骨髄バンク

 献血ルームを訪れると目にするのが、骨髄バンクへのドナー登録を呼びかけるポスターだ。私も2019年に登録した。2022年9月に自営業者となったため、入院時の休業補償のようなものはあるのかと疑問に思い調べてみた。すると、鹿児島市では2022年4月から、骨髄や末梢血幹細胞を提供した市民に助成金を提供する「骨髄等移植ドナー支援事業」を始めていることがわかった。健康診断のための通院▽自己血貯血のための通院▽骨髄等採取のための入院──などの際には、1日2万円(上限7日間)が助成されるという。ありがたい話だ。
 日本骨髄バンクによると、2月15日現在で、46都府県932自治体がドナーの助成制度を実施している(*1)。鹿児島県内では、鹿児島市のみ。隣の宮崎県では、宮崎市や都城市、高原町など7市町が実施している。
 もし、私が薩摩川内市に住んでいて、ドナーに選定されたらどうなるのか? 店を休んで入院しても、一銭も入ってこない。無収入。鹿児島市民であれば、1日2万円が払われるにもかかわらず、だ。この差はなんなのだろう?
 「国民の生命、暮らし、事業を守るために我が国の防衛能力を抜本強化する」──(*2)。2022年12月16日の首相会見終了後の書面質問に対する国の回答だ。政府は国民の命を守るために武器を拡充するという。それが本当に国民の命を守ることにつながるのか、私には皆目わからない。それよりも、現に今苦しんでいる、助けを求めている人を助けるためになすべきことがあるのではないだろうか。その一つが、ドナー助成制度だろう。自営業者の中には休業中のことが頭をよぎり、ドナー登録の決断に二の足を踏む人もいるにちがいない。
 「国民の命」と宣うのであれば、県や市町村頼みにするのではなく、率先して国が助成制度を確立すべきだ。なぜそれができないのだろうか。

 エヴゲーニャはあらかじめ用意してきたメモの紙をグリシンの前に置いた。(…中略…)しかしグリシンは彼の前に置かれた紙を見ようともしなかった。 
 「どんな照会もするつもりはありません」 
 「でも、どうしてですか」 
 「そうすることになっていないのです」 
 「リジン中佐は、せめて口頭での照会でもなければ、自分には証明書を出す権利がないと言っています」
 「権利がなければ、書かなければいいのです」
 「しかし、私はどうなるのですか」 
 「私の知ったことではありません」

「人生と運命1」ワシーリー・グロスマン、p170



*1日本骨髄バンク「提供ドナーへ助成を行っている自治体・民間団体一覧」https://www.jmdp.or.jp/documents/file/02_donation/donor_municipality.pdf
*2首相官邸「令和4年12月16日岸田内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問に対する回答」https://www.kantei.go.jp/jp/pages/20221216kaiken_shomen.html(3月7日閲覧)


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