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ノートルダム・ド・パリ

子供の頃に読んだ本、の定義がだいぶあやふやになっているのですが、私の中では高校生あたりまで入ってます。子供というにはちょっと育ちすぎかな、とも思うし、大学生だって別に自立してるわけじゃないから子供な気もするし、微妙なところ。
まあでも私は進学で実家を出たので、自分で生活を作り始めた最初の一歩ですから、大学時代を子供の範疇に入れるのはちょっと違うな、と思うので、高校までを子供の頃に入れております。
そんなわけで今日は高校生の時に読んだ本。

ちなみに私が読んだのは図書館にあったハードカバーの全集か何かの一冊。

唐突ですが、私、アラン・メンケンが好きです。ジブリには久石譲、ディズニーにはアラン・メンケンと思っています。
そのアラン・メンケンが音楽を担当した作品の中でも一番好きなのが『ノートルダムの鐘』。曲、全部好きです。原語版もいいし、日本語版が劇団四季なのもいいです。教会音楽っぽかったりコーラスが重厚だったり、本当に音楽がいいのでサントラだけでも聴いていただきたい作品。
子供が見るにはちょっと酷いシーンもあるんですが、ラストはハッピーエンドでまあディズニーらしい終わり方をします。
そんな大好きなディズニー作品、原作がユーゴーと知って元はどんなお話か調べてみたら、救いがないんですね、これが。
でも拗らせ系のバッドエンド好きとしては、原作の方が良さそう!ということで高校生の私は安易に手を出してしまいました。
あらすじはこんな感じです。

15世紀末のパリ。ノートル=ダム大聖堂の副司教クロード・フロロは、聖堂前の広場で踊るジプシーの娘エスメラルダに心を奪われ、自分が育てた異形の鐘つき男・カジモドに誘拐させて、わがものにしようとする。しかし間一髪、王室騎手隊の隊長に救われ、エスメラルダはその若き隊長フェビュスに一目ぼれしてしまう。嫉妬に狂った副司教のクロードは、フェビュスを殺し、エスメラルダにその罪を着せ破滅させようとする。一方、エスメラルダの美しさとやさしさにふれ、いつしか愛情を抱くようになったカジモドは、彼女を絶望的な運命から救いだそうとするが――。
Amazon商品ページより

『レ・ミゼラブル』でめちゃくちゃ苦労したのに、なぜ読めると思ったのか、当時の自分に聞いてみたい(笑)。
読み始めて2、3ページで一度投げ出しかけました😅
ユーゴー作品をお読みになった方はおわかりになると思うのですが、描写が死ぬほど細かい。数ページにわたってノートルダム大聖堂の建築様式やらレリーフやらの描写が続きます。
辛い……。本題にちっとも入らない……。
情景が浮かぶどころかどんどんノートルダム大聖堂が思い浮かべられなくなるレベルで微に入り細に入り書き込まれているんですよねえ。
しかも冒頭だけじゃなくちょいちょいこの密な描写が入ってきます。話が進まねぇ!!!
ネタバレした状態で読んだんですが、むしろネタバレしてなかったら読めなかったかもしれない(笑)。
ここからネタバレしますので、ネタバレ無しで読みたい方はそっ閉じお願いします。


報われないカジモドの愛、救えなかったエスメラルダの遺骸を抱いたまま死に、塵になるまで離さなかった、その壮絶で美しいラストを読みたい一心でどうにかこうにか読んだようなものです。
ディズニー版の大団円もいいですが、やっぱり悲劇の方が美しいですよね(偏見)!
ディズニー版では好青年だったフェビュス(フィーバス)もなかなかのクズ。フロローの粘着質さと拗らせ具合はディズニー版でもよく出ていますが。
カジモドも純真無垢とは言い難いのもまたいいですね。エスメラルダにはっきりと肉欲を感じていることも描かれていますし、フェビュスへの暗い嫉妬やフロローに殺されても恋敵が死んだ、ラッキーぐらいの気持ちが見て取れて、カジモドもけっこう拗らせている感じがします。
容姿で怪物扱いされ、生い立ちも複雑ですから拗らせるのも当たり前と言えば当たり前ですから、やっぱり原作の方がリアルな生身の人間っぽさがあります。
フロローがディズニー版ではかなりおっさんになってましたが、原作では30代半ばでカジモドを拾った時は10代ですからちょっと老けすぎだったなあ。フロローが歌う『Hellfire』、大好きです。原語版も四季版も超素敵なバリトンでコーラスもいいんですよね。歌詞はとんでもないですけど(笑)。でも子供も見るアニメとしては思い切った描き方で、フロローは原作とそんなに齟齬はないかもしれない。
悪役ではあるんですけど、彼は聖職者ですから、本来は善なんですよね。だから彼は自分の行うことを全く悪いと思っていない。結局のところは可愛さ余って憎さ百倍的な行動なんですが、彼からしてみれば神に背かせようとする誘惑者のエスメラルダを魔女扱いすることは何の矛盾もなく“善”として成立してしまうわけです。彼女の仲間であるジブシーたちを迫害することもまた。それでもフェビュスを刺し殺すのはもうなんの言い訳もできない悪行だとは思うのですが。
“善(神)”の側に自分が居ると信じて疑わずに“悪”をなすという、大人向けの小説では時々出会うキャラですが、ディズニーでは珍しいタイプのヴィランですね。
めっちゃ拗らせ系で質が悪いんですが、宗教的な枷を嵌められて、鬱屈した欲求を抱えた暗いキャラって嫌いじゃないです(笑)。悲劇にはこういうキャラが必要ですよね。
逆に、自由を愛する奔放なエスメラルダをはじめ、ジプシーたちは生き生きと描かれていて魅力的です。クロパンの皮肉が効いた言い回しとか洒落てるんですよね。悪党ではあるんですが、愛嬌があります。
『レ・ミゼラブル』もそうですが、誰か1人にフォーカスして明確な主人公を中心に物語を描くというよりは、群像劇的に並行した物語があってそれが段々収束していく、という感じの構成なんですが、クライマックスへの盛り上がりはやっぱり読みがいがあります。
でもなあ……もうちょっと読みやすかったらなあ……。
期待したラストは本当に美しくて良かったんですが、読むのに体力いりました。
高校生の時に読んで良かったと思います。今だったら多分挫折してる(笑)。
ロシア文学もキツいけど、こちらもなかなかでした。話がなかなか進まないまだるっこしさが、やっぱり若くないと読めないかもしれない。まず時間ないと無理ですしねえ。
例えば同じぐらいの分量の作品で言うと、フーコーの『薔薇の名前』なんかも読み辛いとよく言われますが、正直『薔薇の名前』の方が読みやすいかも。私にとっては、ですけど。衒学的なのはまだいける。
そんなことまで書かんでええやん!!!!とツッこみたくなるような微細な情景描写でページ取られる方がキツい(笑)。
つくづく悲劇好きで誰も報われないパターンが好きでなかったら読めなかったかも知れないと思います。いや、それもどうよという気がしますが。
ああ〜、まとまらなくなってきた!
貶してるのか褒めてるのか、好きなのか嫌いなのかよくわからない記事になってきましたが、結局好きではあります。でも再読するかと言われると……。
ディズニー版のハッピーエンドで良しとしようかな!(笑)
劇団四季でやっていたミュージカルバージョンはもう少し原作寄りのようですが、見に行けなかったんですよね。京都でやっている間に観にいこうかと思っていたんですが、諸事情により断念😭東京まではちょっとなあ……。
いつか観られたらいいな、と思います。
そんなこんなで(どんなだ)、若い頃に読んでおいて良かったな、という本の思い出でした!
くどいですが、ディズニー版の音楽、ほんとにいいのでオススメです。アラン・メンケン、ほんと天才。

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