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蒔かぬ種が生える

〔解説〕

 この格言は、古くから存在する「蒔かぬ種は生えぬ」が元になってできた新しい格言である。
 日本格言制定委員会の若手委員の一部から、「世の中の事象は確かに格言の通りではあるが、まともすぎておもしろくない」「少しは刺激的な雰囲気があってもいいのではないか」など、わかったようなわからないような、珍妙な意見が出たことが新格言制定のきっかけとなった。

 本来の「蒔かぬ種は生えぬ」には二つの意味がある。一つは「ものごとは原因がなければ結果は生じない」という意味。もう一つは「努力もしないでいい結果を出そうとしてもだめ」という意味である。どちらの意味も、仕事や勉強、生き方などに対しての教訓や戒めとして使われる。
 類語に「打たぬ鐘は鳴らぬ」「物がなければ影ささず」「棚から牡丹餅は落ちてこない」がある。(※『蒔かぬ種は生えぬ』と類語はパロディーではない)


〔さらに解説〕

 新格言「蒔かぬ種が生える」は、前述の正統なものとは逆に、原因がないのに結果が生じるという、不条理かつ不思議な事象をいったもの。

 例で示してみよう。
 内気な中学生である梅夫くんは竹子ちゃんに愛を告白できずにいた。ある日コンビニで偶然出会ったら、竹子ちゃんが「ごめんね梅夫くん。これからもただのお友だちでいましょうね」と言った。
 自分で告白したわけでもないのに突然振られるという、理不尽な運命にあった梅夫くんは、驚くと同時におかしな結果となって意気消沈。
 じつは、お節介な松治くんが、勝手に梅夫くんの気持ちを竹子ちゃんに伝えていたのだった。

 このように、自分で種を蒔かなくても、他人が勝手に蒔いたり、その他外力によって意図せず蒔かれたりすることもある。
 そこで委員長が、「自分で」というひと言を加えて「自分で蒔かぬ種が生える」としたらどうかと提案した。
 しかし、顧問で格言評論家の種田芽出彦氏が「そんなにきっちりしなくてもいいじゃないか。話の種にもなるし」と反論。顧問に芽を摘まれたかっこうになった委員長は結果を出せずに終わった。

 類語に「火のないところに煙が立つ」がある。


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