていただきたいですね。このへんでちょっとハードルを下げとかんと怖いんでね。

そんで、ランキングの基準は俺の好み一存ですんで、「なんもわかってへんのぉ」とか「適当抜かしてんとちゃうぞワレ」とかやめていただきたいですよ。もうそういうのがひたすら怖い



ひとまずはXTCというバンドについて少し解説を。

1976年から活動するイングランド出身のロックバンド。ギター・ボーカルでフロントマンのアンディ・パートリッジを中心に、ベースのコリン・モールディング、ドラムのテリー・チェンバーズ、初期に在籍していたキーボードのバリー・アンドリューズ、その後任として加入したリード・ギターとキーボードのデイヴ・グレゴリーが活動、作曲はアンディ、コリーの二人が行う。数回のメンバー変更があり、最終的に現在はアンディ一人が残っている状態。XTCとしての新作はもう望めないらしい。
音楽性はエルヴィス・コステロ系のポップなロック。濃縮された絶妙なメロディやユーモアのあるシュールな歌詞に定評があり、80年代に黄金期を迎えるも、その後も多大な影響力がある。スタジオアルバムは全12枚。


というわけで、一応XTCそんなに知らないよ〜って人のために軽くアルバムについて解説を挟みつつ、ああだこうだ文句言ったりベタ褒めしたりしながらランキングの方、見ていこうかなと思います。
順位が気になる方は下の目次を閉じて見てくださいね。

ほな、下からいきます。


12位:The Big Express (7th / 1984)
https://open.spotify.com/album/6NgvwdZguEc8uyAUkyEbhu?si=2CzctvWKTWijlYmWzg7rDw&dl_branch=1

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 XTCの80年代半ばの低迷期の作品。これが上位に上がってくることはあんまりないっていうアルバムですね。それでも、特別駄作っていうほどのもんではなくて、やっぱりXTCのディスコグラフィーの強度を改めて思い知らされます。
 まず、このアルバムの何が不人気なのかというと、曲調が少々小難しいところでしょうね。ポリスっぽいリズムやってみたり、透明感のあるコーラスも試行錯誤してるんですけど、アルバムトータルで聴くときにあんまり活かしきれてなく、そこまで冒険的でないにも関わらず、結局散漫で聴きにくい印象になってしまってます。
 さらにXTCが武器としてきたキャッチーな甘いメロディも今作は特に希薄です。なんなら、ボーカルがやや後ろめに聴こえるし、歌メロを押し出せてないところがこのバンドにとっては不向きな内容だったと思います。決め手となる曲が不在というのもよりこのアルバムの評価を下げてる要因ですね。そこをサウンド面、演奏で補えてるかというと、それもやはり物足りないのでこの順位にしました。この作品発表直後、アンディの精神状態の悪化から、XTCはライブ活動を停止してしまいます。


11位:Nonsuch (10th / 1992)
https://open.spotify.com/album/6WK4H6AhFAt4RhuTzLFJws?si=QxqpMnLZQbmZdWaQLsqJ1Q&dl_branch=1

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 前作、前々作から続くポップ路線の頃の作品です。人気もあるし、確かにこのアルバムの質も高いんですけど、他のアルバムと比べるとやや見劣りする印象でした。他のアルバムと比べてどっち...?と言われて仕方なくこっちを下ろした感じですね。少し言うとしたら、発表92年の作品だとなるとサウンドに少し説得力がないかなって言う感じはしました。
 ただ、全く悪いアルバムでは無いです。何度も言いますけど、XTCのディスコグラフィーが強いだけです。こいつの順位を下げるのにこれ以上の言い訳はありません。


10位:Apple Venus Vol. 1 (11th / 1999)

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 「Nonsuch」の後、アンディとコリンが作りためていた膨大な曲の中からバンド、配給側が厳選した曲を2枚に分けて出す企画で始まった「Apple Venus」2部作の1作目です。これの制作途中でデイヴが脱退します。「Apple Venus」の2枚はサブスク未解禁なので興味のある方は買って聴いてみてくださいね。
 Vol. 1はストリングスとアコースティックが主体のXTCキャリアではかなりの異色作です。神秘的で奥ゆかしい、XTCらしくない牧歌的な作品です。歌メロに関しては芯の部分はXTCらしいひねくれたメロディもあったりします。
 全体的に大人しく、それでいて印象的なフックも少なく、音響派なのかと思いきやポップなカントリー調になったりもするし、ドラムがないので面白いサウンドがない時は散漫で退屈してしまいますね。ただ、その退屈しない部分の魅力はなかなかあるので、もう少しサウンドの焦点を絞って明確なサウンドスケープを提示できたら面白いアルバムにはなったんじゃないかな、と思います。10年代インディーポップの香りもふんわりしてくるような、スケール感のあるブラスセクションやストリングスの段幕、音響系のフォーキーなギター、透明感のあるコーラスとかは何かを彷彿とさせるような要素自体は良い要素ではあるな、という感じでこの順位。


9位:Wasp Star (Apple Venus Vol. 2) (12th / 2000)

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 今作もサブスク未解禁です。今作が現時点でのXTCのアルバム最新作で、「今後のXTCのアルバムはあり得ない」とアンディ本人が語ってるみたいなので、現実的にはこれがラストアルバムでもあります。
 内容はVol. 1と打って変わってギターロックです。とはいっても、ギターサウンドは従来のXTCのものではなくてティーンエイジ・ファンクラブっぽさのある90年代テイストになっていてXTC感はさほどせず、アンディとコリンのプロジェクト、ぐらいの感じですね。
 ただ、これはなかなか良いアルバムでした。しっかりグッドメロディは健在だったのと、これまでトリッキーなリズム感が多かったXTCにとって、ここまでシンプルにギターにフォーカスするアルバムも初めてだな、とも思うし、それが結構良く聴こえますね。どのサウンドもバランスよく光っててちゃんとアルバムとして統制が取れてるのも聴きやすいです。アンディの声が全然老いてないのはすごいですね。なんなら結構快活でフレッシュに歌ってます。このアルバムは聴きどころも多かったので僕の中では7、8位とは結構競ってるぐらいです。YouTubeとかに音源上がってたりとかするんで、この時期のもチラッと聴いてみてはいかがでしょうか。


8位:White Music (1st / 1978)
https://open.spotify.com/album/65Al3RSB7zeQeYcinysMxJ?si=E9kZF6ZkR563iLkj1Goedg&dl_branch=1

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 8位はファーストアルバム。デビュー作がランキングの下位に来るのって良いと思いません?バンドの成長があったってことですからね。今作は発展途上のパンキッシュなXTCが聴けるという点では個性がありますけど、その延長線上にあったニュー・ウェーヴ時代の2ndとも良い勝負。
 1stの時点でかなりクオリティは高いです。XTCの武器である跳ねるようなビート感覚やひねくれたポップセンスはこの時点でもそれなりの光ってます。時代的に同期でもあるポリスの1stに似てる雰囲気も感じますね。こっちの方がもっと荒くれですけど。「This Is Pop?」など、曲単位でも強さが目立ちますね。
 まだ装飾音の引き出しや落ち着いたポップのコントロール力は未発達ですけど、これはこれでいい作品です。2ndまでのメンバーであったキーボードのバリーが初期XTCにおいてまた違った存在感があったことはこのアルバムからも伺えます。


7位:Go 2 (2nd / 1978)
https://open.spotify.com/album/4HWzj6tf8nXvH7GzXAl1ld?si=8-NE5rDZQ5Cfe-VF2Xi-cw&dl_branch=1

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 続いてセカンドアルバム。バリーの存在感が強く、シンセサウンドが大きくフィーチャーされた作品です。そのため、キャリア史上最もニュー・ウェーヴ色の強いアルバムと言えますね。
 傑作3rdの前夜感はありますけど、今作のやかましさは若々しい初期XTCならではの魅力だと思うし、1stから約9ヶ月という短いスパンで制作され、1stの音楽性をさらに拡張できている点はさすがです。溢れ出る若いXTCのエネルギッシュさが楽しいアルバムです。とはいえ、曲単体の強さでいうと1stも負けてないので、ほぼほぼ8位と7位は同立順位って感じですね。
 このアルバムを発表後にバリーはXTCを脱退。後任として加入したギター兼キーボードのデイヴが今後、バンドに更なるケミストリーをもたらすことになります。


6位:Oranges & Lemons (9th / 1989)
https://open.spotify.com/album/3suXBde2fATz1UzA6f7UoA?si=s2yk0OfeSMamWU_-B-OauQ&dl_branch=1

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 このアルバムもキャリアではトップクラスの人気盤の一つですね。より明るいポップなXTCを聴かせるアルバムで、彼らの持ち味が存分に発揮されています。曲も「Mayor Of Simpleton」を筆頭に粒揃いですし、後半にかけて若干の失速があるかなってところで順位を落としはしましたが、XTC入門としてもオススメの1枚です。
 紆余曲折ありつつキャリアを積んできたXTCがこれまで蓄えてきた音楽要素をポップに余すところなく活かせた作品で、秀逸なメロディはポップ職人としての貫禄さえ感じられます。惜しくもトップ5には入ってませんが、正直そこに入ってもおかしくないぐらいのアルバムです。


5位:Drums And Wires (3rd / 1979)
https://open.spotify.com/album/4S6y2iTYbGONSlNJHYyrVl?si=s1iBUzm9RKuYo2qyUvejjQ&dl_branch=1

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 言い訳にしかなりませんけど、もうトップ5以上はみんな最高のアルバムですよ。このランキングの辛いところは何かを下に置かないといけないってところですよね。うぅ
 キーボードのバリーが脱退し、デイヴが新たに加入したことで今作はギターロックアルバムになりました。ハキハキしたドラムも今作の魅力ですね。今作までが僕が「初期」と呼べるラインかな、と思ってます。なぜなら今作もXTCの若々しさが出てるアルバムだから。そういう意味では、シンセの存在感は失ったものの、2ndの延長的な内容とも言えると思います。
 コリン最大の名曲「Making Plans For Nigel」が一曲目ですね。アンディの武器とする捻りのある、繰り返されるたびに面白さを増してくる絶妙な塩梅のリズムやメロディもここで大成されてきます。アルバムも全編通して楽しげで華やかです。個人的には中盤の「Reel By Reel」〜「That Is The Way」あたりが好きですね。
 XTCって名曲しか書けない、というかどの曲も聴き続けていくうちに名曲に聴こえてくるみたいなところありますけど、まさにそういう曲の応酬。XTC入門としても最適な1枚ですね。


4位:English Settlement (5th / 1982)
https://open.spotify.com/album/2fDm6GpssR8S6uQnDE4MKM?si=gXPAYq64RgSTyGNJRAEIrA&dl_branch=1

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 最高傑作候補の1枚で、LP2枚組アルバム。XTCのアルバムとしての売り上げ最高記録であり、かの辛口音楽誌ピッチフォークでも10.0満点のレビューがされています。
 この時期、アンディがダブに凝っていた時期でもあるし(自身のソロプロジェクトでダブをやってた)、今作はエスニックなリズムやドラムサウンドもあって、個人的にはすごくトーキング・ヘッズっぽいと思ってます。調和がうまく取れていて、少し間違うとカオスになりかけないぐらいのスリリングな瞬間もあり、独自路線になってきたXTCの香ばしい匂いも立ち込めます。前作から制作に携わり、今作ではプロデューサーのヒュー・パジャムがよりマジカルなサウンドに変えてくれてるんでしょう。
 キャッチーなポップエッセンスを忘れず、さらに新たにエキセントリックなギミックを用意してくるところがXTCらしいし、この後、この「一筋縄ではいかないポップ」を追究して低迷期に突入することにもなるんですけどね。
 このアルバムより上があと3枚もあるなんて信じられませんよねぇ。正直なところ、これもクオリティは最高レベルの名盤なんですけど、僕にはまだそれよりも推したい本当に好きなアルバムがあるんですよ。


3位:Mummer (6th / 1983)
https://open.spotify.com/album/7jArveDNywiBbEqax0f2vn?si=z8nMSDEYRzSJsZaNMiD8Vg&dl_branch=1

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 80年代半ばの低迷期の頃のアルバムです。「え?低迷期のアルバムが高順位!?」と思ったそこのアナタ!俺は今日そういう巷の評価をひっくり返しにここに来たんですからね。(そんでも3位なんや、とは言わんでくださいよ)
 前作「English Settlement」の成功を経て作られた今作はXTCにしてはかなり暗いカラーで、アコースティックで大人しい作品になりました。当時の評判は悪く、セールスも専門家からの評価も落としてしまいます。このアルバムの制作前に同郷で結成当初からのメンバーだったドラムのテリーが脱退します。バンド的にもあまり良い時期ではないですね。
 3rd以降、初期のパンキッシュな荒々しさはだんだん影を潜め、インテリでさらに手の込んだものにシフトしていきます。今作はキャリア史上最も静かで地味なアルバムになります。ただ、地味だからといって良くないわけでは全くありません。
 確かに玄人好みで、最初から僕もここまで順位を上げようと思ったわけではありませんでした。そのはずが、僕のアンテナがなんとなく察知したこのアルバムのポテンシャルは聴き込めば徐々に姿を見せてきました。
 聴けば聴くほど味を増すメロディはアンディが突き詰めたポップの境地と思いましたし、しっかりこのアルバムの性質に合う佳曲が満載です。「Great Fire」「Ladybird」「In Loving Memory Of A Name」など、ここに挙げられなかった曲もどれも素晴らしい出来で、より印象的なキャッチーさが後から滲み出て...、それってキャッチーって言えるの?って思ったそこのアナタ。今すぐこのアルバムを聴きなさい。そう。「この曲、こんなに良い部分あったんだ」っていう瞬間が何度も訪れるような作品なんですね。
 それだけではなく、「Deliver Us From The Elements」や「Human Alchemy」などではゴスっぽいアプローチも見せてきます。ここではXTCでもこの作品にしかない、「ミニマルな壮大さ」があって個人的にすごく面白いところですね。
 XTCの試行錯誤が見えるし、何よりこのアルバムはもっと聴かれてもいいと思ったので高順位でつけました。でも、何度も聴いて初めて良さがわかってくるところもあるので、入門には向かないですけど、他のアルバムを聴いてXTCが気に入ったときには是非聴いてほしいアルバムですね。


2位:Skylarking (8th / 1986)
https://open.spotify.com/album/3FVsJiQMI7dp0RfTBdWtMW?si=Lw_4gNVYRM-MO-OUBMBf4A&dl_branch=1

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 今作も最高傑作筆頭の名盤です。XTCは前2作での失敗から、アメリカ市場を本格的に狙ったかしこまったポップアルバムを制作することになるんですけど、そのプロデューサーに起用されたのが、トッド・ラングレン

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 彼はプロデューサー気質で、介入を嫌うアンディとソリが合わず対立し、完成までに制作はかなり難航したそうです。最終的にはトッドのプロデュースする甘美なポップ路線で制作され、結果的にはそれまでの失敗を取り返す復調ぶりで、XTCもこの後2作でもポップ路線のアルバムを作るようになっていきます。
 そんなアンディとのいざこざがあったとはいえ、内容は最高。XTC史上一番美メロなアルバムで、XTCの優しいひねくれポップの一番搾りみたいな内容です。ヒットしたシングル「Dear God」が最後に加えられていますけど、それすら逆に蛇足ってぐらいでどの曲も良いですね。とにかく今作はXTCが80年代最高のポップ職人だったことの証左になるアルバムと言って差し支えないはずです。
 XTCにしてはお行儀の良すぎるような瞬間もあって、若干オーバープロデュースっぽく感じなくはないですけど、アンディの極上のメロディがなんせ良いのでこの順位です。


1位:Black Sea (4th / 1980)
https://open.spotify.com/album/6sLuXZdrb1cmsAnfrmgbrU?si=YRz76_lOQkOKQk0yECzLAA&dl_branch=1

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 XTCの最高傑作です。なんやかんや言っといてマラソンし終わった時点で1位は確定してました。
 なんと言ってもアルバムトータルで一才の隙がない完全無欠のXTCワールドです。良曲しか収録してません。1時間の魔法です。完全体XTCの出せた総合的なポップセンスのピークはここに収められてるし、「Drum And Wires」になかった統制と多彩なサウンド、「English Settlement」になかった楽しげな情景、「Skylarking」にはないサウンド、リズムのキレと適度でケレン味のない細やかさ。それでいて、パワフルなエネルギーやソリッドなサウンド、エキセントリックなリズム感、絶妙なメロディもしっかり備えています。今作「Black Sea」は僕にとっての最も魅力的なXTCです。
 このアルバムの頃からアンディがダブとかに出を出し始めるのとかもあって、徐々に奇妙でインテリなキモさを纏いはじめます。アルバムの内容も海のイメージを連想してしまうけど、これは単に「Black Sea」だからってだけじゃないよね?でも説明しろって言われたらそこまで海っぽいサウンドでもないし、説明はできないんよね...。とにかくこのアルバムの中にしかない黒い魔力の海が必ずある!!


というわけで長らくお付き合いいただきましてありがとうございました。いかがだったでしょうか?少しでもXTCに興味を持って聴いてくれたら書き手としてとても嬉しいです。

次回は「デフトーンズマラソン アルバムランキング企画」を予定してます。のんびりやっていくつもりですので気長にお待ちくださいね〜。


ありがとうございました。
ほな。

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