発言
「(同性婚カップルが)隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」。首相秘書官(当時)の発言は、到底、受け入れられるものではない。なぜ、こんな暴言が口から出るのか。しかも、政治家の口から。もしかすると、政治家は、国民を「個人」ではなく、「国民」という集合体でしかみていないのではないかと考えざるを得ない。そして、集合体としてみることで、一人ひとりの痛みを想像することができなくなっているのではないだろうか。
首相秘書官の発言が出た時にたまたま読んでいたのが、ウクライナ生まれの作家、ワシーリー・グロスマンがスターリングラード攻防戦を舞台に描いた歴史小説「人生と運命 1」(全3部)だった。
首相秘書官の発言に先立ち、岸田首相は同性婚の実現で「社会が変わってしまう」と述べている。首相秘書官とおなじように、彼も個人を「巨大な集合」とみているのだろう。その彼の頭の中にある「社会」というのは、権力者が決めたことにただ従うひとびとの群れで成り立つ「社会」なのだろう。
一人ひとりにそれぞれの人生、それぞれの生き方がある。それを尊重せずに否定するような人が政治家や官僚であってはならない。しかし、だ。そんな政治家を選んでいるのは、私たち有権者でもある。わたしたちはこのことを、今こそ真剣に考えなければならない。暴言や理解不足で片付けられるような問題ではない。
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