見出し画像

【休日読書】SDGsがひらくビジネス新時代


竹下隆一郎氏の著書、「SDGsがひらくビジネス新時代」を読んだ。

私なりにちょっと書評風の感想文を書いてみたいと思う。

●SDGsとビジネスとSNS
乱暴に言えば、この本のキーワードはこの三つかなと。このうち、書名には出てこない「SNS」と、そこに表れた個人の思いの発露、行動について丹念に追っているのが印象的。私の中では、いわば「SNS行動学とビジネス」について書かれていると感じた第一章から第四章が、この本の核なのだろうと感じた。

その中で繰り返し述べられているのが「SDGsを軽視するビジネス・企業は滅びる」ということ。彼の筆致は穏やかで、具体的な事例も多く出てくるので、読んでいる多くの人は、企業側ではなく、個人がSNSというツールで誰でも発信し、企業や経済社会に物申せる時代になったという事実に共感して読み進めるのではないか。

でも、彼はきちんと、個人が複数のレイヤーを背負っていて、場面によってどれかの属性が強く前面に出ているだけだと述べている。ビジネスに関わって暮らしている人は誰でも、ビジネス当事者側の立場でもあり、例えば私でいえば「一企業の平社員だし、消費者でしかない」と逃げることは許されないのだと、読む人に問うている。

●あとがきのエピソード
「あとがき」に描かれた落ち葉拾いのエピソードは、そういった「耳の痛い」本書の読後をさわやかにしてくれるものだった。

筆者の幼少期の体験から見える人となり、身内との穏やかな交流、その思い出を本書の趣旨とも照らして分析する冷静さなど、彼がこの本を著した背景がここにみて取れるような気がした。

そして、「ビジネスは、個の意向や意欲によって成り立つ活動である」ことを、家族や協力者への謝意も含めたあとがきによって、強く表明するものだとも言える。

●序章と最終章について
本書は、

まえがき
序章
第一章から第五章
最終章
あとがき

で構成されている。

あくまでも個人的な憶測だが、この序章は、編集者とのディスカッションの中で、後から書かれたものなのでは、という気がしている。

あとがきに、この本を他者と対話した録音から書き起こしたと明かされてもいるし、序章のみ(もしくは序章と最終章は)、対話の書き起こしではなく筆者が一から書き上げたものなのかなと思ったのだ。

本書にとってこの序章は「SDGs」への理解にばらつきがある読者たちに、一定の前提を与える目的で書かれたと考えるため、有用であることは間違いない。ただ、この章のリズム感だけ異なっているような気がするので、本書を手に取られた方で、SDGsをある程度わかっている方ならば、第一章以降から読み進めるのもありなのかなと感じる。(筆者自身が、他の論考を最終章から読み始めることがあると述べているように)

また、最終章は、消費者側の立場で本書を読んでしまった私のような方に、ビジネス側の視点への当事者性を呼び起こす大切な章なので、ここも気合を入れて読むことをお勧めする。

以上、休日の読書感想文でした。
(補足 著者とは直接の交流があります。排したつもりですが贔屓目もあるかもしれないことをご了承ください)

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?