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【本095】『宙わたる教室』

著者:伊与原新 出版社:文藝春秋

伊与原さんの著作で初めて手にしたのが『月まで三キロ』。自然の理が、私たちを癒し、生かし、包んでくれる、そんな温かな余韻にいつまでもひたる小説でした。他にも『八月の銀の雪』『オオルリ流星群』を読んだけど、どれも温かな優しい気持ちになれる物語です。

この『宙わたる教室』は、定時制高校に通う世代も境遇も異なる生徒たちが、火星のクレーター実験に取り組む夢と希望の物語です。もと不良の岳人、料理店を営むアンジェラ、不登校でSF好きの佳純、町工場を経営してきた70代の長嶺。決して優秀ではない彼らが、理科教師の藤竹のもと科学部で実験を繰り返していきます。

もちろん、ぶつかることも多いです。でも、何かに夢中になること、知りたいと思うこと、成長したいという気持ち、そのどれもが心地よく、学ぶことや研究することは、誰かから指示されるのではなくて、湧き出てくるものだってあらためて思いました。

学校や研究って、本来こういうものだと、わくわくしながら読みました。


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