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宅建試験での「考える勉強」とは?

今回は、宅建講師のメッセージのうち試験に役立つ情報です。


テキストを読むとき、過去問を解くときは、典型的な事例を思い浮かべよう

そろそろ宅建試験に向けて、勉強を始めた人もいるようです。
そこで、ちょっとアドバイスを…。

宅建試験のテキストを読むとき、過去問を解くときは、典型的な事例を思い浮かべましょう。本に書いてなかったら、自分で作っちゃおう!平成17年度にこんな問題が出ました(正解肢でした)。

『不動産に留置権を有する者は、目的物が金銭債権に転じた場合には、当該金銭債権に物上代位することができる。』(平成17年[問5]肢4) 答✕

(1)「留置権」の典型って?とイメージを膨らませる

まず問題文の留置権の典型って何?を思い浮かべます。
「留置権」の堅苦しい定義を丸暗記しても、最近の宅建試験では役に立ちません。
例えば、
皆さんがマンションの最上階の一室を借りていたとします。
でも雨漏りがするので、貸主に修理してもらおうとしたが連絡がとれません。
仕方ないので自分のお金でプロを頼んで直しました。
50万円掛かりました。
こういう費用を、「必要費」といいます。
必要費は、それを掛けないとマンションで生活ができない重要な費用なので、借主である皆さんは「直ちに」貸主に払ってもらえることになっています。

でも貸主は誠意がなく、なかなか払ってくれません。
おまけにこのマンションは、A建築士が構造計算をしたので、建物の強度にも不安があります。
そこで賃貸借契約を解除して出て行こうと思います。

この場合、借主である皆さんは賃貸借契約を解除しても、マンションのカギを貸主に渡さないでよいです。
50万円を払ってもらうまで、カギを渡さないでよい。
これが留置権の典型的な事例です。

※「留置」というのは留置場の留置と同じ。

カギを返さないでマンションの部屋を留置しちゃえば、貸主が困るから、50万円を払ってくれる可能性が高くなるので、留置権があります。
留置権は、貸主を困らせ心理的圧迫を加えることで50万円を払わせる権利です。

留置権は、皆さんが貸主から払ってもらえる50万円を担保しています。
担保というのは「保」証を「担(にな)」う、が語源です。
貸主からみれば50万円の借金のカタとして、部屋を留置されちゃったのです。
だから留置権も、宅建試験に良く出てくる抵当権と同様、担保の仲間ということになります。

(2)「物上代位」の典型って?とイメージを膨らませる

次に問題文にある「物上代位」の典型って何?を思い浮かべます。
これも「物上代位」の堅苦しい定義を暗記しても、宅建試験では役に立ちません。

例えば、
カギを返さないでマンションの部屋を留置していたところ、隣人が火事を出して、自分が借りていた部屋まで燃えてしまいました。

この場合、皆さんに50万円を払ってくれない貸主には、火災保険金がおりるでしょう。
法律用語では、これを「目的物が金銭債権に転じた」と表現します。

その火災保険金を、貸主に代わって皆さんが受け取れる場合、これを「当該金銭債権に物上代位することができる」と言います。
これが物上代位の典型的な事例です。

はたして不動産に留置権を有する皆さんは、物上代位できるのでしょうか?
答はノーです。

(3)「留置権」と「抵当権」、ちょっと毛色が違う借金のカタ

留置権は、宅建試験によく出てくる抵当権とは、ちょっと毛色が違う借金のカタです。

抵当権は、借金が払えなかったら、それを売り払って得たお金で払う、という意味の担保です。
こういうのを、難しい言葉で「物の交換価値」が担保になっていると言います。

「物の交換価値」が担保になっているので、目的物が燃えたら担保が消滅「ハイおしまい、残念でした!」じゃ、お金を払ってもらえる人(債権者)は、たまりません。

そこで「物の交換価値」が担保になっている抵当権は、目的物が燃えて火災保険金に化けちゃったとしても、お金を払ってもらえる債権者が、代わりにその保険金を受け取れることになっています。

でも留置権は、「物の交換価値」が担保になっているのではないです。
貸主を困らせ心理的圧迫を加えることで50万円を払わせる権利に過ぎません。

だから、そもそも「物の交換価値」が担保になっている抵当権などのためにある物上代位は留置権にはない、という結論になるのです。

(4)考える勉強法とは

文章に書くと長くなっちゃいましたが、きょう書いてきた典型的な事例は、慣れれば30秒と掛からないで思い浮かべることができるはずです。

テキストに書いてないので自分で事例を作るときは、自分だけの経験に照らせばイイです。
多少トンチンカンな事例でも全然構いません!

宅建試験での「考える勉強」とは、きょう私が書いてきたようなことをすることです。

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