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2023/8/1 7月の日本政治経済まとめ

⭕ 日銀関連(日銀金融政策会合、企業物価指数)、政府関連(消費者物価指数、労働力調査)そして、今月の日本政治経済を簡単にまとめてみました。
 今回は、注目されていた「日銀政策金利決定会合」が主となりました。




① 今月の日銀関連まとめ


1.日銀金融政策決定会合 7/28


【長期金利の上限を事実上1%まで引き上げ】

事実上の利上げと見るか。
今回の変更のあった2点を簡単にまとめてみました。


(1)イールドカーブ・コントロールの運用の柔軟化

● 2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、粘り強く金融緩和を継続する。
● 経済・物価を巡る不確実性がきわめて高い中、YCCの運用を柔軟化し、金融緩和の持続性を高める。

出典元 日本銀行 YCC運用の柔軟化

⭕ 長期金利の上限を事実上1%まで引き上げ。現状維持観測が大きかった為、サプライズとなり発表後、日経平均は800円程下落局面あり。日本10債利回り(長期金利)は0.555%(7/28)まで上昇。

⭕ 利回りが上がれば、企業の経済活動は縮小する傾向にある為、海外勢の日本株買いの減速につながる事が一番の懸念。

⭕ 事実上の利上げとなるが、日本は経済成長、GDP成長率が上昇している為、実質金利としては低下している事になる事も主張しています。

出典元 日本銀行 当面の金融政策運営について

② 長短金利操作の運用(賛成8反対1)(注) 長期金利の変動幅は「±0.5%程度」を目途とし、長短金利操作について、 より柔軟に運用する。10 年物国債金利について 1.0%の利回りでの指値オペ を、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。上記の 金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国 債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額 や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。

出典元 日本銀行 当面の金融政策運営について

(2)物価見通し引き上げ

日本コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数、前年同月比)
● 2023年6月実績 +3.3%
● 2023年度日銀見通し +2.5%に修正 (前回見通し+1.8%)
● 2024年度日銀見通し +2.0%に修正 (前回見通し+1.9%)

⭕ 輸入物価上昇による価格転嫁が想定を上回り、大幅に上振れている。これは、金融緩和を継続する事が前提の数値です。



2.総裁記者会見 7/31

✅ 植田総裁記者会見から要点を抜粋しました。

日本銀行 植田総裁


★ YCC修正は物価上昇の上振れリスクに柔軟に対応する為の措置

⭕ 足元 23 年度の見通しは 2%を大きく超えていますけれども、24年度、25年度につい ては、わずかとはいえ 2%を下回っている。

⭕ まだなかなか自信がない面もあるということでござい ます。従いまして、まとめて申し上げると、基調的な物価上昇率が 2%に届くというところにはまだ距離があるという判断は変えてございません。

⭕ そういう中で、こ れまでの強い金融緩和の基調を維持することが適当という結論に至った。

⭕ 物価の見通しに は下振れもありますけれども、上振れリスクもあって、その不確実性がかなり大き い。足元を外したということを考えても大きい。


(問) 今回の修正措置はですね、見方によっては、事実上YCCのバンドといいますか、 0.5%だった上限をですね、1%に拡大したようにも映るんですけれども、なぜ上限 の拡大ですとか、YCCの撤廃、変動幅の撤廃といった措置ではなくて、0.5%の上 限をめどとして残されたのか理由を伺えますでしょうか。 また、場合によってはですね、近い将来に撤廃であったり、めど、バンドの再拡大 といった、追加措置をとる可能性もあるのか、その点伺えますでしょうか。

(答) まずはやや繰り返しになりますけれども、先ほど物価の見通しで申し上げたように、 足元 23 年度の見通しは 2%を大きく超えていますけれども、24 年度、25 年度につい ては、わずかとはいえ 2%を下回っている。生鮮食品・エネルギーを除くベースで も同じような姿になっています。更に申し上げれば、先ほどの最初のご説明で申し 上げたように、その見通しももう少し分解してみると、当面はインフレ率が下がっ ていって、どこかで底を打ってまた上がってくるという見通しを、全体ならしてみ るとこういう姿になるということです。これも前回の会見でも申し上げましたが、 その後半の部分については、まだなかなか自信がない面もあるということでござい ます。従いまして、まとめて申し上げると、基調的な物価上昇率が 2%に届くとい うところにはまだ距離があるという判断は変えてございません。そういう中で、こ れまでの強い金融緩和の基調を維持することが適当という結論に至ったわけですが、 それと呼応するかたちで長期金利の変動幅についてはゼロ±0.5[%]ということを維 持したわけでございます。ただし、先ほど申し上げましたように、物価の見通しに は下振れもありますけれども、上振れリスクもあって、その不確実性がかなり大き い。足元を外したということを考えても大きい。これに対する対応も考えておかな いといけないということで、ある種、将来のリスク対応として、ゼロ±0.5[%]の外 に 0.5[%]から 1[%]という枠を、柔らかなかたちでといいますか、全体が柔らかに なっていますが、作ったということでございます。

出典元 日本銀行 植田総裁記者会見


3.企業物価指数 6月 7/12

✅ 結果 +4.1%(前年比)

⭕ 今回は輸入物価指数が▲11.3%(前年比)とコストプッシュインフレがやや解消しつつあります。

 日銀が12日発表した6月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は119.0と、前年同月比で4.1%上昇した。伸び率は6カ月連続で鈍化した。輸入物価上昇による押し上げ圧力が弱まるなかでも、消費者により近い品目を中心に価格転嫁の動きが続いている。

出典元 日本経済新聞 2023/7/12
出典元 日本銀行 企業物価指数


② 今月の政府関連まとめ


1.消費者物価指数 6月 7/21

✅ 総合 +3.3% 生鮮食品除く +3.3% 生鮮エネルギー除く +4.2%

⭕ 総合では+0.1%上昇(先月比)となりましたが、生鮮食品及びエネルギーを除く指数(生鮮エネ除く)では-0.1%下落(先月比)

出典元 総務省 統計局

⭕ 1月より実施されてる「電力・ガスの小売り業者への補助金効果」(電気・ガス価格激変緩和対策事業)でエネルギー全体水準としてはマイナスで推移する。

 しかし、6月1日より、大手電力7社家庭向けの電気料金を引き上げたことが先月比上昇に影響した。電気代先月比+6.2%

●「エネルギー全体」 先月比+2.4%
 5月▲8.2% → 6月▲6.6%(前年比)

「電気代」 先月比+6.2%
5月▲17.1% → 6月▲12.4%(前年比)


⭕ 構成品目で大きく上昇したのは

●「生鮮を除く食料」 +9.2%(前年比)
「家庭用耐久財」 +6.7%(前年比)
●「宿泊料」 +5.2%(前年比)

★ 実生活の肌で感じている通り食品はメチャメチャ値上げしてます。
★ 
政府の観光支援策「全国旅行支援」もあり「宿泊料」は先月比では▲8.5%と大幅な影響を与えている

 また、6月からガソリン価格補助金が段階的に縮小(9月で終了)する事と、7/31現在、WTI原油価格が1バレル80ドル辺りまで戻ってきた事で秋にかけて何処まで影響があるか注目です。

 



2.労働力調査 6月 8/1

✅ 完全失業率 2.5%(先月比▲0.1%) 

● 就業者数 6785万人、前年同月比で26万人増加。
● 完全失業者数
 179万人、前年同月比で7万人の減少
● 完全失業率 2.5%、先月に比べ0.1ポイント減少。
極めて低水準を維持。

男性は2万人増の3719万人、女性は24万人増の3065万人

⭕ 主な産業別就業者を前年同月と比べると、「製造業」、「建設業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「医療・福祉」などが増加

⭕ 建設業労働者は減少傾向から一気に反転して増加。追い風となっているの要因は、日銀金融緩和の継続(住宅ローンが低金利になる為)による堅調な住宅販売、2023年3月から実施された、公共事業における労働者賃金などの引き上げにより魅力を感じた若年層就労人数の増加。

⭕ 失業率のさらなる低下で、2023年度の最低賃金目安を全国平均で時給1002円に引き上げる機運が高まった。(現在は961円)
 
 しかし、最低賃金は金額目標ありきでは中小企業が対応できるかが問題です。政府は過去最高税収を使って、減税や景気対策の強化が必須です。


③ まとめ


⭕ 今回の日銀政策金利決定会合で大きなサプライズとなったYCC修正は、物価上昇の上振れリスクに柔軟に対応する為の措置、との事。

 専門家にとって意見が分かれますが、日銀がやりたいことをやったと見るのが概ねの見解です。

 日本銀行株は急上昇。

出典元 楽天証券


⭕ 7月31日の債券相場は大幅安。長期金利は0.6%台と約9年ぶり水準に上昇した。日本銀行がイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)運用の柔軟化を決め、長期金利の変動許容上限を事実上1%に引き上げたことが警戒された。一方、日銀が臨時の国債買い入れオペを実施し、債券先物の売りは一服した。

(対象は残存期間5年超10年以下で、買い入れ額は3000億円。臨時オペの通知は2月22日以来)Bloomberg 2023/7/31

出典元 Nikke225

⭕ 同時に円売り圧力(日本10年債利回りが上る事が予測され、債券価格が下落する為、他国投資家が日本長期国債券売り)がかかり、為替は142.312円の円安へ。(7/31)

⭕ また、日銀が金融政策の修正に踏み切った事で、大手銀行が7月31日に発表した8月の住宅ローン金利で、固定型を7月比でそろって引き上げた。

10年固定のローンで最も優遇する場合の金利について
● 三菱UFJ銀行は0.09ポイント引き上げ 年0.78%
● 三井住友銀行は0.1ポイント引き上げ 年0.89%
● みずほ銀行は0.05ポイント引き上げ 年1.2%
NHKweb 2023/7/31

作成 ぼなんざ本舗研究所


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