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ここで根をはり、私らしく。vol.4

花仕事の原点

B : 少し話はさかのぼりますが、そもそも花を始めたきっかけは何だったんでしょう?

M:ほんとの初めは、おばあちゃんが花を育てていて、小さいころからプランターに花が咲いていて家には常に花があったという事かな。小学校の時に、先生にお花を持って行ったことがあって、すごく先生が喜んでくれたんですね。その時に、お花ってこんなに人を幸せにするんだ、ってすごく印象に残って。実際に仕事にするとは思ってなかったですけどね笑。

B : 花の仕事をする前は、違うお仕事をしてたんですよね。

M:販売員をしていました。すごくノルマが厳しくて、だんだんきつくなって辞めて。一年くらいフリーターしてたんですが、そろそろちゃんと仕事につこうと思ったときに、手に職を付けたいなと考えたんです。自分のやりたいこと、ずっと続けられることをやりたいなと考えたときに、夢だったお花屋さんで勤めたいと思ってアルバイトから始めました。

B : そこで幸恵さんと出会ったんですよね?幸恵さんはどんな上司でしたか?

M:私が入った時は、幸恵さんは北海道に赴任されてたのかな?大阪に戻ってくることになって、私が所属していた販売部のチーフに就いたんです。その時に、社員を育てるプログラムがあって私も参加していたんですが、幸恵さんがその講師の一人で、それが出会いです。バリバリ仕事できて厳しかったですね笑。でも幸恵さんがいなかったら、私はここまで花の仕事をしてなかったと思います。ただ厳しくてわ~って怒るんじゃなくて、愛があるというか。

B : そうだったんですね~。でもそんな幸恵さんがパリに行って、独立されて。真由美さんもパリに行かれてましたが、やっぱり幸恵さんにも相談されたんですか?

M:私、悩み事って結論が自分の中で出るまで、あんまり周りに言わないんです笑。だから、パリに行くって決めてから、行きたいんですって幸恵さんにも相談しました。幸恵さんはその頃には自分でレッスンをされていたので、私も数回レッスンを受けさせてもらって。それでパリに行くんだったらアシスタントやらない?って言われて少しお手伝いしていました。

B : パリにはどのくらい滞在してましたか?

M:パリは10ヵ月いました。ローズバッド(斎藤由美さんのビジネスパートナーであるトップフローリスト、ヴァンソン氏の花店)には3ヵ月。本当は私が留学する時期は、ローズバッドの研修は埋まっているって言われてたんです。でもビザも取ったし、行くだけでも勉強になると思って、そのままの予定ですすめました。そうしたら出発の直前に、由美さんから急に、研修生の枠が空いたけど出来る?って連絡をもらって。それで急遽、許可証とかも急いで用意して、3月末に日本を発って、4月の頭から研修でした。

B : それはラッキーでしたね!ローズバッドでの研修の後は、他のお店にはいかなかったんですか?

M:どうしようかな、ってすごく迷ったんです。行ってすぐ3か月で目標達成というか、一番やりたかったことをやれたので。でもすぐに夏休み期間に入ったので、その間に悩もうと思って過ごしてました笑。他にも行こうかなと思ったお店はあって、履歴書も書いたんですが、やっぱりそこまでときめく花じゃなかったというか笑。せっかくパリまで来て、ときめかない店で無理に働くよりは、街並みを見たり、好きなローズバッドに行ったり、由美さんのレッスンを受けるほうが私は勉強になるんじゃないかと思って。それで他には行かず、あとは自分のやりたいことをして過ごしていました。


B : それはきっと、すごく贅沢な時間でしたよね。

M:そうですね。それまでは休みも少なくてがむしゃらに働いてきたので、パリで何もしない自分に焦ってたりもしたんですけどね。これでいいのかな、みたいな。でも友人に、これまで頑張ってきたんだからここにいる間はいいんじゃない?って言ってもらって、ああそうか、って思って。

B : その間に、由美さんの本の花材リストの翻訳もされてましたよね。

M:そうです、あれは由美さんの写真一覧のプリントをもらって、見てぱっとわかるメイン花材を日本語でまずリストアップして、それをフランス語に訳しました。わからないものもあったので、それはローズバッドに行ってヴァンソンに聞いたりして。もし他の店で働いていたら、それもできなかったと思うので良かったなと思います。


じっくりと自分の中で納得いくまで考えてから行動し、人の意見も素直に聞く。真由美さんはいつも自然体でいるように感じるのですが、それは無理をしないから、なのかもしれません。もちろん努力しないという事ではなく、あと一歩を頑張ってきたからフローリストとして成長してきたことは間違いないのですが、無理を「しすぎない」というか、そういう自分が心地よいペースを保つことで、持てる力をきちんと発揮できているのではないかと思うのです。それもまた、自分を知り、自分を活かすということ。だからこそ、静岡という新たな地で根を張り、魅力が花開いたのかな、とも思いました。

最後に、これからのことを聞いてみました。

パリの古いものと、お花と。

お花の標本と、これから

B : パリから戻ってからはしばらく幸恵さんのところでアシスタントをされてましたよね。私たちもディプロマレッスンでお世話になりました!「ル・ボスケ」という屋号で活動を始めたのはいつからですか?

M:パリから帰ってすぐ、2014年だったかな?最初はレッスンはしていなくて、ギフトオーダーを受けていました。でもクリスマスの前に、幸恵さんが、自分はクリスマスレッスンやらないから、レッスンをしてみたら?と。やったらいいじゃん!って背中押してもらって、それでレッスンをやり始めました。

B : 最初からレッスンをしなかったのはどうして?

M:私、先生っていうキャラじゃないですし笑。教えるよりも、作り出すほうを得意としていたので。今でも私、先生とは呼ばないでくださいって言ってるんですよ。自分の持っている知識はすべて伝えさせてもらってますが、基本的にはお花を楽しんでもらったり、暮らしを彩るっていうことが私の中ではメインになっているので。花に関する知識はお伝えしても、先生と生徒とかじゃなくて、楽しい時間を過ごしましょう、って思っています。

B : なるほど、教えるというよりは一緒に楽しみましょうということですね。それはとても真由美さんらしいように思います。今後は、たくさん生徒さんを取ってレッスンをして、というよりは作品作りを頑張っていきたい感じでしょうか?

M:作品を作るのもやっていきたいことですけど、切り花で暮らしを彩るっていうのは私の中でも大切なことなので、それは今後もレッスンでたくさんお伝えしていけたらいいなと思います。

B : 花を愉しむレッスンと、お花の標本と並行してという感じなんですね。お花の標本、最初の作品はどんなものだったんでしょうか?

M:初めて作ったのはパンジーの栞でした。メッセージカードみたいなものに自分で押し花にしたパンジーをあしらって、というのが始まりで、それから自分で紙を漉いてみたりだとか、やっぱりもう少しシンプルにしてみようかなとか、自分の中で進化というか、試しながら作品を作っていってる感じです。
作るという事に関しては、興味があることを色々と試したい方なのかもしれないです。あとはすごく影響されやすいというか笑。夏に、牧野富太郎さん(「日本の植物学の父」ともいわれる高知県出身の植物学者)の植物園に行って、標本をすごくたくさん見てきたんですよ。それで次はもっとシンプルな、根っことかもそのままのものを作ったりしてみたいな、とか思っています。

B : その一つとして、最初に伺った藍染もやってみたという感じなんですよね。言われてみれば、お花の標本も由美さんとのコラボレッスンの時には、よりパリ色が強かったようにも思います。やっぱり少しずつ変化していますね。

M:パリは私の原点といってもいい大切なものなので、それは根っこにはいつもあるんですけど。幸恵さんがインタビューでも言われてたことなんですけど、由美さんも変化しているので、私も自分の暮らしに合うようにじゃないですけど、そんな風に私の作るものもこれから変化していくんだと思います。

これからは静岡で、根をはり、生きていく。
まなじりを決して挑んでゆくという感じではなく、緩やかな、でもしっかりとした意思が感じられます。それは強い風に吹かれても折れない、強くしなやかな柳のよう。大阪やパリで培ってきたものを土台として、その土地にあわせて育ちさらに進化していく真由美さんの姿は、これからの新しい時代の「暮らし」を体現しているようにも思いました。

おしまいに、実は真由美さんから逆インタビューを受けました。「どうしてインタビューしたものを記事にしようと思ったんですか?」。他にも何人かの方から聞かれた質問。冒頭にも書いているように、素敵な方たちとご縁を頂けたのだから、もう少し深くその方のお話を聞いてみたい、せっかくならそれを文章にして皆さんにも読んで頂きたい!と思ったことが始まりでした。まだ数回ですが、それぞれのストーリーから感じられる熱量に私が圧倒されています。そして、花という共通項で結ばれた方々のお話を重ね、紡いでいくことで見えてくる何かがあるように感じ始めました。これを読んでくださる皆さんにもそれぞれ、何かを感じて受け取って頂けたら嬉しいです。

お子さんを膝にのせてあやしながら、たくさんお話を聞かせて頂きました。いい子にしてくれていたAくん、真由美さん、ありがとうございました!

※インタビューは2021年8月

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