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letter from books selva 03

 初めての体験が多い、3月だった。まずは6日。鹿児島市議会防災福祉こども委員会で意見陳述した。なんの意見陳述かといえば、もちろん、九州電力川内原発の20年運転延長に反対する決議を求める陳情に関してだ。記者時代、陳情審査を取材することはあったが、まさか自分が陳情者になるとは思ってもいなかった。持ち時間は5分。5分と聞いて、短いと思うかもしれないが、意外に長い。言いたいことを記憶する頭は持ち合わせていないので、文書にして読んだ。以下、最後の部分のみ、書く。

想定以上の大地震はいつ起きても不思議ではありません。それが13年前の福島原発事故の教訓ではないでしょうか? 川内原発が大地震に襲われず、大事故がなかったのは運が良かっただけです。鹿児島市民が被ばくしてからでは、取り返しがつきません。
各議員においては、熟議の上、本陳情を採択していただきますようお願いし、わたしの意見陳述とさせていただきます。

結果は継続審査。鹿児島市議選(4月7日告示、14日投開票)のため、廃案となった。
 二つめの"初"は、10日にあった「ストップ川内原発! 3・11かごしまパレード」集会での基調提案。事務局会議に参加していたら、わたしが基調提案することになってしまった。こんな経験はもうできないだろうと、気楽に引き受けてしまった。「内容よりも元気よく発言すればいい」と言われたもののの、「元気よく話す」のは私の得意とするところではない。自分らしくやるしかないなぁと割り切って臨んだものの、足が震え、頭から血の気が引いていった。ゆっくり、はっきり読もうと思っていたが、練習よりも30秒近く速く読み上げてしまうなど、今は反省点しか浮かばない。ただ、言いたいことは言えたので、それはそれでよしとするとしよう。その時の基調提案の一部もここに書き記す。

 塩田知事、県議会最大会派の自民党、公明党の県議たちは、原発の運転延長の是非を県民投票で決めたいという多くの県民の思いを無視しました。塩田知事は「二者択一ではなく、どのように県民が考えているのか具体的に把握することが必要だ」と意味のわからない答弁を繰り返しました。県議からは、県民の理解が十分深まっていない、という意見も出ました。理解が十分深まるとはどういう意味なのでしょう? わたしたち県民が馬鹿だということでしょうか? 県民には決める権利がないということなのでしょうか? 県民投票という民主的な方法で決めることができない原発は、即刻、廃炉にしなければなりません。

 みなさんもご存知の通り、1月1日に能登半島地震が起きた。地震は150キロもの活断層が動いて引き起こされたが、北陸電力が志賀原発の地震想定として評価していた活断層の長さは96キロ。東京電力福島第1原発事故以降、電力会社は地震想定を見直しているが、想定を上回る地震が起きているのはまぎれもない事実だ。たまたま、事故が起こっていないだけで、いつ事故が起こってもおかしくはない。
 避難計画は絵に描いた餅であることは誰の目にも明らかだろう。こんな避難計画でも避難計画であると強弁できるのは、「被ばくしても直ちに健康に問題はない」という国の考えがあるからだ(と思う)。健康被害など過小評価しようと思えば、なんとでもできる。「因果関係がない」「因果関係は不明」とすればいいだけだ。なんで、わざわざ被ばくするリスクを抱えなければならないのか。「経済のためだ」。そう言われても、どうしても納得できない。
 さて、厚労省の公表資料「令和4年中における自殺の状況」によると、2022年の自殺者数は2万1881人。ピークは2003年の3万4427人。資料に記載されている1983年以降、2万人以上が自殺している。年間、2万人もが自ら命を絶つ社会が健全な社会と言えるのだろうか? 
 他人を蹴落とせ! とにかくカネだ、経済だ! 日本経済のために弱者は切り捨てろ!──。このような社会を象徴するのが、原発だ。原発を使い続けるということは、これからも、そのような社会を続けるということにほかならない。そう、わたしは思っている。だから、原発はやめなければならない。
 ここからは、余談。最近、小説とその他(例えば、人文系)の2冊を同時並行で読んでいる。今は、『無限角形』(コラム・マッキャン)と『パレスチナの民族浄化』(イラン・パペ)。その前は、『ロ・ギワンに会った』(チョ・ヘジン)と『汚穢のリズム』(酒井朋子・奥田太郎・中村沙絵・福永真弓編著)だった。読み疲れたなぁ、と思った時に、1冊だけだと進められなくなる。これが、1冊、しかもジャンルが異なる本だとリフレッシュでき、どんどん、とは言わないが、読み進められる。今回はパレスチナをテーマにした2冊なので、1冊ずつ読むよりも深く楽しめているような気がする。京都にある「ホホホ座」座長、山下賢二さんの記事が3月23日付の朝日新聞の書評に載っていた。わたしが言いたいことを言ってくれていたので、そのまま引用する。

 「本は娯楽。声を大にして言いたい」

理解できなくても、自分がおもしろければ、それでいい。  
   

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