books selva

2009年新聞社入社、2022年8月退社。鹿児島市名山町4-8で「books selv…

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2009年新聞社入社、2022年8月退社。鹿児島市名山町4-8で「books selva」やってます。2PAC"Brenda's Got a Baby"が原点。https://www.instagram.com/books_selva/

最近の記事

letter from books selva 02

   (…)動物は、人間に変わりたくなどなかった。動物にとって人間は、モンスター、怪物のように恐ろしいものだった。それで、動物たちは申しあわせて、神を捕らえて溺れさせてしまった。こういうわけだ。(『プラヴィエクとそのほかの時代』オルガ・トカルチュク pp194-195)  なぜ、このようなことが許されるのか──。種子島とほぼ同じ面積のパレスチナ自治区ガザ地区。約223万人もの人が密集する中にイスラエル軍がミサイルを落とし続け、子どもを含む人間が殺され続けている。北朝鮮、中国

    • letter from books selva01

       あぁ、売れないなぁ……。海外小説を並べた棚を見て、本には悪いと思いつつ、こんな言葉が漏れる。しかし、どうしても発注してしまう。強風のなか、手巻きタバコを巻いてしまうような感覚だ。運が悪いと、葉っぱが飛んでいってしまう。  こりゃ、おもろい、と最初に感じた海外の小説は、『ラ・カテドラルでの対話』。ノーベル賞作家、バルガス=リョサの「独裁政権下ペルーの腐敗しきった社会の現実を多面的に描き出」(岩波ホームページ)した長編。「これまでに書いたすべての作品の中から一冊だけ,火事場から

      • オープン1周年

        12月で開業1周年を迎えた。 本を買ってくれたみなさま、ありがとうございました。 何もわからずに本屋を開きました。 なんやかんやで、1年が過ぎていったという感じです。 当初は、お客さんが来てくれるのか不安でしたが、少ないながらも来てくれているのが奇跡のようです。稀に、「こんな本屋を待っていた」と言ってくれるお客さんもいます。そんな時はオープンして良かったと思います。 ただ、そんなことばかりではありません。お客さんが一人も来ない(これを書いている今、この時も誰も来ていません

        • 県議会、県民投票条例案否決

           10月23日、鹿児島県議会本会議場には100人を超える県民が詰めかけた。塩田康一知事は、2020年の知事選で、運転延長について「必要に応じて県民投票を実施する」と公約。しかし、川内原発の運転延長の是非を問う県民投票条例案を議会に提案した塩田知事の発言は、多くの県民を裏切るものだった。「私としては、マニフェストに基づく県民投票は実施しないとしたことなどを踏まえると、条例案に基づく県民投票については、慎重に判断すべきであると考えております」  運転開始からまもなく40年を迎える

        letter from books selva 02

          原発@韓国②

           実際に参加してみると、壮観だった。9月23日、韓国・ソウル市内であった「気候正義行進」。路上には約3万人が集まった。周りを見ると、10~40代とみられる人が多い。もちろん、高齢者の姿もあったが、参加者の多くは比較的、若い。  ノー・ニュークス・アジアフォーラム(NNAF)のホストを務めた韓国の参加者は20代が多かった。わたしは本屋を閉めて参加していたので、その間は無収入。自営業となると、金銭的なことが気になる。一体、韓国の参加者はどうしているのだろう。答えをくれたのは、韓国

          原発@韓国②

          原発@韓国①

           ゴリ(古里)原発1~4号機(釜山市)の敷地を囲むフェンスの目と鼻の先に住宅が並ぶ。「原子炉から住宅街まで700メートルしか離れていません」。バスで通過する際、現地スタッフからそう説明があった。「東海村と似ているな」。頭には原発敷地を出るとすぐに住宅地が広がる東海村の様子が思い浮かんだ。  現地視察当日の9月21日は、あいにくの小雨。ゴリ原発1~4号機が見えるカフェに向かう。カフェの目の前は海で、何艘もの小さな船が波に揺られている。昔から港だと思っていたが、砂浜だったという。

          原発@韓国①

          署名活動②

           6月1日から始めた川内原発20年運転延長の是非を問う県民投票を求める署名活動は7月30日午後11時59分59秒をもって、終わった。みなさまのおかげで、法定署名数(2万6475筆)を大きく上回る5万290筆が集まった。  「(社会は)こんなもんだよ」。2ヶ月にわたり、鹿児島市の山形屋前で何百人もに声掛けした中で、ある年配の女性の言葉が今も頭に残っている。水俣病患者認定を申請しているという女性。他の身内は患者認定されたが、自身だけ認められていないという。「手がしびれてね」。そう

          署名活動②

          署名集めてます

           空耳か? 見知らぬ人の口から発せられた音がうまく脳で処理できなかった。  九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の20年運転延長の是非を問う県民投票実現に向けた署名活動が始まった。私自身、鹿児島市の山形屋前で毎日1時間、署名を集めている。思ったより、署名をしてくれる人が多い印象だ。「原発の~」と原発を出すと途端に嫌な顔をする人もいる。まぁ、それも仕方がない。とにかく、集めるだけだ。  「一人で決めた方がいい」  いつものように山形屋前で署名を集めていた時のことだ。

          署名集めてます

          県民投票

           九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の20年運転延長の是非を問う県民投票実現に向けて、県民有志が6月から署名活動を始める。私もその一人だ。原発問題というと、技術的な問題がフォーカスされる。もちろん、技術的課題を議論することは必要だ。ただ、それ以外の重要なことが忘れられているように思う。それが、民主主義だ。  鹿児島県では県原子力専門委員会分科会が20年延長を検証している。南日本新聞によると、九電側は「『商業機密』などを理由にデータ開示に消極的なケースが相次」いだ

          県民投票

          お別れ

           10年ほど付き合ったのだろうか。3週間前にローバーミニとお別れした。新聞記者時代、転勤に合わせて一緒に異動。水戸から鹿児島市までを運転したことも懐かしい。  2020年7月の熊本豪雨では、豪雨当日に川のような道を走ったこともあった。そんな過酷な現場で文句も言わずに走ってくれた。いや、もしかすると、不平不満はあったのかもしれない。が、ストライキという手法に訴え出ることはなかった。「ガソリン生活」(伊坂幸太郎)の中でなら、我がミニは「こんなところ、走らせるなよ!」と愚痴っていた

          骨髄バンク

           献血ルームを訪れると目にするのが、骨髄バンクへのドナー登録を呼びかけるポスターだ。私も2019年に登録した。2022年9月に自営業者となったため、入院時の休業補償のようなものはあるのかと疑問に思い調べてみた。すると、鹿児島市では2022年4月から、骨髄や末梢血幹細胞を提供した市民に助成金を提供する「骨髄等移植ドナー支援事業」を始めていることがわかった。健康診断のための通院▽自己血貯血のための通院▽骨髄等採取のための入院──などの際には、1日2万円(上限7日間)が助成されると

          骨髄バンク

          発言

           「(同性婚カップルが)隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」。首相秘書官(当時)の発言は、到底、受け入れられるものではない。なぜ、こんな暴言が口から出るのか。しかも、政治家の口から。もしかすると、政治家は、国民を「個人」ではなく、「国民」という集合体でしかみていないのではないかと考えざるを得ない。そして、集合体としてみることで、一人ひとりの痛みを想像することができなくなっているのではないだろうか。  首相秘書官の発言が出た時にたまたま読んでいたのが、ウクライナ生まれの作家、ワ

          市民

           2022年3月13日、宮崎市中心部で原発に反対する集会があった。市民約250人が参加し、集会後にJR宮崎駅前から大通りをデモ行進した。そこで信じられないことが起こった。停留所にバスを停めさせるため、デモ隊を分断したのだ。それだけではない。歩行者用信号が青という理由で、デモ隊を止めて歩行者を優先させた。これには私も久しぶりに怒りを覚えた。いてもたってもいられず、男性警察官に文句を言ってしまった。  「何をやっているのだろう」「何を訴えているのだろう」。偶然通りかかった市民に迷

          歩く

           2022年12月1日に「books selva」を開いて1ヶ月。インスタグラムを通じて来店してくれる人もいる。中でも驚いているのは、たまたま通り掛かった人も店に入ってくれることだ。店の看板も小さく、そもそも、店かどうかもわかりづらいにもかかわらず、だ。会社や塾の行き帰りで通る、旅行で来た、ぶらぶらしていたなど理由はさまざまだが、ふらっと入ってくれる人に共通していることは徒歩ということだ。  定期購読している『THE BIG ISSUE』(VOL.442 2022.11.1

          てんじつきさわるえほん

           5年ぶりになるのだろうか。12月上旬、偶然、店の前で以前取材で知り合った全盲の男性に会った。会社を辞めて本屋を始めたことを伝える。  「店を見てみたい」  棚にぶつからないように自分の肘を持ってもらって、5坪ほどしかない店を案内する。絵本の棚を紹介していると、「点字の絵本はありますか?」と聞かれた。記者時代に視覚障がい関連の記事を何本も書いてきた。にもかかわらず、点字の本を揃えていなかった。痛恨の極み。「すぐに発注します」。そう答えるのがやっとだった。  おかげで今、店には

          てんじつきさわるえほん

          ニンニク

           ニンニクの力を侮ってはいけない。  家でニンニクを育てている。3つプランターに植えたが、1ヶ月ほど経って、芽が出てきたのは1つだけ。残り2つはダメだったか。と、諦めた。頭から残りのニンニクのことを忘れたころ、2つ目が現れた。個性があるもんだ。    立ち止まって考えてみる。  もし、すぐに掘り返していたら、2つ目の芽と出会うことはなかった。本も同じだ。「この本は難しそうだから」「この本は分厚すぎるから」──。少しでも心を惹かれた本を棚に戻すことは、何かと出合う機会を失うとい

          ニンニク