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銀行用語の銀行員的使い方

業界には業界特有の専門用語があるし、他業界や一般的にも使われる言葉の中にも、特定の業界には独特のニュアンスや意味があったりする。

私は新卒からメガに入行以来、業界に10年以上籍をおき、すっかり身もココロも銀行業界に染まってしまった。

銀行員同士、独特のニュアンスや意味合いで会話が通じる言葉をちょっとだけご紹介したい。

家庭内稟議

〔名詞〕
〔読み方〕かていない-りんぎ

〔本来の意味〕・・・稟議は通常、支店長や部長などの決裁権限者から申請事項の承認を得るプロセスである。承認を得るまでに課長→副部長→部長と段階を踏むケースが一般的。例えば、法人のお客さまに融資を実行すべく営業店内で部長まで稟議を回付する、といった使い方が代表的である。

〔ギョーカイ〕・・・”家庭内”の決裁権限者は夫にあらず。妻が真の決裁権限者である。妻に『来週飲み会行ってイイ?(ですか?)』は、ザ・家庭内稟議。情報公開が厳しく求められる昨今でも家庭内稟議の決裁プロセスは不透明極まりなく、他所様の決裁プロセスは明らかにしないのが良識人としての暗黙の了解である。稟議が承認されない限り、たとえ年収1千万を稼いでいても飲み会には参加できないのでとても悲しい。なお、銀行業界も女性の活躍が年々高まっているが、妻から夫に対して家庭内稟議の承認を求める話は聞いたことがない。だから、どの家庭も妻が決裁権限者なのだろう


謝絶

〔動詞〕謝絶スル、サレル、など
〔読み方〕しゃぜつ

〔本来の意味〕・・・お客さまからの申し出について失礼のないように断ること。拒否すること。銀行はお客さまから会社の事業決算書を頂く場合も記録上は「決算書を徴求」と表現するため、やや上からの物言いである。担当者は融資等の相談をしてお客さまからご了解を頂いた場合でも、銀行内の決裁が下りなかった場合はお客さまにお断りを入れなければならない。銀行からお願いして銀行から断るので勝手極まる話であり気持ちでは申し訳ないと思っている。なお、お客さまからの求めでも会社として承認が下りない場合は同様に謝絶という。

〔ギョーカイ〕・・・謝絶された、という受け身表現で使われることが多い。例えば、プロポーズを謝絶された、など。本来の意味には”失礼のないように”、という意味合いが含まれるが、使い勝手が非常に良いので、断られたシーンを表現する際になんでも謝絶されたという言い方になる行員が多い。ストレス耐性を持ち合わせた銀行員らしいM気ある表現


筆頭+〇〇、末席+〇〇

〔名詞〕〇〇には役職名が入る(例:筆頭課長代理)
〔読み方〕ひっとう-かちょうだいり まっせき-ふくぶちょう
〔本来の意味〕・・・昔から生え抜き行員が多く、誰彼の入行年次を意識する傾向がある。私も相手の年次は結構気にしている。偉そうな奴の年次は一度調べてから相手の対応をするようになってしまった。いやらしい。銀行によって呼び方は異なるものの、特定の職階に若手・ベテランが混在しているため、同一部店内の入行年次が最も古株の先輩行員を筆頭+〇〇と呼ぶことがある。

〔ギョーカイ〕・・・本来の意味として使われる場面がほとんどだが、筆頭+〇〇にはイジリとしてのニュアンスが含まれる。というより、イジリを目的として筆頭+〇〇と表現するケースが99%以上だ。例えば、20年目のベテランで担当者級を筆頭課長代理、といった呼び方。ただし、侮蔑的な意味合いはほとんどないので、会話を盛り上げたりコミュニケーション的に使うケースがほとんどだ。


メガバンクは24卒の就活生からの就職人気が回復しつつあるらしい。だが銀行の本業は金貸しのため良いイメージを持たれなかったり、斜陽産業のイメージを持たれがちだ。銀行以外の方に少しでも銀行のなかを身近に感じてもらいたい。銀行員らしくコンプライアンスには絶対に抵触しない範囲で今後も銀行業界のちょっとしたお話をしていければと思う。

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