見出し画像

雪女と雪男の不可解な身の上

 妖怪なのか化け物なのかわからない(妖怪説が有力)が、そういう世界では盤石の地位を築いている雪女。たいていの場合は静かな怖さのキャラクターに設定されていて、冷たいとか不気味とかの味付けはあるが、容姿は明らかに女となっている。

 広い世間には、雪女のような女性が好みだという奇特な殿方もおられるかもしれないが、同じ雪の冠がついていても雪男となると話は違ってくる。
 雪男の海外版とも言えるイエティなるものが存在する国もあるようだが、それらは妖怪や化け物とは異なってわずかにリアリティがあり、未確認生物とやらに位置づけられるらしい。

 で、雪男は確かに男のように捉えられているが、あんなに毛深くては身体的特徴を確認することもできず、男と断定するには少々心もとない。
 何とかして一人、いや、一匹というのか一頭というのか、とにかく個体をひとつ捕獲して確認する必要があるだろう。もしかしたら、筋肉質でがっちりとした体格の女だったなどということだってあるかもしれないではないか。
 ところで、男とか女とかという呼称は人間だけに適用されるのであって、人間ではないのに「雪男」と呼ぶのは基本的に変だ。

 それはさておき、雪男が哺乳類であると仮定するなら、雌雄両方がいなければ種の存続は不可能だ。必ずメスがいるはずで、オスしかいないなら絶滅してしまう。
 第一、雪男がほんとに存在するなら、それを生んだ母、つまりメスがいるはずだ。木の股から生まれたわけではあるまい。そしてその母というのは、普通に考えれば女であり、メスであるはずだ。

 そうなると、こんどは呼称が問題になる。雪男にメスがいるなら「メスの雪男」とか「雪男のメス」と言わなければならない。
 それとも、いっそのこと雪男のメスを「雪女」と言いきってしまうか。ただし、その場合は「元祖」の雪女と一緒になってしまうから扱いが厄介だ。

 元祖雪女にしても雪男と同様で、男が存在するなら「男の雪女」や「雪女の男」などと呼びわけなければならない。それともやっぱり「雪男」と言いきるのか。

 雪女と雪男の身の上、やっぱりミステリアスだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?