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アイズナー賞2023受賞作品が発表されました!

マンガ界のアカデミー賞と言われるアイズナー賞2023が、2023年7月21日夜(現地時間)、サンディエゴ・コミコンにて発表されました。

2022年1月1日から12月31日に発表された作品を対象に、32カテゴリーにわたって優秀作品、クリエイターが表彰されるマンガ賞です。

ノミネート作品については以下の記事にまとめています。

以下ではノミネート作品の記事でもチェックしていた19カテゴリーを筆者の備忘録代わりにみていきます。
(スーパーヒーローものは詳しくありません…書名だけの紹介になっているものもありますがご了承ください…)


Best Short Story

“Finding Batman” by Kevin Conroy and J. Bone in DC Pride 2022 (DC)

Best Single Issue/One-Shot

Batman: One Bad Day: The Riddler, by Tom King and Mitch Gerads (DC)

Best Continuing Series

Nightwing, by Tom Taylor and Bruno Redondo (DC)

Best Limited Series

The Human Target, by Tom King and Greg Smallwood (DC)

Best New Series

Public Domain, by Chip Zdarsky (Image)

ということで、コミックブックのカテゴリーは5つ中4つがDCコミックス。DCは今回、6つのカテゴリーで受賞しており出版社では最多となりました。

2022年のアイズナー賞で数多くのノミネートを果たしていたものの受賞は逃したTom Taylar作、Bruno Redondo画『Nightwing』はBest Continuing Series(最優秀継続シリーズ)で受賞しましたね。作画のBruno RedondoはBest Cover Artistにも選ばれています。

このなかで唯一Imageの作品であるBest New Series(最優秀新シリーズ)を受賞した『Public Domain』はコミックのコンテンツIP事業の裏側をテーマにした作品。「ザ・ドメイン」という大人気スーパーヒーローを生み出した漫画家シド・ダラスと彼の息子マイルズとデイヴィッド。「ザ・ドメイン」は映画化され爆発的に大ヒットし、さまざまな商品に展開されているが、熱狂的なコミックファン以外に原作者であるシドを顧みる人はいない。そのことを不満に思う息子たちはコミック周辺の巨大企業に戦いを挑む。
単行本も発売されています。

ちなみに作者のChip Zdarsky(チップ・ズダースキー)が脚本を手掛けるコミックはスパイダーマン:ライフストーリー』『スペクタキュラー・スパイダーマン:イントゥ・ザ・トワイライト』『ハワード・ザ・ダック:アヒルの探偵物語が邦訳されています。

Best Publication for Early Readers (up to age 8)

The Pigeon Will Ride the Roller Coaster! by Mo Willems (Union Square Kids)

Best Publication for Kids (ages 9-12)

Frizzy, by Claribel A. Ortega and Rose Bousamra (First Second/Macmillan)
ドミニカ共和国の女の子マレーネの大敵は美容院。周囲からキレイと言われない縮れてカールした髪をどのように受け入れていくか。

Best Publication for Teens (ages 13-17)

Do A Powerbomb! by Daniel Warren Johnson (Image)
プロレスラーの母親を見て育ったロナもプロレスラーになることを夢みているが、危険なトーナメントに参加を依頼されすべてが変化する。レスラーとドラゴンボールZが出会う物語。

なんとなくの印象ですがアイズナー賞の子ども・YA向け部門では女の子を主人公にした作品がたくさん選出されているような気がします。

今回、気になったのは9-12歳向けで最優秀賞を受賞した『Frizzy』。
縮れ毛の女の子マレーネ。母親からは見栄えが良くないから美容院で縮毛矯正しなさいと言われるけど、なんで自分の髪の毛が美しくないと言われるのか理解できなくてすっかり美容院嫌いに。そんなマレーネが周りの人とのかかわりの中から自分の髪の毛に誇りを持っていくまでの物語。
奇しくも同じように髪の毛をテーマにした作品『Wash Day Diaries』がBest Publication for Teens (ages 13-17)にノミネートされていました。コミックを通してブラック・ヘアーや文化を理解できるのがいいですよね。ちなみに『Wash Day Diaries』の作者ロビン・スミスさんのデビュー作この街でいちばん悲しくて怒っているブラックガールのわたしの邦訳は当店にて取り扱い中です!

Best Humor Publication

Revenge of the Librarians, by Tom Gauld (Drawn & Quarterly)
月の番人』『木のロボットと丸太のおひめさまのだいぼうけんのトム・ゴールドのユーモアが散りばめられた文学的漫画集。

Best Anthology

The Nib Magazine, edited by Matt Bors (Nib)
ハーベイ賞2020Degital Book最優秀賞を受賞した社会派アンソロジー「The Nib」。2023年に最終巻が刊行され、活動終了。

Best Reality-Based Work

Flung Out of Space, by Grace Ellis and Hannah Templer (Abrams ComicArts)
『太陽がいっぱい』で知られるパトリシア・ハイスミスのレズビアン小説『The Price of Salt』(のちに『キャロル』と改題)はどのように生まれたのか。その創作秘話を紐解きながらハイスミスの実像に迫る。

Best Graphic Memoir

Ducks: Two Years in the Oil Sands, by Kate Beaton (Drawn & Quarterly)
学生ローンを返済するためにカナダ・アルバータ州のオイルラッシュに便乗して西に向かう。オイルランドでの厳しい生活を描く。

Ducks: Two Years in the Oil Sandsの作者Kate Beatonは、Best Writer/Artistも受賞しています!

Best Graphic Album—New

The Night Eaters, Book 1: She Eats the Night, by Marjorie Liu and Sana Takeda (Abrams ComicArts)
モンストレスのマージョリー・リュウ&サナ・タケダのコンビでおくる新しいホラー・グラフィック・ノベル三部作の第1巻。中国系アメリカ人の双子は仕事に失敗して苦労していたが、陰惨な殺人事件の現場となった廃墟を訪れたことで超自然的な騒乱に巻き込まれていく。

受賞おめでとうございます!
超絶美麗な世界観を描き出すタケダ・サナさんのホラー作品『The Night Eaters』がBest Graphic Album—Newを受賞されました。タケダ・サナさんはBest Painter/Multimedia Artistにも選ばれています。ほんとうにもっと日本で紹介が進んでほしいマンガ家です。
モンストレスの続きも翻訳されてほしい…!!

Best Graphic Album—Reprint

Parker: The Martini Edition—Last Call, by Richard Stark, Darwyn Cooke, Ed Brubaker, and Sean Phillips (IDW)
リチャード・スタークの『悪党パーカー』のコミカライズ4冊と未公開アートも含めた豪華本。

Parker: The Martini Edition—Last Call』はBest Publication Designも受賞しています。

Best Adaptation from Another Medium

Chivalry by Neil Gaiman, adapted by Colleen Doran (Dark Horse)
年老いた未亡人が古物店で手に入れた聖杯。その聖杯を求めてやってきた騎士と壮大な冒険の旅に出る。

Best U.S. Edition of International Material

Blacksad: They All Fall Down Part 1, by Juan Díaz Canales and Juanjo Guarnido, translation by Diana Schutz and Brandon Kander (Dark Horse)
フランスのDargaudから出版された『Blacksad - Tome 6 - Alors, tout tombe』の英訳版。日本語訳ブラックサッド(6)そして、すべて堕ちる[前編]も刊行されている。1950年代のアメリカを舞台に私立探偵ブラックサッドの事件を描くシリーズ最新刊。

「ブラックサッド」の新作がBest U.S. Edition of International Materialです! アメリカでのブラックサッド人気をうかがえるし、きっとみんな待ちわびていたんですよね!!
ちなみに今回の「そして、すべて堕ちる」は前後編ですが、後編のフランス語版は11月3日発売予定です。日本語版はいつになるかな、楽しみです!!

Best U.S. Edition of International Material—Asia

Shuna's Journey, by Hayao Miyazaki; translation by Alex Dudok de Wit (First Second/Macmillan)
宮崎駿『シュナの旅

新作映画「君たちはどう生きるか」も好評の宮崎駿によるチベット民話をベースにしたコミック絵本です。

Best Webcomic

Lore Olympus, by Rachel Smythe (WEBTOON)
ロア・オリンポス』LINEマンガ掲載

数少ない日本語で読める英語圏ウェブトゥーンですが、本当に毎年受賞しています!単行本(UK版)も2023年10月には5巻が出る予定みたいです。

Best Digital Comic

Barnstormers, by Scott Snyder and Tula Lotay (Comixology Originals)
第一次世界大戦直後を舞台にした飛行機乗りの冒険ロマンス。

~*~

ざざざっと受賞作品をみていきましたがいかがでしたでしょうか?
お目当ての作品は受賞されていたでしょうか?

ちなみにノミネート作品の中で個人的に気になると言っていたZoe ThorogoodさんはRuss Manning Promising Newcomer Awardという新人賞を受賞されました! 今後がとても楽しみな作家さんです。


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