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ほうきのある生活

最近、といっても去年の12月になってしまうが、冬のボーナスで棕櫚ほうきを買った。棕櫚(しゅろ)は、小学校の校庭とかに生えてるヤシの木っぽい、皮がわしゃわしゃしたアレである。

棕櫚ほうきに出会ったきっかけは、散歩をしていた時に偶然ほうき屋さんを見つけたことだった。えっ、ほうき屋?とびっくりしつつお店に入ってみると、そこには手のひらサイズのミニほうきから大きなほうきまで、大小さまざまなほうきが並んでいた。どのほうきからも手作りの温もりが漂っていて、とても温かい空間だった。

お店の人によると、棕櫚ほうきはきちんとお手入れすれば何十年でも使えるらしい。暮らしが豊かになりますよ、と試し掃きさせてもらったほうきは、なんと150年モノだった。全く想像も付かないまま掃いてみると、とぅるんとぅるんと床を撫でる弾力がとても心地よくて、ひと掃きで惹かれてしまった。そのほうきは年季が入って黒くなっていたけれど、毛先がふんわりしていて、使い込まれた強さとしなやかさがあってとてもカッコよかった。その後もほうきのあれこれを丁寧に教えていただき、すっかり棕櫚ほうきのファンになってしまった。

欲しいな、と思ったけれど、それなりにお値段もするものだったし、勢いで買っていいものではないような気もしたので、その日は何も買わずに帰ってきてしまった。しかし家に帰ってからというもの、あの棕櫚ほうきの滑らかな掃き心地がどうにもこうにも忘れられない!そんなわけで、その後何度かそのお店に通って迷った結果、冬のボーナスが入ったタイミングで我が家にお迎えすることにした。以来、床の掃除は棕櫚ほうきを使うようになった。

実際に棕櫚ほうきを使い始めてみると、掃除機のヘッドが入らないような隙間も掃除できるし、小さい塵もしっかり集められるから、すごく使い勝手がいい。それに、ほうきを掃いている時間はとても静かで、しゅっしゅっと床を撫でる音を聴くと何だか心が落ち付く。どんなに忙しい1日でも、夜に棕櫚ほうきで掃除をすると、気持ちがゆるんでいく気がするのだ。そうしてつるっと綺麗になった床を見ると、棕櫚の油分で床にツヤが出ますよ、というお店の人の言葉を思い出して嬉しくなる。

モノを大事に使うということに豊かさを感じるようになってきた今日この頃。我が家のほうきは、150年モノにはまだまだ届かないけれど、この先もずっと大事に育てていきたいなと思う。


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