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読んでいる数分の間だけでも、ほんのちょっと心が落ち着く本。

「あけましておめでとうございます。」
と、タイトルだけ書いたnoteの下書きが残っていた。あぁ、随分と長い時間、発信をサボっていた。

最後の更新は去年の大晦日。実にこの2ヶ月、どよ〜んとした空気の中にいた。何か特別問題や事件があるわけではない。自分の周りだけ、自分の頭の中だけ、勝手にどよ〜んとしている。ずっと猫背。何か、いらぬことを考えすぎてしまっている。

『「考えすぎない」人の考え方』という本が積読の一番上にある。手にとっては、読んでいる途中に何かを考え始め、積読の一番上に戻している。『「考えすぎない」人の考え方』を読むために、一旦考えすぎないようにしないといけない。嗚呼。

小学校に出勤する前に必ず行う儀式がある。コンビニの駐車場で、スマホの音量をゼロにし、裏で起動しているアプリを全て消すという作業だ。YouTubeやradikoや各種SNSなどなどを、iPhoneを上にすっすっすっと人差し指で手裏剣のように擦って、昨晩までの私の個人的な楽しみを全て消し去ってから校門をくぐっている。

これは、誤作動で、勤務中に私のスマホからラジオが流れたら嫌だなという、ただそれだけのための対策だ。「パンサー向井のチャリで30分」とかならまだいい。「さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ」あたりなんかが流れちゃった日には、ちょっともうどうしようもない。

すっすっすっとアプリを消しながら、「普通のおじさん」から、だんだん「学校の先生」になっていく。一個アプリを消すたびに、猫背が少しずつ伸びていく。消し終わった頃には、背筋を正して夢と希望を語り理想と正論を振りかざす教育公務員が爆誕している。BGMは『ダースベイダーのテーマ』。ライトセイバーは蛍光の橙チョーク。

本校は車で門をくぐるとき、ジェットコースターのように坂を下る構造になっている。このとき、深海に潜るような感覚がある。8時から17時まで、ずっと息をとめて潜水する感じ。退勤するとき、めっちゃ空気を吸う感じ。

いや、この仕事が嫌なわけではない。でもほっとんどの仕事は、なかなか「素の自分のまま」ではいられないよねってお話。あたりまえだけど、これがね、疲れるんだな。知ってるかい、鬼塚英吉はマンガの中にしかいないんだよ。

こんな憂鬱な気持ちになることが、よくある。その都度、そんな気持ちを浄化してくれるのは、私の場合、大概が「本」である。

鬱の本

最近の本の中だと、ダントツで『鬱の本』(点滅社)が心地よい。見開き1ページで、憂鬱にまつわるエッセイがひとつ読めるような構造になっている。気持ちが落ちている時は、しっかりとテキストにも向き合えないことが多いので、ちょうどいい。

この本は、「毎日を憂鬱に生きている人に寄り添いたい」という気持ちからつくりました。どこからめくってもよくて、一編が1000文字程度、さらにテーマが「鬱」ならば、読んでいる数分の間だけでも、ほんのちょっと心が落ち着く本になるのではないかと思いました。

『鬱の本』(点滅社)はじめに より

「読んでいる数分の間だけでも、ほんのちょっと心が落ち着く本」、まさにこれ。世の中に背を向けながら、猫背でため息を吐いて読むにはちょうどが良すぎる本なのだ。

むしろ、憂鬱なときに読むから真の力が発揮される?本なのだと思う。もしこのnoteを読むあなたが今少しでも憂鬱な気持ちを抱えているのであれば、この本は今が読みごろ。

本に力をもらうということがよくある。落ちた気持ちを回復させる方法の答が本に書いてあるわけではないのだが、本に書いてあることを頼りに、自分の中で答えを見つけるという感じだろうか。この瞬間が、非常に心地よい。

そんなことを期待しながら読む本ではないかもしれない。でもきっと、そんな心には寄り添ってくれる本ではある。

と、いうことで、やっとひとつnoteが書けた。2ヶ月ぶりだ。ちなみに今、世の中の教員は、成績づくりで忙しいシーズン。つまりこれ、要は、成績をつけなくちゃいけないのにnoteに現実逃避をしたがために書けただけ、というおはなし。

今日は日曜日。明日の朝、きっとこのnoteをradikoと共にすっすっすっと消してから、私はまた猫背を正して職員室に向かうのだろうな。

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