映画『眠る虫』レビュー 九鬼 薫里子

めちゃめちゃ良い映画でした。。自分の五感と歴史に染み渡らせたいと思う映画でした。シャワーみたいにぶっかけずに、作中のティッシュみたいにじわじわと。反芻しながらこれから私の中に同化していく映画になるような気がします。

技術だ技法だ、そうゆうのよく考えると邪魔くさいので、とにかく思ったことつらつら書いちゃいます。

耳を澄まして、視野を高くしたら感じることがあるかも、なんて思って帰り道はキョロキョロしてしまいました。幽霊は見つからなかったけど、下水の匂いのする乗客すら愛おしくなりそうだった。普通に臭かったです。

その場に在る、在ったことはどんどん時間に流されていってしまうけど、それを拾い上げようとする優しさと健気さに満ちたような映画でした。それは命だったり思い出だったり音だったり、あらゆるものの存在を肯定するおおらかさみたいなものも感じました。

また、見えていなかった世界をちょこっと覗けたようなで嬉しくなります。ちらっちらっと顔を出してくるそんな愛嬌が作品の空気に満ちてて、なんだか安心して身を委ねられる時間になってました。

余談ですが。手のひらに運ばれていく石のシーンで、小さい頃のドライブを思い出しました。我が家では抜けた髪の毛は必ず外に捨てるというルールでした。車窓から捨てた髪の毛は一瞬にして風に巻かれて、遥か遠くへ行ってしまいます。私は髪の毛のその後を想像して、果てはアフリカまで自分を詰めた分身が旅立つような気持ちになりました。
どこかの場所に在った石が場所の思い出や事実を詰め込んで横切っていく姿が、自分の幼い企みと重なって、なんだか勇ましい風に見えました。

九鬼 薫里子


http://moosiclab.com

MOOSIC LAB 2019 Eプログラムにて上映中
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[新宿 K’s cinema] 

12/7 18:45~ 

12/11 21:00~ 

[UPLINK吉祥寺]

 12/17 18:00~

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