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フローリスト的、感性をデザインに落とし込む方法 vol.2


レッスンブーケの花合わせ


幸恵さんのレッスンの魅力は、テクニックの高さはもちろん、その花合わせに毎回心ときめきます。私自身パリスタイルのレッスンを始めてから、市場で花を買う時には幸恵さんの花合わせを参考にすることも多く、そしてそれはどんどん進化している印象です。一流フローリストがどんな風に考えながら仕入れているのか、一度詳しく聞いてみたいと思っていました。

今回のオンラインレッスンは2021年7月に受講、花材は紫陽花、アキレアそしてキャロットソバージュの3種類にアクセントとして野ばらを1本、というシンプルなものでした。なぜそれを選んだのか、市場で花選びをした時の幸恵さんの思考を順にたどりながら解説して頂きました!

Bonjourfleurs(以下B) : 今回のレッスン花材について、まずはどんな風に選んだのか教えていただけますか?

幸恵さん(以下S):今日のお花は特に決めずに市場に行きました。そうしたらまず目についたのが、この鈴木源八さんの紫陽花なんですけど、彼の花が大好きなんです。

B : 鈴木さんから直接買われてるんですか?

S:ううん、市場に出荷されてるものです。大田市場にも出てなくて、世田谷市場のたぶん一軒の仲卸さんでだけ買える。出荷量も少ないんです。

最初に出会ったのはミモザ。どんなにものが良いと言われるものでも、並べると源八さんの方が断然いい。それが出会いで、2,3年前くらいから紫陽花も出荷されるようになって。6月初めくらいから瑞々しいものが出回るんですが、今回のはそれが立ち枯れたもの。7月に源八さんの紫陽花を仕入れたのは実ははじめてで(初夏の紫陽花は6月頃が旬)、あるのは知ってたけど、紫陽花イコール初夏、または秋色紫陽花、と思っていたから。

だからレッスンに登場することは今までなかったけど、市場で見た瞬間から目が離せなくて、もうロックオンって感じで。この時期ならでは、初夏の瑞々しさから夏を経て、秋に向かう感じというか、、色も、所々にあるシミの感じとか、旬を少し過ぎたリアルな季節感が感じられます。今日は葉っぱもきれいだったから、ほかに葉ものを入れるのやめたんです。その葉っぱを活かしたい、他に入れてしまったらそれが葉っぱとして目につきすぎるなと思ったからやめました。

じゃあ何を合わせようかと探して、紫陽花の微妙な色合いと質感を邪魔しない、同じようにまだ瑞々しさを残しつつも、種ができはじめているキャロットソバージュを合わせました。アキレア(ノコギリソウ)はチャレンジ花材です。

花のシミ、葉っぱの虫食いも魅力として目に留める


B : アキレア、そうですよね!花材見て、珍しいの来たー!って思いました。これまでは使ってなかったですよね。

S:そう、、そうなんです。心惹かれるものを素直に手に取ろうと最近は思っていて。紫陽花と何を合わせようと思ったときに、そのノコギリソウとめっちゃ目があったんです。あ~、可愛いな、と思って。他に葉っぱも入れないし、その名前の由来にもなってるのこぎり型の葉っぱを上手く使えたらいいなと思って。
それぞれがすごく表情豊かな三種類です。

B : すごく花材シンプルだなと思いました。私も、種類をギリギリまで絞ったシンプルなブーケに惹かれているので、この花材を見た時はうれしかったです!

パリスタイルでは、季節感をとても大切にします。そして幸恵さんが今回の花材を選んだ過程を聞くと、細かなディテールにまでこだわって選んでいるのがわかります。色、葉のつき方や大きさ、形、質感。見た人を惹きつける花合せには、細部まで意識し、それを選んだ確かな理由があるのです。

基本的に種類を絞って混ぜすぎない。春の枝物ブーケ


S:その野ばらは、先週のなんですけど、ふと目についてアクセントにいいかなと思って。
野ばらもわざわざ買ってたら、2本3本入れてたと思うんですけど、1本だからいい仕事すると思うんです。
だから、今日のレッスンのポイントは整えない、不ぞろいの面白さ。紫陽花の色もそろわないし、キャロットソバージュもちょっと黄色くなってるものもあって、野生味たっぷりだし。野ばらの先端の何もついてない茶色い枝というのがまたいい仕事してると思う。

B : あまりきれいにしすぎないということですね?

S:そう、最近の私のブームはちょっと野暮ったいの。ちょっと野暮ったいけどめっちゃええやん、っていうのがマイブーム。レッスンではあんまりしてないですよ、難しいから、上手く束ねないとほんまに野暮ったくなってしまうから笑。
一周二周まわって、ちょっと懐かしい。アキレアもそんな感じなんですよ。

B : お洋服でいったらギンガムチェックみたいな?

S:あ~、そうそう!なんていうんでしょう、昔からあるけど決して古いわけではなく。昔からあるというだけで、古いというカテゴリーに入れてしまうのは少し寂しいというか。

花と向き合う時は真剣勝負



幸恵さんのレッスンでは、まず花合わせについて必ず話を聞きます。彼女ならではの感性からうまれる表現は時に独創的で、習う私たちは想像力を働かせてそのイメージに近づいていきます。そんなレッスンの過程はとても面白くて、束ねたブーケはいつも本当に素敵。
今回はいつもにも増して細かくお話を聞くことで、一つひとつの花や葉っぱ、枝振りのチャームポイントが浮き上がって見えるようでした。

フローリストが市場で花選びをするときの思考回路、詳しく聞く機会もなかなかないので、すごく面白いと思いました!そして細部にまで拘り妥協しない姿勢は、他の仕事にも通ずる事なのではないかな、とも思います。

不揃いの面白さ、を表現すべく束ねたブーケは、思わずわぁ、と感嘆の声が漏れたほど。紫陽花の色がばらばらなのに、不思議と統一感が感じられる。それは季節感や質感を揃えているから。
解説を聞くと、なるほど!と納得です。

今回のオンラインレッスンでは、幸恵さんのデモンストレーションもお願いしていました。次はその様子をご紹介します!


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