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マス受けを狙わないNCT127と時流を見据えたSM

今年も下半期に怒涛のカムバ祭りを繰り広げるSMエンタ。事務所の作風の面白さについて、所感でも書いておこうと思いまして。先日リリースされたNCT127「favorite」に関しては咀嚼が不十分なので脳直ツイートに留めておきます。

▼関連note

Kwangyaで再建したSM

aespaのデビューを皮切りに、事務所として一貫した世界観「SMCU」を展開しつつあるSMエンタ。突如として’’kwangya’’が歌詞に登場して以降、意味が判らぬまま時が過ぎましたが、新社屋の名称と判明してからは文脈がおかしい歌詞に、一層困惑をしています。

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多くは語らず、徐々にタネ明かしをする遊びを楽しんでいるSMエンタさん。そんな謎の合言葉が新曲発表時にトレンド入りする現象も今や常態化。結果、kpopライト層に関心を持っていただけるというね…。新たなマーケ戦法を繰り広げて界隈を席巻しているのが実に面白いです。意図せぬ形でも(?)、kpopを盛り上げているのは時代の先駆者で在り続けたSMらしさとも言えるのかな。


置きにいかなかった「Sticker」でのヒット

どういう打算で音楽を作っているんでしょうね。個人的にsticker→kick itの流れだったら、とんでもないヒットだったと思っていましたがNCT2020を踏まえたからこその実績でもあるのかな。

この楽曲が仮にUでの発表曲だったら反応はどうだっただろうか?という考えも過ったのですが、固定ユニットで結束力が土台にあるからこそ群舞の良さも出るし、短期間でこれだけのものが仕上げられたのかもしれませんね。同作で、イリチルの音楽は不動なものとなったのだと感じました。(favoriteはややEXO感があるけれど)

制作サイドのインタビュー記事にはすかさず飛びついてしまう。楽曲がリリースされた時に感じた考察と制作陣の意図を照らし合わせながら、答え合わせをしています。メンバーたちの歌収録・ビハインド映像を見るのも楽しいですね。作る過程って、その人の価値観や思想的なものが見えてくると思うので。

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SMエンタの作品は、思考を放棄させてくれない面白さもあってそこも魅力に感じています。音楽に深みがあって、衣装や各要素に裏ストーリー(メッセージ)が込められている事が多いので。

ただその一方で、作品に対しても余白を残す、敢えて詮索しない楽しみ方も持つ様にしています。音楽や芸術って解釈に「1つの正解」が無いものだし、心に他者が介在しない時間でもある。対極な意見を持つ人がいても新たな見方を学べた、程度で留めておくとオタクライフも適度に楽しめて良いのかもしれません。

因みに実際の制作の現場では、事務所内のA&Rチームが楽曲制作とコンセプトを決めていますよ。以前、ユニット活動をしていたテンヤンが雑誌でこのチームとのやり取りを教えてくれていましたね。現行の担当者がもう少し表に出てきてくれたら個人的には嬉しいんですけれど、、今だとCEOのイソンス代表がこのチームの出身者です。

▼SM CUの解説スレッド

端的にSM CUとは何か、について纏めて下さっています。IT用語の多用でイマイチ解説となっていないSMサイドの説明よりも実例を挙げていて分かり易い解説スレッドです。


描写の持つ力

「映像」を軸に考えてみると、構成力のある作品って受け手が見たときに、制作陣の熱量が伝わってきませんか?我の場合は最近だとNCT127「who is sticker」やNCT DREAM「Hello Future」が該当すると思っています。

who is stickerの映像については、PDが初めてNCT作品に携わった方だそうですね。同PDが生配信をした際にメンバーの印象やどうやって企画立案をしたのかについて、言及なさっていました。

・DMにてSMからタッグを組まないかという提案を受けた
・シズニの友人に制作に携わる事は明かさず、メンバーのキャラクター性を聞き出し事前知識を持った上で構成を考えた

2つ目の項目、作品を見た上で聞くと合点がつきましたね。私自身もクリエイターとして、制作に携わる際は先ずは市場調査に時間を割きます。あとは本人の話している映像や過去作品を見ること。演者の日頃の言動や癖などは把握しておくと彼らの個性と魅力を作品で還元出来ると思っています。オタクの気持ちはオタクにしか分からないに尽きるのでメインターゲット層への聞き込みも必要不可欠。

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クリエイターとしてマス受けよりもニッチな層に刺さるような、自分たちがやりたいものだけを追求したい気持ちも分かってしまう。だからこそ、受容する側のニーズに応えられてはいながらも、きちんと制作サイドがやりたかった作品が創れていたのだと知れた時の喜びは大きいのです。それでいうと、今のSMって音の作りこみは我流でMVとかの描写に於いては時流に乗っている感じはします。


SMサウンドらしさへの回帰

aespaのNext levelの編曲を皮切りに再びSMの専属作曲家たちにスポットが当たりましたね。その立役者であり「21世紀最も優れたプロデューサー トップ50」にも選出をされたのがユヨンジン理事。

約6年前にはフューチャーベースのムーブが来ていたSM。何処よりも早く欧米要素を組み込んだ独自kpopサウンドを創り出してきましたが、ここに来て朝鮮の縦笛に始まる楽曲をタイトルに選定したのは勝負欲の表れかと。

上記のブログの筆者様が我が言いたかった事を既にまとめていらしたのでSMエンタの音楽史にご関心ある方は是非ご覧あれ。

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前々から音楽性は評価されているSMですが、MVなどに関しては他事務所と比べ、伸び悩んだ時期もありました。こちらに関しては、Super MやSMCUなどの施策・Youtubeの機能性向上などで数字が伴う様にはなったと思います。

また、2020年のパンデミック以降、音楽やエンタメの在り方に変化があった事で人々の関心やお金の使い方にも動きがありました。以前までは路上ライブが出来たり、現場主義で売り込みが出来ましたが物理的に不可能な時期が続いたので…。そんな中小事務所が苦境に立たされる中、オンラインのbeyond liveでいち早く独自のプラットフォームにて公演をおこなったSM。パイの奪い合いが起きているYoutubeの自主制作でもクオリティーで勝負に出たのはさすがだなと思いました。

コンテンツ力と昨今の同時多発なSMエンタ歌手カムバ祭りにて、多様なジャンルの音楽を届けたことは、自然と大衆の目にも留まるようになったと思っています。(kwangyaの皆さん寝れてます?)

原文は韓国のニュース記事。ニッコリしてんだSMさんw 当方、古巣のオタクとしては事務所が好調であるという一報が聞けて良かったです。買収劇もCJで落ち着いたのでしょうか・・?イスマンがシナジー効果があると見込んで、協業でやっていきそうな同件については、友好的買収と見て静観しておきます。

SMCU展開へ

SMエンタも、稼ぎ頭が兵役中ですし世代交代の見方もある中、NCTの方向性、特にネオなサウンドと世界観で同グループの代表格であるイリチルをどうしていくかの討論はなされたと思っています。時流の音やファッションは意識しているんですけれどイマドキ感では終わらない音楽が面白くて魅力的ですよね。上手く言語化出来ないんですけれど、時代を逆行した部分やそこはかとなくある厨二感が要因なのかも。・・これはイリチルに限らず全般に言える事ですが。

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以前、「分かり易い魅力的なアイドルをつくることをSMは拒否している。安易に消費をさせないことに本気」という旨のツイートを拝見しました。

仰る通りだと思っていて同事務所が『商品力が無くとも親近感でモノが売れる時代』に敢えて難解コンセプトに固執する理由そのものなのではないかなと思ってます。それが音楽ライターさんも言及なさっていた様に『SMは最も実力のあるグループで実験をする』事なんだろうと。多くのkpopグループを生み出してきたSMが意義を見出した結果、完成形がaespaであり「SMCU」で見せていきたい世界観なのでしょう。

aespaを履修できていなかったのでMV考察を読んでいた所もう少し"SMCU"の全容が見えてきました。こうして全体のグループを知る事になるんだな…。SMの戦略は事務所の箱推しオタクをつくること。

トレンド変化の早い時代に対抗する様にSMは壮大過ぎるテーマ:SMCUを設定→kwangyaをフックに次作が待ち遠しいようなストーリー仕立てにして全グループへの関心を引かせる→'世界観'を軸に活動領域を広げて半永久的に続く「廃れない作品」を作る

aeを生み出したりヒトに頼り過ぎていない所など二次創作をし易い要素が散りばめられていますよね。また映画でもありがちな、次回作で新キャラが出てきたり降板したりといった代えが効くストーリー仕立てにしてある。

NCTについても、無限拡張で下の世代が加入するシステムを起用しているので、いつまでも"フレッシュさ"が感じられる利点はあります。アイドルオタクがつき難い部分ではありますが、音楽の表現の可動域は広がるのかなとも思っています。

…現にショウタロウというプロダンサーを転職させたくらいですから(笑)

記憶に残る音楽への創意力

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時代の変遷によってNO.1は更新されていくものだけれど、オンリーワンは不変。アイドルは自分の商業的価値に悩んだり、周囲の人間によって良くも悪くも利用される演者。本当に大変な職業ですよね。だからこそ資産価値を失わないためにも、惑わされない自分軸を見出せていたら良いし、感性や知性を以て廃れぬ「個性」を武器に勝ち抜いてほしい。事務所に関しても、この唯我独尊スタイルのまま時代を牽引し続ける存在で居続けてくれたらと思っています。

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