五月ふみ

読んだ句集のことなどをぽつぽつと書いています。歌集もときどき。「南風」会員(名前は ご…

五月ふみ

読んだ句集のことなどをぽつぽつと書いています。歌集もときどき。「南風」会員(名前は ごがつふみ と読みます)

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南風2024.04号

所属している南風俳句会の結社誌より、特に好きな句を引いていきます。 ※最新号が届いてから、前月号の記事を公開します。 わたしの掲載句も一句。 南風俳句会についてはこちらから

    • 角川俳句2024.03号

      池田澄子の巻頭作品50句に魅かれて手に取った。 コロナウイルス、戦争、震災などが当然のように詠まれている。そしてその合間に老いを詠んだ句や、身体感覚の句が挟まる。お会いしたこともないのに、「『今』の池田澄子」が丸ごとここにいる、そんな気持ちなる。 〈日日草そりゃー時には雨が降る〉の「そりゃー」、〈蟻よ御免ネこれ「アリ全滅シャワー液」〉「蟻よ御免ネ」、これ、出てくるだろうかと、まず驚いた。また、蟻からしたら、「アリ全滅シャワー液」を使うわたしたち一般市民も「悪

      • 千葉皓史  『郊外』

         『郊外』は1991年刊行の千葉皓史第一句集。四章で構成されている。1991年、第15回俳人協会新人賞を同書にて受賞した。三十二年を経て、2023年刊行の第二句集『家族』で第63回俳人協会賞を受賞した。言い尽くされていることではあるが、どちらの句集も、妻、子、母など、身近な人物を詠んだ句が多い印象を受けた。 <手花火の戸口ひとつにつどふなり><引越のみんなはげみぬ鰯雲><豆飯を熱がつてゐるわれらかな>など、「一家」を詠んだ句も魅力的だった。『家族』の<おのおのの扉暮しの夜の

        • 杉山久子  『栞』

           「藍生」「いつき組」所属の作者による第五句集。2015年から2022年の句を中心に、七つの章より構成されている。<冬星につなぎとめたき小舟あり>のような幻想的で美しい句が多いのかと思いきや、<足裏にカイロかたまりつつ歩く>のように日常を描いた句、<ジブリアニメのヒロインのごと冬木立つ>のように現代的な語彙を取り入れた句など、聖俗の振り幅が大きく、句材の広さに驚かされた。また、<マスクなき顔におののく近松忌>をはじめ、コロナ禍の生活も多く書き留められている。    俗な句、時

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          池田澄子 『思ってます』

          『思ってます』は池田澄子の第六句集。2016年刊行で2011年から2015年半ばまでの句が収められている。東日本大震災を詠んだ句があちらこちらに見受けられる。 電線の句、初明りの句は分かりにくいかもしれないが、読んで計画停電を連想した。 あとがきで、池田澄子は震災に対して、「思いは何の役にも立たなかった。」と書いている。思いは何の役にも立たないが、思わずにはいられない、そんな心境がタイトルにも現れている。 好きな句を引いていく。 いまさらわ

          池田澄子 『思ってます』

          小澤實 『澤』

          『澤』は2023年刊行の第四句集。第三句集『瞬間』以後、平成24年の句を収めた『瓦礫抄 俳句日記2012』以前の句が収録されている。あとがきによれば、40代半ばから50代半ばまでの句とのこと。 好きな句、気になる句を引いていく。 〈大根の土落すなり膝に打ち〉のように、倒置法を用いた句が多い印象を受けた。「膝に打ち大根の土落すなり」の語順を入れ替えたのが掲句の形だろうと思う。確かに「膝に打ち大根の土落すなり」ではストレート過ぎる。例えば、 いずれも、上五中七

          小澤實 『澤』

          宇多喜代子 『象』

          『象』は宇多喜代子の第六句集であり、2000年に出版され、翌年、第35回蛇笏賞を受賞した。平成元(1989)年から十年間のあいだに発表された作品のなかから301句が掲載されている。 タイトルの『象』は〈八月の窓の辺にまた象が来る〉からとったとのことだが、この句は中上健次の追悼句のうちのひとつである。中上健次とは熊野大学の縁で親交があったとのこと。中上健次は、1992年1月に熊野大学出版から刊行された宇田喜代子の第四句集『夏月集』栞に文章を寄せ、その7ヶ月後、1992

          宇多喜代子 『象』

          池田澄子 『月と書く』 ①

          2023年6月刊行の第八句集。2020年6月刊行の第七句集『此処』からわずか三年で出版された。コロナ禍、そしてウクライナ侵攻の日々の中で詠まれた句が詰まっている。 『此処』以来、久しぶりに池田澄子の句集を読んで、こんなにも身体感覚を詠むひとだったのかと驚いた。手元にある第五句集『拝復』、第七句集『此処』を併せて読み返し、気づいたことからまず書いていく。 本句集の第一句目である。言われてみれば、確かに「早春」と発声するとき、唇は尖っている。思わず「早春」と言ってしま

          池田澄子 『月と書く』 ①

          千葉皓史 『家族』

          1991年に第一句集『郊外』で俳人協会新人賞を受賞した作者による、30年ぶりの第二句集。本書で第63回俳人協会賞を受賞した。 ひとりの人の人生の時間を感じさせる句が並ぶが、インタビューでは句作に対して、「作品の客観性、普遍性をこそ目標としたいと考えています。」と答えていた。 母、妻、子の句が並ぶなか、Ⅲの後半にある〈おのおのの扉暮しの夜の秋〉が家族のあり方の変化を伝えており、作中主体の寂しさが伝わってくるようだ。 具体的な人物を描かない、けれど人とのつなが

          千葉皓史 『家族』

          岩田奎 『膚』

          2022年刊行。本書は2020年に第66回角川俳句賞を受賞した作者による第一句集であり、第14回田中裕明賞受賞、第47回俳人協会新人賞受賞を受賞した。「肉」、「脈」、「髄」の三部構成。 好きな句気になる句を引いていく。 タイトルや構成になぞらえて言うなら、作者のものを見る目と、見たものを消化し、的確な言葉で表現する能力の高さ、正確さがただただ伝わってくる句集だった。 いちばん好きな句について、少しだけ鑑賞を述べる。 季語は「夏蚕」で夏の句。蚕は四度脱皮を繰り返し、脱皮の

          岩田奎 『膚』

          俳句四季2024.04号

          特集の『働く人の俳句』に惹かれて購入。 特集に紹介されている句は孫引きになるのでここでは割愛して、そのほか好きな句気になる句を引いていく。 蟻が蟻殺す桜は満開に 高野ムツオ 何処よりの柑橘の香や花に雷 依光陽子 空港のグランドピアノ春の月 三月や花舗に背広の男たち 休日の顔となりたる花の雨 花冷や指で溶きたる泥絵具 田口紅子『小さき闇』 禁色のひかりをおびて蠅生まる 鷹渡る水平線の新しき しろがねのこゑびつしりと霜柱 田口紅子 自選四十句 花の宴安全靴のまま来る 霾

          俳句四季2024.04号

          『柿本多映俳句集成』

          年始に角川俳句に掲載されていた、〈いもけんぴ食べて正月過ぎてゆく/柿本多映〉に魅かれ、『柿本多映俳句集成』を読んだ。 捲るたびに好きな句が増えるので、ひとまず一読して好きだった句、気になった句をまとめた。

          『柿本多映俳句集成』

          句具ネプリ2024春分号

          句具ネプリ2024春分号が発行されました。 好きな句、気になった句を引いていきます。 〈じゃない方なりの生き方春の月/有野安津〉の「じゃない方」、〈苦みましましで春また深くなる/冬のおこじょ〉の「ましまし」、〈はだれ雪餃子の無人販売所/正山オグサ〉の「餃子の無人販売所」などの現代の言葉や光景が読み込まれている句がおもしろかったです。〈二月尽さりとてレゴのパーツがない/ツナ好〉の「さりとて」もおもしろい。 また、〈早春の指さくさくと髪を編む/鈴木沙恵子〉の「さくさく」の意外

          句具ネプリ2024春分号

          最近のネプリから

          最近(と言っても少し前のものもありますが)読んだ俳句のネプリから好きな句、魅かれた句を引いていきます。 よんもじ 2024.1.9 VOL.8 WINTER 祈りと火 星野いのり 西川火尖 薪の会 2024年3月発行 薪の会のネプリは句会を追体験できるようになっており、作りが斬新でした!

          最近のネプリから

          『紙猫 : 仔猫句会十周年記念作品集』

          京阪神を中心に吟行句会を重ねてきた仔猫句会の十周年を記念してまとめられた作品集。 十九名の有志による作品が各十五句掲載されている。 最初にそれぞれの作品から特に好きな句を一句ずつ。 特に好きな句をいくつか。 採話した人によって話が違ったり、語り伝えられていくうちに変化したり。地域によって微妙に違いがあったり、あるいは現代向けにガラッと改変されていたり。パターンはいろいろ考えられるが、いずれにしてもどれが真実?と妙に気になる。梅雨じめりのじっとりとした空気感がハッピーエン

          『紙猫 : 仔猫句会十周年記念作品集』

          森賀まり 『瞬く』

          本書は1996年から2008年の句を収めた第二句集で六つの章から成る。読み始めて、「かな」で終わる句が多い印象を受けた(他の句集で数えたことがないので、多いか少ないか比較はできないが、参考までにⅠでは62句中13句が「かな」で終わる)。初めから引用ばかりで恐縮だが、せっかくなので全て引いてみる。 子どものことや、身の回りのものを詠んだ、けれど生活感をあまり感じさせない句が多いなか、Ⅳでは体のパーツや身体感覚を詠んだ句が多いと感じた。 好きな句からいくつか。 蜘蛛の糸は夏

          森賀まり 『瞬く』