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『本を買わなくてもいられる場所。』

#今野書店 書店員 #花本武 さんインタビュー(2022.6.6)


-「書店」は、花本さんからみてどのような場所ですか。

花本 いろんな言い方ができると思いますが、誰もがそこにいられる場所でしょうか。もちろん本を買ってもらうことは大事ですが、ただいるだけの人、居場所にしてくれる人も大切にしたい。本屋が、公共の空間(コモン)として機能するなら、ありがたいと思います。

本屋には知の蓄積があり、そこを人が往来します。可能性に満ちた場所だと思いますし、実際できることも多いと思っています。知のストックがこれだけある場所を無駄にしたくはない。もっと何かできるんじゃないか、という焦りもありますね。

 

書棚を整理する花本さん

-今回、「本と投票。」のしおりを置かせてもらった「参議院選前に知っておきたい政治のことフェア」もそうですが、以前からフェアに力を入れているのでしょうか。

花本 はい。フェアをやるのが好きなので、力を入れています。こちらの棚では、著者や出版社と相談して本のゲラ(原稿)を置かせてもらっていたりします。読者が著者に近づく契機になればいいな、と企画してます。

花本さん企画のフェアの風景

-フェアはどのようにつくっていくのでしょうか。

花本 私がよく企画するのは、著者に協力してもらい、新刊が出るタイミングで、本人が選んだ本を一緒に並べていくパターンです。選書リストとそのコメントを掲載したフリーペーパーを製作して、配布するようにしてます。月替わりで入れ替えるようにしてますが、反響が大きかったときは、入れ替えるのをもったいなく感じてしまいますね。(笑)でも、いかに評判がよくとも、きっぱりと終えて、本を循環させることが大切だと思っています。毎日立ち寄ってくださるような常連さんに飽きられないようにしたいおもいもあります。

月1ペースで入れ替わる、フェアの本たち

-本屋さんの運営には詳しくないのですが、選書やフェアのほかに、どのような仕事があるのでしょうか。

花本 外商がありますね。具体的に言えば配達。地元のラーメン屋さんや美容院、学校の図書館などに本を届けてます。顔がわかる関係のなかで、直接本の遣り取りができるのは、おもしろいですね。この人ならばきっとこの本を気に入るだろう、と用意したものを買ってもらえると嬉しいですよね。


-今回ご協力をいただいている「本と投票。」プロジェクトについて知ったときどのように感じましたか。

花本 親しい人たちどうし政治や投票の話をタブー視しないで、カジュアルに交わせる風潮をつくりたいですよね。「本と投票。」プロジェクトの栞のデザインを見たとき、直観的にこの雰囲気ならいけるな、と感じました。


政治関連フェアに、「本と投票。」プロジェクト栞の姿も

-さいごに、地域に望むことを教えてください。

花本 西荻は“いい本”を買ってくださるお客さまが多いので、何も望むことはありません。

“いい本”を定義するのは難しいですが、“よくない本”から逆算することはできるかもしれません。差別を助長するような本はよくない。 “いい本”には「反差別」の要素がある。「誰もが知にアクセスできて、差別のない場所へ向かわせてくれる本」。そういうのを“いい本”としてもいいかもしれません。

本には差別をなくせる力や、問題を解決する力があると思っています。何事もまずは知ることから出発しますし、本なら、正しく対処法を知ったり、正しく恐れることもできる。そうすることで偏見や誤解が少しでも減る方向に向かえばと思います。そうしたことを考えながら、棚をつくっています、少しでも世界がよくなることを願いながら。

西荻本コーナーの風景

お店情報:今野書店
167-0042東京都杉並区西荻北3-1-8  TEL 03-3395-4191
OPEN 月曜~土曜 10:00開店 21:00閉店
日曜・祭日 10:00開店 20:00閉店 定休日なし
http://www.konnoshoten.com/blog/206694.html

今野書店さんのショーウィンドウ


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